第519回 2006年アフリカ選手権(3) 1部20チーム中19チームが選手を派遣
去る2月7日にアフリカ選手権開催地のカイロで急逝された日本を代表するジャーナリスト、富樫洋一様のご冥福を心からお祈り申し上げます。
■有力選手が戦線離脱するフランスのクラブ
アフリカ選手権がフランスで注目を集める理由として、フランスのクラブに所属する選手が多数参加することを前々回の本連載で紹介したが、これはとりもなおさず、アフリカ選手権期間中のフランスリーグでは大量の有力選手の戦線離脱が起こることを意味する。
今回のアフリカ選手権はワールドカップイヤーと言うこともあり、各国代表チームは欧州のクラブに所属する有力選手を年明けから招集している。1月初めに行われたフランスカップのベスト32決定戦を取り上げた際に、アフリカ選手権のために選手が離脱したことを紹介した。今回はアフリカ選手権に選手を送り出したフランスのクラブを取り上げることとしよう。
■72人中53人は1部リーグのクラブに所属
今回のアフリカ選手権に出場するフランスのクラブに所属する選手は72人、なかにはプロチームだけではなく、5部リーグに相当するCFA2、6部リーグの相当するPHのクラブに所属している選手もいる。しかし、中心は1部リーグのクラブであり、53人の選手が所属している。1部リーグ20チーム中19チームはアフリカ選手権に選手が出場している。出場選手数の多いクラブを列挙すると、5人を送り込んでいるのがマルセイユ、サンテエチエンヌ、4人を送り込んでいるのがリール、ソショー、ストラスブール、レンヌ、3人を送り込んでいるのがトゥールーズ、メッス、トロワ、パリサンジェルマン、2人を送り込んでいるのがニース、ルマン、ナント、オセール、アジャクシオ、ランス、1人を送り込んでいるのがボルドー、リヨン、ナンシー、そして1人も送り込んでいないのがモナコである。
■戦力ダウン著しいリール、マルセイユ、サンテエチエンヌ
この中で最も戦力ダウンを余儀なくされるのはGKのトニー・シルバ(セネガル)、MFのジャン・マクーン(カメルーン)、FWのヒチャム・アブシュルーアン(モロッコ)、ピーター・オデムウィンギー(ナイジェリア)を失う5位リールであろう。また6位のマルセイユも中田浩二と同ポジションのタエ・タイオ(ナイジェリア)をはじめ、同じく守備陣のアビビ・ベイエ(セネガル)、アブドゥライエ・メイテ(コートジボワール)を失い、守備は弱体化、さらに中盤はウィルソン・オルマ(ナイジェリア)、攻撃陣はママドゥ・ニアン(セネガル)を欠き、戦力ダウンは否めない。8位サンテエチエンヌも攻撃陣のパスカル・フェインドゥーノ(ギニア)、中盤のディディエ・ゾコラとシアカ・ティエネのコートジボワールのコンビを招集されてしまっている。
■影響の少ない上位4チーム、欧州カップ出場権争いへの影響
一方、かつてコンゴ民主共和国のエースであるシャビニ・ノンダ、リベリアのジョルジュ・ウェアなどの選手を擁していたモナコは今回は無傷である。また、注目すべきはリーグ戦で独走するリヨンはセネガルのラミン・ディアッタただ1人を送り込んでいるだけである。リヨンは選手層が厚いことから、ほとんど影響はなく、磐石の態勢で前人未到の5連覇へ前進したいところである。ところが、リヨンを勝ち点14差で追う2位ボルドーもまたモロッコのマルアーヌ・チャマクただ1人が選出されており、リヨン追撃の体制は整っている。3位のオセールはカンガ・アカレ(コートジボワール)とオマール・カラバン(ギニア)の2人を送り込んでいるが、チームの主力ではない。さらに4位パリサンジェルマンも3人を送り込んでいるがレギュラークラスはボナバンチュール・カルー(コートジボワール)ただ1人である。つまり、4位までのチームはアフリカ選手権に出場する選手に依存していない。
先述のとおり5位はリール、6位はマルセイユ、そして8位はサンテエチエンヌであり、多くの選手をアフリカ選手権に奪われてしまっている。今季のフランスリーグはリヨンが独走し2位以下は大混戦となっており、優勝争いよりも早くもチャンピオンズリーグやUEFAカップへの出場権争いが注目を集めている。これらの欧州の舞台を目指すポジションにある上位チームの争いにおいて、このアフリカ選手権中に勢力変動が起こる可能性が高いのである。(続く)