第570回 前回4位の韓国と対戦(1) フランスにとって悪夢の地、韓国

■前回4強チームと初めてグループリーグで対戦するフランス

 初戦をスイスとスコアレスドロー、決定機ではスイスを上回りながらもチームのコンディションに大きな不安を与えたフランス代表、第1シード国で初戦を勝利でスタートすることができなかったのはフランスだけである。
 第1シード国としての威信に関わるような試合をしてしまったフランスの第2戦はトーゴに2-1と逆転勝ちした韓国である。
 韓国は前回大会で4位になりながら、今回は第1シードとはなっていない。フランスがこれまでのワールドカップ本大会のグループリーグで前回の4強と対戦するのは初めてのことである。すなわち、フランスのワールドカップの歴史でグループリーグ史上最強の相手であるとも考えられる。今大会の予選も序盤でつまずき、監督の更迭が続いたが、本大会の初戦は見事にトーゴに逆転勝ちして実力のあるところを見せている。

■韓国経済の支援を受けるフランスのサッカー

 フランスにとって韓国は少々やりにくい相手である。というのは代表チームからクラブチームにいたるまで、フランスのサッカーは韓国からの経済的支援を受けているのである。1970年代にユニフォームへの広告が認められてからは当面フランスのクラブにはフランス企業がスポンサーとなっていた。ところが1980年代からは他国の企業もスポンサーとなり、特に日本企業の力は絶大であった。1989年にマルセイユの胸スポンサーにPanasonicのロゴが入ったときはフランスサッカー史上最高のスポンサー代と話題になったものである。ところが、1993年のJリーグ発足がすべてを変えた。日本企業はそれまでの欧州のクラブの支援を止めて自国のクラブのスポンサーとなる。フランスのクラブの胸からは日本の企業の名前がなくなった。これはフランスだけの現象ではなく欧州全般に見られた現象である。時を同じくしてボスマン判決により、クラブの財力が問われる時代になった。そこに現れた救世主が韓国企業である。フランスでも多くのクラブが日本企業のロゴから韓国企業のロゴに変わった。フランス代表もまた韓国企業のロゴをつけていた。
 さらに韓国企業は単純にトップチームのスポンサーになって市場開拓をするだけではなく、サッカーの普及という観点からジュニアやアマチュアの大会にも積極的にスポンサーとなっている。このように韓国経済抜きにフランスサッカーは語れないのである。

■新人が代表に定着しなかったコンフェデレーションズカップ

 ところが、フランスのサッカー界にとって韓国は悪夢の地である。フランスが初めて韓国の地を踏んだのは2001年のコンフェデレーションズカップの時、初戦で韓国と対戦し5-0と大勝、第2戦は豪州に0-1と敗れる。そしてグループリーグの最終戦でメキシコに4-0と勝利して決勝トーナメントに進出する。準決勝ではブラジルに勝ち、決勝進出を決めて日本に渡り、決勝では日本を下して優勝する。この大会は主要リーグの日程と重なり、各国とも若手選手を多く起用した。フランスの場合、この大会で代表にデビューした選手は実に8人。エリック・カリエール、オリビエ・ダクール、グレゴリー・クーペ、ズーマナ・カマラ、フレデリック・ネー、ニコラ・ジレ、ジェレミー・ブレッシェ、ミカエル・ランドローが韓国の地で代表にデビューしているが、その後代表に定着した選手は数少なく、今大会の控えGKの2人くらいである。

■ジネディーヌ・ジダンの痛恨の負傷、グループリーグでの惨敗

 そしてその翌年、フランスは再び韓国の地を踏む。本大会開幕の1週間前にフランスは韓国と親善試合を行う。日本の岡田正義氏が主審を務めたこの試合でジネディーヌ・ジダンは韓国選手のタックルを受け、負傷してしまう。ジダン不在の中で始まったワールドカップでの惨敗はここで改めて記すまでもないであろう。
 前回4強となりながら第1シードに入ることができなかったアジアの虎は、フランスとの3度目の対戦で初勝利、グループリーグ突破を狙っているのである。(続く)

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