第541回 リヨン、3年連続の準々決勝敗退(1) ゲームを支配しながらスコアレスドロー

■国内外のカップ戦では実力を発揮できないリヨン

 3年連続でチャンピオンズリーグの準々決勝に進出したリヨン、今年こそフランスのサッカーファンの悲願を達成して欲しいところである。リヨンの準々決勝での相手はACミラン、1990年前後に栄華を誇ったクラブであるが、この時に王者に立ち向かったのがマルセイユである。本連載でも何度か取り上げているが、マルセイユはACミランとの直接対決では譲ることはなかったが、ACミランは3度欧州の頂点に立ち、マルセイユは一度も頂点に立つことなく没落してしまった。
 そのマルセイユに替わって現在のフランスのサッカーを牽引するのがリヨンである。国内でのリヨンの強さは改めてここで紹介する必要はないであろう。国内リーグでは無敵のリヨンであるが、不思議なことに国内のカップ戦ではタイトルには手が届かない。それと同様に、欧州の舞台でもベスト8どまりである。一昨年の準々決勝ではFCポルト、昨年の準々決勝ではPSVアイントホーヘンカップと前評判ではリヨンが上回りながら、敗退しておりカップ戦には強くないようである。また、準々決勝以降の組み合わせが決まったがリヨンは準々決勝も準決勝もホームで第1戦を行う。ホームアンドアウエーのノックアウト形式の場合、ホームで第2戦を戦うチームが有利であり、恵まれないドローになった。

■イタリア勢に強いリヨン

 しかし、今季のチャンピオンズリーグではグループリーグの段階で段違いの力を見せ、楽々とグループリーグ突破を決め、決勝トーナメント1回戦では前年道を譲ったPSVアイントホーヘンを下して準々決勝に駒を進めた。また、イタリア勢との相性もいい。前身のチャンピオンズカップを含むこれまでのチャンピオンズリーグでのフランス勢とイタリア勢の対戦成績は12勝7分15敗と負け越しているが、リヨンがイタリア勢と対戦したのはこれまでに1度、2002-03シーズンのグループリーグでインテルミラノと対戦している。グルーリーグの順位はインテルミラノが1位、リヨンが3位であったが、直接対決ではリヨンが上回っている。両チームの対戦については本連載第142回で紹介しているが、ミラノでのアウエーゲームで圧倒し2-1と勝利を挙げ、リヨンでのホームゲームでは2度にわたりリードするものの、逆転を許し、最後に追いつくと言う展開で3-3のドローとなる。インテルミラノとの対戦を1勝1分と勝ち越しながら、残りのアヤックスアムステルダム(オランダ)、ローゼンボリ(ノルウェー)との対戦成績の差でリヨンの方が低い順位になってしまった。

■フランスで勝てないACミラン

 一方のACミランであるが、意外とフランスとの相性はよくない。本連載の読者の方であれば、1993年5月26日のミュンヘンでの決勝でマルセイユに0-1と敗れたことはよくご存知であろう。その前年には準々決勝でマルセイユと対戦し、マルセイユでの試合はマルセイユが1-0と勝っている。そして近年もミラノはフランスが苦手である。このところの欧州カップではフランスではなかなか勝てない。チャンピオンズリーグで優勝した2002-03シーズンも1次リーグでランスと同じグループに入り、ランスでは1-2と敗れている。その2年前は2次リーグで敗退しているが、この時はパリサンジェルマンと2次リーグで同じグループとなりパリでは1-1で引き分けている。さらに1995-96シーズンはUEFAカップの準々決勝でボルドーと対戦し、ミラノで第1戦では2-0で勝利したものの、ボルドーでの第2戦は0-3と絵に描いたような逆転負けを喫する。結局ミラノがフランスで勝利したのは1994-95シーズンのチャンピオンズリーグ準決勝のパリサンジェルマン戦が最後であり、10年以上勝利から見放されている。

■一方的に攻め込みながら得点を奪えず、ドロー

 リヨンはジュニーニョを欠く布陣で3月29日の地元での第1戦に挑んだ。ジュニーニョが不在でも試合は一方的なリヨンのペース、次々とACミランのゴールを襲うがブラジル代表GKでアトランタオリンピックの日本戦にも出場したジダが好セーブを見せる。リヨンがこの日浴びせたシュートは実に20本、5本しかシュートできなかったACミランの実に4倍のシュートを放つが、得点には至らない。リヨンは圧倒的に押しながら得点を奪うことができず、ミラノでの第2戦に全てを託すことになったのである。(続く)

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