第534回 UEFAカップ、ベスト8への道(3) 3季ぶりに準々決勝にフランス勢が進出できず
■24年前の悪夢の舞台、セビリアのラモン・サンチェス・ピジュアン競技場
ベスト8をかけたUEFAカップ2回戦の第2戦は3月15日と16日に行われた。昨年はオセール、一昨年はマルセイユ(準優勝)とボルドーの2チームと、コンスタントにフランス勢はベスト8に残っている。今年は3チームにそのチャンスがある。
そのフランス勢の先鋒として登場したのがリールである。2001-02シーズン、2003-04シーズンとベスト16でとどまったリールは国際試合で成長をしており、三度目の正直とばかりにベスト8を目指す。リールはホームで1-0と辛勝、アウエーの第2戦に望みをかける。この第2戦の舞台はセビリアのラモン・サンチェス・ピジュアン競技場である。この競技場はフランス人であったならば忘れたくても忘れられない。それは今を遡ること24年前の1982年7月8日、ワールドカップ・スペイン大会準決勝の西ドイツ-フランス戦が行われた競技場である。ワールドカップイヤーということで是非ともここはリールに勝ってもらい、悪夢を忘れ去りたいところである。
■逆転負けを喫したリール
リールのリードはわずか1点、あの悪夢の西ドイツ戦同様の暑い雰囲気の中で試合はキックオフされる。前半から激しい攻防となる中、セビリアが主導権を握る。そして26分、試合開始時からしばしばファウルを繰り返してきたマシュー・ボドメルがジャビ・ナバロにタックル、イングランド人の主審は24年前のオランダ人主審とは異なる対応をした。ボドメルにはレッドカードが突きつけられ、リールは早くも10人で戦わざるを得なくなったのである。その直後、セビリアはフレデリック・カヌーテが先制点、さらに前半のロスタイムにはルイス・ファビアーノが追加点、2-0とリードしてハーフタイムを迎える。2点のビハインドは24年前の西ドイツである。後半に入って71分に今度はセビリアに退場者が出て、人数的には10対10のイーブンとなる。しかしリールにはカール・ハインツ・ルンメニゲもクラウス・フィッシャーもいなかった。結局0-2で敗れたリールは通算成績1-2となり、今回もまたベスト16にとどまった。そしてフランスのサッカーファンは24年前の悪夢を忘れ去ることができなかったのである。
■ロシアで勝てないマルセイユ
一夜明けたフランスは重い空気が漂った。まず、夕方の17時、ロシアのサンクトペテルブルクでマルセイユが逆転勝利を目指す。しかしマルセイユを待ち受けたのはマイナス6度の気温と凍結したグラウンドであった。そしてマルセイユは負傷などで大幅に戦力ダウン、パリサンジェルマンとスコアレスドローに持ち込んだ若手選手を起用したが、奇跡は2度は続かなかった。前半から両チーム攻め手を欠き、無得点が続く。パルク・デ・プランスではスコアレスドローでよかったが、ホームの第1戦で負けているこの試合は勝たなくてはならない。ところが69分、ゼニト・サンクトペテルブルクの選手が放ったシュートを負傷したファビアン・バルテスに代わって出場したセドリック・カラッソが止められず、先制点を許す。2点が必要になったマルセイユはフレデリック・デウが同点ゴールをすぐさま決めるが、勝ち越し点を奪うことができない。そして終了間際の90分にはカラッソがファウルで一発退場、敗退したマルセイユは7年前のモスクワに続き、苦いロシアでの経験となったのである。
■国内リーグに専念するストラスブールも敗退
そして最後の頼みの綱はストラスブールである。ところがアウエーの第1戦を0-2と落としたストラスブールは降格の危機にあるリーグ戦を優先するため、ホームでの第2戦では主力を温存する。代表チームよりクラブチーム、欧州カップよりも国内リーグという欧州サッカー界の現実がうかがわれる。試合は常にバーゼルが先手を取る展開となった。開始早々の3分にバーゼルが先制、11分にストラスブールが追いつくが、26分にバーゼルは勝ち越し点、大量点が必要となったストラスブールであるが、ゴールは遠い。ようやく78分に同点に追いつくが、地元での敗戦を逃れるのが精一杯。結局通算スコア2-4で敗退、国内リーグへ専念することになった。
フランス勢がUEFAカップで準々決勝に進出できなかったのは3年ぶり、国民の期待はチャンピオンズリーグのリヨンが一手に引き受けることになったのである。(この項、終わり)