第565回 3つの親善試合、デンマーク戦(2) イメージ通りの試合で快勝

■手応えのある相手との最後の試合となるデンマーク戦

 勝利したとはいえ、内容に不満の残るメキシコ戦の次の相手はデンマークである。前回の本連載で紹介したとおり、ワールドカップには出場しないものの、メンバーも継続しており、チームとしての完成度も高い。最後の相手となる中国はワールドカップ予選で敗れてメンバーを一新しており、手ごたえのある相手との最後の対戦となる。
 首都パリを離れて舞台はランス、気温はこの時季でも10度以下となる。フランス代表はこれまで6回このフェリックス・ボラール競技場で試合をしたことがあるが、戦績は5勝1分、その中には1998年ワールドカップ決勝トーナメント1回戦のパラグアイ戦も含まれている。この試合、ジネディーヌ・ジダンを欠くフランスはグループリーグからランスに居座っていたパラグアイに手を焼き、延長後半のローラン・ブランのゴールデンゴールでようやく勝利している。また勝ち星をあげることのできなかった唯一の試合は1992年欧州選手権前の親善試合のオランダ戦である。この時は優勝候補と言われながら大会前の親善試合で調子を落とし、本大会ではデンマークに蹴落とされている。

■メキシコ戦と2トップだけを入れ替えた布陣

 フランスはメキシコ戦と1人を除き同じメンバーを同じシステムで先発させた。GKはファビアン・バルテス、DFは伝統の4 バック、右サイドにビリー・サニョルと中央にリリアン・テュラムとウィリアム・ギャラス、左サイドはエリック・アビダル、MFはダイヤモンド型で中盤の底にクロード・マケレレ、右サイドにパトリック・ビエイラ、左サイドはフローラン・マルーダ、攻撃的な中央の位置にジネディーヌ・ジダンとここまでは変わらない。2トップはメキシコ戦のジブリル・シセとダビッド・トレゼゲに代えて左サイドはティエリー・アンリ、右にルイ・サアと攻撃陣をテストする。

■交代選手が活躍、パスカル・シンボンダも代表デビュー

 この試合でフランスはメキシコ戦とは見違えるような出来を見せる。13分にはサニョルからのロングパスを受けたサアがアンリにつなぎ、アンリが右足で先制点を決める。その後も優勢に試合を展開する。前半は1-0で折り返し、メンバーチェンジなしで後半に突入する。後半はまず攻撃陣の選手を入れ替えた。まずサアに代えてシルバン・ビルトールを投入、そしてジダンに代えてフランク・リベリーを投入する。リベリーにスピードについていけないデンマーク守備陣がファウルをペナルティエリア内で犯し、フランスにPKが与えられる。ジダンのいないメンバーの中からキッカーになったのはビルトール、ビルトールは後半途中からの出場選手がからんでフランスは追加点をあげた。2点差となったところで守備陣のメンバー交代を行った。両サイドのバックアップ選手を投入する。まず左サイドのアビダルに代えてミカエル・シルベストル、そして右サイドのサニョルに代えてオレンジ色のスパイクがトレードマークの新人パスカル・シンボンダがついに代表にデビューする。
 両サイドの交代選手も無難な守備を見せ、試合は2-0とフランスが勝利し、4年前の仁川での雪辱を果たす。

■ジャン・ピエール・パパンの再来となるか、フランク・リベリー

 この試合の収穫はようやくドメネク監督がイメージしていたとおりの試合を行うことができたこと、そして代表2試合目のリベリーが攻撃陣として見事に機能したことである。リベリーの所属するマルセイユのファンはリベリーの姿をかつてマルセイユで活躍したジャン・ピエール・パパンに重ね合わせる。マルセイユのストライカーであるという共通点以外に、代表にデビューした次期がちょうどワールドカップ直前であることにファンは期待する。
 パパンは1986年2月の北アイルランド戦でフランス代表にデビューする。ワールドカップ本大会直前にフランス代表に合流し、代表2試合目となるワールドカップ初戦のカナダ戦で決勝点をあげる。グループリーグ3試合に出場し、決勝トーナメントのイタリア戦、ブラジル戦などには出場しなかったが、その後のフランス代表での活躍は改めてここで紹介するまでもないであろう。
 パパンがなしえなかった世界の桧舞台での活躍を、リベリーがすることができれば、フランスは再び王者の地位につくことができるのである。(この項、終わり)

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