第564回 3つの親善試合、デンマーク戦(1) 本大会出場を逃したデンマーク

■過去2回の本大会で対戦したフランスとデンマーク

 勝利したとは言え、内容は満足できるものではなかったメキシコ戦、フランスにとって第2の親善試合はランスでのデンマーク戦である。デンマークとフランスは過去2回のワールドカップ本大会のグループリーグの最終戦で対戦している。しかし、この2回の試合は対照的なものであった。まず1998年はフランスは南アフリカ、サウジアラビアに連勝し早々と決勝トーナメント進出を確定する。第3戦のデンマーク戦は退場による出場停止のジネディーヌ・ジダンを欠くだけではなく、控えメンバー中心の布陣で対戦した。控えメンバーによる試合であったが、プレッシャーから解き放たれたイレブンはデンマークを2-0と完封する。
 ところが2002年大会は全く逆の状況となった。フランスは第1戦でセネガルに0-1と敗れ、第2戦はウルグアイとスコアレスドロー、この試合でティエリー・アンリが退場処分となる。大会前の韓国との親善試合で負傷したジダンはこの2試合には出場しなかったが、逆転決勝トーナメント進出を期して痛々しい姿で仁川でデンマーク戦のピッチに立つ。2-0でフランスが勝利すれば決勝トーナメント進出の望みがあったが、逆に0-2と完敗し、フランスは1点も取ることができず、グループリーグで敗退する。あまりにも対照的な2回の対戦である。

■代替出場に敗れた1992年、死のグループで勝利した2002年

 一方、最近の欧州選手権でもフランスはデンマークと2回対戦している。1992年大会ではデンマークはユーゴスラビアの代替出場となり、フランスと第3戦で対戦する。フランスは第1戦で開催国のスウェーデン、第2戦で強豪のイングランドと対戦し、2試合とも引き分けており、デンマーク戦で勝って準決勝に進出する予定通りのシナリオでグループリーグ最終戦を迎えた。ところが、デンマークに先制を許し、一旦はジャン・ピエール・パパンのゴールで追いつくものの、決勝点を奪われ、優勝候補筆頭と言われていたフランスはグループリーグで姿を消す。
 最近の国際大会の本大会で勝たなければならない試合で勝った唯一の試合が2000年欧州選手権のグループリーグである。2年前の世界チャンピオンフランスはグループリーグでデンマーク、チェコ、オランダと言う強豪揃いの「死のグループ」に入る。フランスは初戦でデンマークに3-0と快勝する。続くチェコ戦も2-1と連勝し、主力メンバーを休養させたオランダ戦は敗れ、グループ2位にとどまったものの、決勝トーナメントでは劇的な試合を制し、優勝する。
 このように考えると、デンマークとのこれまでの対戦成績はフランスが5勝1分6敗と若干負け越しているが、戦績以上に分が悪い相手であるという印象が強い。

■混戦を抜け出せなかった今回のワールドカップ予選

 ところが、このデンマークもこのたびのワールドカップ予選では苦汁を飲んでいる。前回大会3位のトルコ、欧州選手権優勝のギリシャ、新興国のウクライナのほか、アルバニア、グルジア、カザフスタンと同じグループ2に入る。初戦のホームでのウクライナ戦に引き分け、トルコともホームで引き分けてしまう。最終節の前節の10月8日のホームのギリシャ戦で勝利して3位に浮上し、2位トルコと勝ち点1差で最終戦を迎える。10月12日の最終戦はデンマークがアウエーのカザフスタン戦、トルコもアウエーでのアルバニア戦。両チームとも力関係から行って勝利はかたいが、何が起こるかわからないのがワールドカップ予選である。しかし、デンマークの期待はかなわず、トルコはアウエーで1-0と勝利し、プレーオフへのチケットを手に入れる。ワールドカップや欧州選手権の本大会でフランスを苦しめてきたデンマークはドイツでのワールドカップを逃してしまったのである。実は前回のワールドカップでフランスを最下位に押し込んだセネガル、ウルグアイ、デンマークはいずれも今大会は予選で敗れているのである。

■ワールドカップ予選敗退後は好調なデンマーク

 デンマークはモルテン・オルセン監督が続投、メンバーも継続して2008年の欧州選手権を目指す。1月末から2月初めにかけてアジア遠征を挙行、シンガポール、香港、そして韓国と対戦し、3連勝したことは日本の皆様もよくご存知であろう。ワールドカップ予選以降4勝1分という成績のデンマークがフランスに挑戦するのである。(続く)

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