第561回 フランス代表メンバー発表(4) 二冠メンバーに頼らざるを得ない人材難
■国際大会に6連続出場となる仏日
前回の本連載では2人の新人選手が選出されたことが極めて異例であると紹介したが、逆に残りの21人はこれまでのレイモン・ドメネク監督の路線の中で選出されてきた選手である。また、フランスは10年前のイングランドでの欧州選手権以来、ワールドカップと欧州選手権の本大会に6大会連続して出場することとなる。奇しくも日本も1996年のアジアカップ以来、アジアカップとワールドカップの本大会に欠かさず出場している。
■現在の先発メンバーの3分の2を占める二冠メンバー
この10年間の選手の移り変わりを見てみよう。まず、過去5回の国際大会に出場してきた選手が3人いる。ファビアン・バルテス、リリアン・テュラム、ジネディーヌ・ジダンである。バルテスは賛否両論の中、今大会の正GKに指名され、テュラムとジダンは昨夏代表に復帰、ワールドカップ出場に貢献し、ジダンはドイツでのワールドカップが選手としての最後の勇姿となる。
そして1998年のフランス大会からメンバーに加わったのが守備的MFのパトリック・ビエイラ、攻撃陣を支えるティエリー・アンリとダビッド・トレゼゲである。さらに2000年の欧州選手権から加わったのがシルバン・ビルトールである。この7人は今回も先発メンバーとして出場するであろう。つまり先発メンバーの3分の2は二冠を知る世代であり、その当時から主力メンバーであった。
■大半がメンバーに定着しなかった2004年大会の新メンバー
フランスのサッカーがかげりを見せたのは2002年のワールドカップからである。2002年ワールドカップはグループリーグ敗退、2004年欧州選手権は決勝トーナメント1回戦で敗れる。2002年ワールドカップからは登録メンバーが23人となったが、韓国での敗退を受けてジャック・サンティーニ監督に代わり2004年欧州選手権は9人のメンバーが入れ替わった。逆に14人が2002年ワールドカップと2004年欧州選手権に連続出場したが、この9人の新メンバーと15人の既存メンバーのその後は対照的である。
2004年欧州選手権も不本意な成績であったことに間違いはない。2004年の欧州選手権敗退を受けてレイモン・ドメネク監督に代わり国内リーグに所属する選手を多く起用するようになったが、2002年と2004年の連続出場組の14人のうち、今回の2006年組とならなかったのは現役を引退したマルセル・デサイー、ビシャンテ・リザラズだけである。
一方、2004年に新たに加わった9人のうち今回もメンバーとなったのはグレゴリー・ランドロー、ジャン・アラン・ブームソン、ウィリアム・ギャラスのわずか3人であり、ブルーノ・ペドレッティ、オリビエ・ダクール、ロベール・ピレス、ジェローム・ロタン、シドニー・ゴブー、スティーブ・マルレは今なお現役であるがメンバーから外れている。ピレス以外の5人の現役選手は2004年欧州選手権が初めての国際大会の本大会の出場であった。これは2002年に惨敗したチームの立て直し役としてポルトガルでの活躍を期待されて新たに加わったメンバーが期待に応えられなかったことを意味している。さらに今回外れたメンバーは中盤の選手が多いが、ジダン、クロード・マケレレなどのカムバックにより押し出された形となった。
今回の23人のメンバーのうち8人は2004年の欧州選手権と入れ替わり、新たにエリック・アビダル、ガエル・ジベ、ビカッシュ・ドラッソー、ジブリル・シセ、フローラン・マルーダ、アルー・ディアラ、フランク・リベリー、パスカル・シンボンダが加わったが、既存の勢力をしのぐ力量を備えてメンバーとなったとは言い難い。2004年欧州選手権で新たに加わったメンバーが1大会のみでメンバーから外れ、彼らに代わってメンバーに入っただけという厳しい見方をせざるを得ない。
■今回も希望を託す二冠メンバー
結局、フランスは1998年ワールドカップと2000年欧州選手権で二冠を獲得したメンバーを軸に今回もメンバー選考をせざるを得ない人材難に直面している。2002年の敗退から立ち上がる原動力を今回もまた前世紀の栄光のメンバーにすがらなくてはならないのである。しかしサッカーは11人で行うスポーツであるが、二冠メンバーは7人しか残っていないのである。(この項、終わり)