第597回 新たな旅立ちボスニア・ヘルツェゴビナ戦(2) 戻ってきた男、リオ・マブーバとフィリップ・メクセス
■強敵がそろった欧州選手権予選
ワールドカップ準優勝という成績によりレイモン・ドメネク監督が継続して指揮を執ることとなったフランス代表の最大の目的は2008年欧州選手権出場であり、そのためにはイタリアと同組となった予選を勝ち抜かなくてはならない。グループBにはイタリアだけではなく、スコットランド、ウクライナなどフランスやイタリアを脅かすと思われる存在もあり、油断のならない相手がそろっている。
■レイモン・ドメネク監督とともにデビューしたリオ・マブーバ
ワールドカップのメンバーにエントリーされず、今回選出された5人の中でフランス代表歴があるのはリオ・マブーバとフィリップ・メクセスである。
マブーバはボルドーに所属するMFの選手、奇しくも初代表は2年前の真夏の親善試合、相手は今回と同じボスニア・ヘルツェゴビナである。本連載第362回から第364回でこの試合については紹介したが、この試合はドメネク監督の初采配となる試合であり、7人の新人を招集した。その7人の新人の中でマブーバは先発メンバーとして攻撃的MFに起用される。この試合にマブーバ以外で代表デビューを飾った選手は先発ではセバスチャン・スキラッチ、エリック・アビダル、パトリス・エブラ、交代出場ではガエル・ジベがあげられる。そして試合に出場できなかったのはアルー・ディアラとピエール・アラン・フローである。この7人のうち今回のワールドカップのメンバーとなったのはアビダル、ジベ、ディアラの3人である。試合はドローに終わり、ドメネク新体制のフランスは不安を抱えたまま、9月からのワールドカップ予選に突入する。
■ワールドカップ予選はわずか1試合しか出場しなかったマブーバ
まず第1戦はホームでのイスラエル戦、さすがにドメネク監督も不安を感じたのか、8月の試合で招集した新人のうちジベとスキラッチの2人しか起用せず、ベテランを中心に必勝を期す。ところが試合はスコアレスドロー、続くアウエーでのフェロー諸島戦もマブーバは出番がなく、ワールドカップ予選11年ぶりの勝利の場に居合わせることができなかった。そして今度こそホームで勝ちたい10月9日のアイルランド戦、マブーバが起用されるが、スコアレスドロー、ここでマブーバは長いトンネルに入る。次に起用されたのは2005年5月31日のハンガリーとの親善試合、2-0とリードした後半からマブーバは出場するが、これがフランス代表での現在までの唯一の勝利である。すなわちマブーバはこれまでの3試合は全て国内の試合であり、ボスニア・ヘルツェゴビナ戦に出場すれば、初めての国外での代表戦となる。
■ドメネク体制では代表歴のないフィリップ・メクセス
ASローマのメクセスは今回の5人のうち唯一国外のクラブに所属している選手である。2002年秋の欧州選手権予選のマルタ戦の終盤にリリアン・テュラムに代わってデビュー、以降も大差で勝っている試合の終盤でベテランDFに変わってピッチに登場するパターンが中心で、初めて先発出場を果たしたのは2003年6月に地元で開催されたコンフェデレーションズカップでのことである。コロンビア戦とニュージーランド戦に先発フル出場するが、その後はフランス代表から遠ざかる。2004年2月にフランス代表100周年を記念したベルギーとの親善試合が行われ、この時はフランス代表として初出場初得点を決めたルイ・サアに代わって85分からの数分間試合に出場しただけである。2-0とリードしている試合の試合終了間際にFWに代わって出場した選手がとして評価されるチャンスはないであろう。この記念すべき試合の勝利のホイッスルを聞いて以来、メクセスはブルーのユニフォームを着ていない。すなわちメクセスはドメネク体制下では一度も試合に出場することがなかったのである。
このように帰ってきた2人のうち1人はドメネク監督の初陣でデビューを飾った選手であり、もう1人はドメネク監督に成ってからは代表には縁がなかった選手と対照的な道を歩んできたが、打倒イタリアに向けた思いは同じなのである。(続く)