第509回 リヨンが独走するリーグ戦(1) 前半戦無敗に王手
■開幕戦で松井大輔のルマンに勝利
本連載ではこのところ欧州カップ、ワールドカップの組み合わせについて取り上げてきたが、複数の読者の皆様から欧州カップやワールドカップよりもファンが重視するリーグ戦について取り上げて欲しいと言うご意見を頂いた。本連載では第456回と第457回でリーグ開幕時について紹介しただけであり、読者の皆様の声の通りである。
開幕時の本連載ではマルセイユ、パリサンジェルマンについて取り上げたが、主役はやはり4連覇中のリヨンである。リヨンについては本連載でもチャンピオンズリーグでの活躍を紹介しているが、国内でも無敵の地位を築いている。開幕戦は2部から昇格してきたルマンに乗り込む。これまで広山望、中田浩二とビッグネームがフランスのクラブで活躍してきたが、ルマンにも松井大輔が所属する。チャンピオンチームのリヨンと言えども松井を徹底マークすることが必要である。徹底マークを恐れたルマン陣営は松井を左サイドに配置、早くも3分にはその松井がCKを蹴ってあわや得点、というシーンを作り、予想通りの活躍。ところが、4分に試合の行方を左右するプレーが起こった。松井に襲い掛かったのはフランス代表のアントニー・レベイエールである。明らかにファウルというタックルであったが主審のエルベ・ピッチリーリョ氏は笛を吹かない。この判断で松井の歯車が狂った。その後、松井は精彩を欠く動きとなる。リヨンはシルバン・ビルトールが先制点、ルマンは57分にいったん追いつくが、その直後にリヨンは新加入のノルウェー代表ジョン・カルーのゴールで勝ち越し、開幕戦を勝利で飾る。
■第5節で首位になってからは破竹の勢い
第2節はホームにストラスブールを迎え、この試合もカルーのゴールで連勝する。第3節はマルセイユとアウエーで対戦、連敗スタートのマルセイユも地元で意地を見せ、タイエ・タイウォが先制点をあげる。リヨンはカルーが3試合連続のゴールを上げて引き分けに持ちこんだ。3試合を終えて3連勝しているのはパリサンジェルマンのみであり、オセールとリヨンが2勝1分で追っている。第4節ではリヨンはナンシーに勝ち、第5節はライバルのオセールに2-0と勝利する。4勝1分となったリヨンはパリサンジェルマンをかわして首位に立った。
ここからのリヨンはまさに破竹の勢いであった。モナコに勝ち、ボルドー、ランスと引き分けた後は第9節のナント戦から第15節のトロワ戦まで7連勝し、第16節ではニースと引き分ける。
■4月に敗れたパリサンジェルマンに完勝
年内残り3試合となったが、ここから難敵が続く。まず、12月3日の第17節では4位のパリサンジェルマンを迎えた。首都のチーム、パリサンジェルマンも上位であり、勝ち点で13の差がついているとはいえ、この直接対決で勝利して差を縮めたいところである。実はリヨンに最後に土をつけたのがこのパリサンジェルマンであり、それは4月17日のことであった。それ以来リヨンは負けなしの記録を続けている。
しかし、この難敵をリヨンはいとも簡単に下す。開始早々にフレッドが先制点、そして試合終了間際のロスタイムに入った93分にはフレッドに代わって出場したカルーが追加点をあげる。
■サンテエチエンヌとのダービーマッチはスコアレスドロー
そして第18節ではサンテエチエンヌと対戦する。フランスのサッカー界ではこれまでに様々なチームが天下を取り、そのライバルが存在した。同一都市に複数の有力クラブが存在することのないフランスでは国を代表するダービーとして当時の有力チームであるパリサンジェルマンとマルセイユの対戦をあげることもあるが、やはりフランスでダービーマッチと言えばローヌ・アルプ地方のリヨンとサンテエチエンヌの対戦を抜きには語れない。かつての名門サンテエチエンヌと現在の強豪リヨンは同時期に覇権を争ったことはないが、やはりこの地方がフランスを代表するサッカーどころであることから、フランスを代表するダービーマッチとなっている。しかし、サンテエチエンヌが本拠地ジェフロワ・ギシャールでリヨンに勝ったのは1994年4月の対戦が最後であり、以来ライバルの前で悔し涙を飲んでいる。
そのサンテエチエンヌの執念で、リヨンは今季初めて無得点に終わる。しかしながらサンテエチエンヌも無得点であり試合はスコアレスドロー、リヨンはついに無敗のまま前半戦最終戦を迎えることになったのである。(続く)