第569回 最初の関門、スイス戦(3) 猛暑と高齢化に勝てず、スイスとスコアレスドロー

■地元開催の2008年欧州選手権に向けて発展途上のスイス

 6月13日、フランス代表がいよいよワールドカップの初戦を迎えた。これまでドイツでは西ドイツ時代に1974年ワールドカップ、1988年欧州選手権が行われているが、いずれもフランスは予選で敗れている。フランスにとって、これまで数多くの戦争を繰り広げてきたドイツの地での初めての国際大会であり、国民は勝利を期待している。
 相手のスイスは前回の本連載でも紹介したとおり、2001年にスイス代表監督に就任したコビ・クーン監督は就任時に行われていた2002年ワールドカップ予選は勝ち抜くことができなかったが、2004年欧州選手権予選はロシア、アイルランドを押さえて首位で突破、今回のワールドカップ予選はグループ4でフランスに次ぐ2位となり、プレーオフでトルコを下して1994年米国大会以来の本大会出場を果たした。最終的な目標は2年後の地元開催の欧州選手権であるが、2004年欧州選手権での敗退後の新チーム発足以来、クーン監督が手塩にかけてチームを熟成させてきた。試合はその熟成の度合いの違いが明確になった。

■平均年齢が大きく違う両チーム

 フランスの布陣はティエリー・アンリが1トップ、アンリを支える攻撃的MF陣は中央にジネディーヌ・ジダン、右にシルバン・ビルトール、そして左にフランク・リベリーという顔ぶれである。
 攻撃陣のタレントに勝るフランスは試合開始から数々のチャンスを得る。一方のスイスはフランスの個人技頼みの攻撃に対し、組織力と運動量で対抗する。スイスの平均年齢は25.3歳、出場32か国中ではガーナに続き2番目に若い。一方のフランスはチーム全体の平均年齢こそ28.6歳であるが、30歳以上の選手で先発メンバーから外れたのは控えGKのグレゴリー・クーペと後半に交代出場することとなるビカッシュ・ドラッソーの2人だけであり、先発した11人の平均年齢は29.9歳となる。個人技のフランスと若さと組織力のスイスという好対照なチーム編成の試合は両チームの高度な駆け引きのある試合となった。

■精度を欠くプレー、不運も重なり前半は無得点

 前半はフランスが数多くのチャンスを掴む。次々とスイスゴールを脅かすが、枠から外れ、ゴールネットを揺るがすことができない。逆に24分、劣勢のスイスはトランキロ・バロネッタのロングFKがフランスゴールを襲うが、ポストに当たり、ゴールならず。フランスもアンリ、リベリーなどはプレーに精度を欠き、ミスを多発する。そのリベリーとアンリがこの試合唯一とも言っていい完璧なコンビプレーを見せたのは38分、リベリーからのクロスをゴール正面のアンリがシュート、ところがこのシュートはスイスのDFでリヨンに所属するパトリック・ミューラーの左手に当たり、失速し、得点には至らなかったが、ロシア人の主審はハンドの宣告をせず試合続行、結局前半は両チーム無得点となる。

■ワールドカップ4試合連続の無得点でスコアレスドロー

 18時キックオフの試合とは言え、厳しい日差しと暑さの中で再開された後半はフランスにとっては過酷な45分となった。フランスは足が止まり、全てのプレーに精彩を欠く。スイスは組織力、走力ともに衰えるところがなく、フランスを圧倒する。ドメネク監督は攻撃陣の選手交代に踏み切る。リベリーに代わりルイ・サア、ビルトールに代えてドラッソー、とフレッシュな選手を投入し、この2人が幾度か好機を演出したが、結局ゴールを奪うことができず、試合はスコアレスドロー。フランスとスイスはこれで3試合連続のドローとなり、フランスはこれでワールドカップ4試合連続の無得点となった。
 高齢化したフランスの弱点が露呈し、逆にスイスの若さと組織力が評価される試合となったが、逆にフランスは個人技だけでもある程度の戦いができることがわかった。また、これまでも再三議論となったGKであるが、ファビアン・バルテスは無失点で90分を乗り切った。グループGでフランスと拮抗する力を持っているスイスに負けなかったことに安堵するファンも少なくないはずである。しかし、フランスが勝ち点1で満足している翌日、フランスのファンは前回4位のアジアの虎・韓国のパワーを目のあたりにする。悲観論が急速に台頭したのである。(この項目、終わり)

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