第41回 さらば、ヨーロッパ(3) 初冬の陣、リールとリヨン、UEFAカップ4回戦に進出
■リール、花の都でフィオレンチナに先勝
ボルドー、パリサンジェルマンが敗退したUEFAカップ3回戦、残された希望はチャンピオンズリーグから回ってきたリールとリヨンである。両チームとも今季リーグでは好調であり、チャンピオンズカップの一次リーグではわずかに力が及ばなかったが、心機一転してUEFAカップでの活躍が期待される。
リールの対戦相手はフィオレンチナ(イタリア)、リヨンはクラブ・ブルージュ(ベルギー)と対戦。フィオレンチナもクラブ・ブルージュもキリンカップで訪日したことがあることから日本のファンの皆さんには親近感のあるチームであろう。フランスのチームは欧州カップでは伝統的にイタリアのクラブを苦手としているが、リールはチャンピオンズリーグの予備戦でパルマを破っている。フィオレンチナは財政的な問題もあり、今季の国内リーグでも下位低迷をしている。しかしながら、リールにも不安材料がないわけではない。直前のリーグ戦ではリヨンに2-4、オセールに1-2とアウエーとはいえ連敗しており、順位も2位から4位へと下げており、チームの状態は下降気味である。同じく元気のないフィオレンチナに勝って、調子を取り戻したいところである。11月22日にリールは花の都・フィレンツェに乗り込む。チーム状態に自信のないフィオレンチナはホームゲームであるにも関わらず、守備的な布陣でスタートする。前半24分にダギ・バカリがフィオレンチナのGKの頭越しにシュートを決めて先制点、この1点を守りきって第1戦を制す。
■ホームでも完封勝ち、年越しを決める
この勝利でリールはリーグ戦でも調子を取り戻し、3日後のレンヌ戦には1-0と勝つ。一方、この敗戦が尾を引いたのか、フィオレンチナは国内リーグでも精彩を欠き、セリエB降格のライバルであるピアチェンツァを12月2日にホームに迎えたが1-3と敗戦を喫する。順位表でフィオレンチナより下にいるのはベネチアだけ、という緊急事態となった。しかもフィオレンチナは負傷者が続出、12月8日のリールでの第2戦には若手選手を大幅に起用し、なんと18歳の選手が5人もピッチに立つことになった。リールはイタリアの名門相手に余裕のある戦いでブルーノ・シェイルーとミル・スタジョブスキーのゴールで2戦連続して完封勝利をおさめ、年越しを決めたのである。
■リヨン、アンデルソンのハットトリックで大逆転
一方のリヨンの3回戦は劇的な戦いになった。水の都・ブルージュでの第1戦、立ち上がりの4分に失点。アウエーでの失点は覚悟すべきかもしれないが、その後もクラブ・ブルージュは54分、75分と得点を重ねる。リヨンも83分に1点を返すが、ブルージュはロスタイムに入った90分にだめ押しの4点目を入れる。アウエーで1-4と敗れたリヨンは第2戦では少なくとも3-0で勝たなければ次に進めず、ほぼ絶望的と思われた。過去の欧州カップでアウエーの第1戦を1-4で落としているチームが第2戦で逆転勝利をおさめた確率はわずか7%。しかし、リヨンのジェルラン競技場ではその7%の大逆転が起こった。リヨンは昨年のフランスリーグ得点王のソニー・アンデルソンが19分と23分に得点をあげ、あと1点である。しかし、3点目はなかなか入らない。後半に入っても両チームのスコアに動きはなく、時計の針だけが進んでいく。ブルージュでの試合終了間際の4点目の失点が悔やまれる。時計はすでに90分を回り、ロスタイム。そして93分、アンデルソンが3点目を入れる。この試合の得点者はアンデルソンだけであり、正真正銘のハットトリックである。見事に地元リヨンの大観衆の前でドラマは完結したのである。
欧州カップを戦うフランス勢で越年することができたのはチャンピオンズリーグで苦戦しているナント、そしてUEFAカップ3回戦で完勝したリールと劇的な逆転勝ちをおさめたリヨンの3チームである。次回は年が明けて春のフィナーレに向けたこれらのチームの戦いを紹介したい。(続く)