第588回 ワールドカップ回顧(3) 活躍した欧州勢と低迷した南米勢

■スウェーデンのレンヌトリオ

 フランスのクラブに所属してワールドカップに出場した選手の数は前回は56人、今回は57人とほとんど変わりがないが、その内訳は大きく異なる。前回大会はフランスを含む欧州の代表チームに所属する選手数は14人であったが、今回は23人と大きく増えている。数を押し上げたのは地元フランスが5人から11人へと倍以上に増えたことが大きいが、前回の本連載で紹介したとおり、ポルトガル、スイスにはそれぞれ3人のフランスのクラブに所属する選手がいる。さらに決勝トーナメントに進出したスウェーデンではアンドレアス・イサクション、エリク・エドマン、キム・カールストロームの3人がレンヌに所属している。同一クラブに3人の同国籍の3人の外国人選手というと、事例は1990年大会の西ドイツ代表のインターミラノ(ローター・マテウス、ユルゲン・クリンスマン、アンドレアス・ブレーメ)とオランダ代表のACミラン(フランク・ライカールト、マルコ・ファン・バステン、ルート・フリット)を思い出されるファンの方も多いであろう。
 また、旧東欧勢ではチェコにはダビッド・ロゼーナル(パリサンジェルマン)、ヤロスラフ・プラジル(モナコ)の2人、セルビア・モンテネグロにはウラジミール・ストイコビッチ(ナント)がフランスリーグのクラブに所属している。前回大会はフランスが5人のほかは2人が所属している国がベルギー、スウェーデン、ポーランド、1人が所属している国がドイツ、ポルトガル、ロシアであった。

■欧州のチームが活躍した今大会

 今大会の欧州勢はフランスが準優勝、ポルトガルが4位、スイスとスウェーデンが決勝トーナメント進出し、グループリーグで姿を消したのはチェコとセルビア・モンテネグロだけであった。すなわち、23人の欧州の代表チームに所属する選手のうち20人が決勝トーナメントに残っている。
 前回大会はフランス(5人がフランスリーグに所属)がグループリーグで敗退しただけではなく、ポーランド(2人)、ポルトガル(1人)、ロシア(1人)もグループリーグで姿を消している。決勝トーナメントに進出した3チームもドイツ(1人)は決勝に残ったものの、ベルギー(1人)、スウェーデン(2人)は1回戦で敗退している。14人の欧州のチームに所属する14人の選手のうち、9人はグループリーグ敗退の憂き目を見ている。
 このように考えると今回のワールドカップでフランスリーグに所属する選手がいた欧州のチームの活躍がフランス国内の盛り上がりに貢献したと言えるであろう。

■フランスリーグに所属する選手がいなかった北中米・カリブ地域

 一方、南北アメリカ大陸の国については大きく状況が変わった。前回大会は北中米・カリブ地域から2人、南米から5人が出場し、米国、メキシコ、ブラジル、アルゼンチン、パラグアイとバラエティに富んでいた。ところが、今大会では北中米・カリブ地域の代表チームにフランスのクラブに所属している選手はいなかった。

■不十分な活躍だったブラジルのリヨントリオ

 南米についても今回はブラジルから3人が選出されただけであった。ブラジルは優勝した前回大会では2人しかフランスのクラブに所属した選手はいなかったが、この2人の活躍は鮮烈であった。ロナウジーニョ(当時パリサンジェルマン)とエジミウソン(当時リヨン)の活躍は早々に自国代表が敗退したフランスのサッカーファンの心の支えとなった。
 今回のカナリア軍団にはフランスのクラブに所属している選手はクリス、ジュニーニョ、フレッドの3人、いずれもリヨンの選手である。しかし、このリヨントリオの活躍は十分なものではなかった。第1戦のクロアチア戦では誰も試合に出場せず、第2戦の豪州戦では終了3分前にフレッドが交代出場を果たす。そしてグループリーグ突破を確定した後の日本戦は控えメンバーにチャンスが与えられ、ジュニーニョがフル出場を果たす。鮮烈なFKからのゴールを決めたが、これが唯一の見せ場であった。ジュニーニョはガーナ戦は終盤に交代出場、フランス戦も先発しながら途中で退き、得意のFKを披露するチャンスはなかった。そしてクリスは全く出場機会がなく、カナリア軍団は準々決勝を最後に大会から去っていったのである。(続く)

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