第584回 美しく青き敗者たれ(2) 大会中に成長した若手3人衆

■ほとんどメンバーが変わらなかった守備陣

 PK戦で敗れ2度目の優勝を果たすことはできなかったが、今回のフランス代表の大会に入ってからの進化については目覚しいものがあった。1勝2分という成績で進出した決勝トーナメントからはフランスは不動のメンバーで4試合を戦う。GKはファビアン・バルテス、DFラインは4バックで右サイドにビリー・サニョル、中央にリリアン・テュラムとウィリアム・ギャラス、左サイドはエリック・アビダルとなる。守備的なMFはパトリック・ビエイラとクロード・マケレレ、ここまでの陣容はグループリーグの第1戦以来基本的に変わらない。例外はグループリーグの第3戦に累積警告で出場停止となったアビダルに代わり、ミカエル・シルベストルが出場しただけである。

■決勝トーナメントから不動のメンバーとなった攻撃陣

 そして攻撃陣は中央のMFにジネディーヌ・ジダン、右にフランク・リベリー、左にフローラン・マルーダを配し、FWは1トップでティエリー・アンリである。グループリーグ第1戦のスイス戦はアンリの1トップでMFは中央にジダン、右サイドはシルバン・ビルトールであり、リベリーは左サイドであった。そして第2戦の韓国戦はスタミナに難のあるリベリーに代えてフローラン・マルーダを起用し、1トップはアンリのままでMFは中央にジダン、右にビルトール、左にマルーダと言う布陣であった。そして背水の陣に追い込まれた第3戦のトーゴ戦はついに伝統の2トップに戻し、アンリとダビッド・トレゼゲをFWに起用し、攻撃的MFを右のリベリーと左のマルーダが務めた。この試合でフランスは大会が始まって初めて白星を収める。
 ジダン不在の中での勝利であったが、圧倒的不利が予想されたスペイン戦では1トップに戻し、攻撃的MFの中央にジダン、トーゴ戦で初めて右サイドを任されたリベリーを右サイドに、韓国戦から先発メンバーに名を連ねたマルーダが左サイドに配置することとなった。
 決勝トーナメントに入ってからのジダン、ビエイラ、テュラムなどの活躍については改めてここで紹介しないが、経験の浅いマルーダ、リベリーが機能したことは特筆に価する。また、左サイドのDFのアビダルも出場停止になった試合以外の6試合に先発出場しており、この3人がドイツの地で活躍したことが準優勝という結果につながったのである。

■左サイドを支えたアビダルとマルーダ

 アビダルは代表にデビューしたのはレイモン・ドメネク監督の初陣となる2004年8月14日のボスニア・ヘルツェゴビナ戦であったが、ワールドカップ予選には1試合も出場していない。親善試合のみに5試合出場し、しかもそのうち2試合は試合終盤から交代出場という少ない代表歴で23人のメンバーに入ったが、本大会直前のメキシコ戦で抜擢され、デンマーク戦、中国戦にも出場し、レギュラーの座を勝ち取った。
 左サイドでアビダルからパスを受けることの多かったマルーダはアビダルより若干遅く2004年11月17日のポーランド戦で代表にデビュー、ワールドカップ予選4試合を含む10試合に出場した段階でワールドカップ本大会のメンバーに選ばれた。メキシコ戦では代表初ゴールをあげてから調子の波に乗った。第1戦のスイス戦こそ出場機会がなかったが、韓国戦からイタリア戦まで左サイドからの攻撃を支えた。実はマルーダは昨年のワールドカップ予選が終了してからのすべての親善試合に出場していたのである。

■大会中に飛躍したリベリー

 そして今大会のフランスチームで大会期間中に最も成長したのはリベリーであった。代表歴のないままワールドカップのメンバーに選出され、大会前の3つの親善試合ではいずれも試合終盤に交代出場、これと言った見せ場を作ることができなかったが、本大会の初戦であるスイス戦では左サイドのMFとして先発出場を果たす。韓国戦では途中からの交代出場となったが、この試合で右サイドのMFを努める。トーゴ戦以降は完全に右MFという定位置を手中にし、試合ごとに成長し、スタミナ不足といわれたが、決勝では延長前半の100分までグラウンドを走り回った。
 この若い3人の成長があってフランスは栄光のファイナリストとなった。さらに興味深いことに現在マルセイユに所属するリベリーが噂通りリヨンに移籍すれば若手3人衆はリヨンに集結するのである。(続く)

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