第602回 2006年バスケットボール世界選手権(3) 強豪相手の序盤戦は1勝1敗

■前回王者セルビア・モンテネグロ、初戦でナイジェリアに敗れる

 トニー・パーカーが右手人差指骨折と言うアクシデントに見舞われ、戦線離脱してしまったフランス男子バスケットボールチーム。4年前のサッカーの代表チームと同様、本大会前の最後の試合でエースを失ったことで暗雲が立ち込めた。
 そのフランスはグループリーグを仙台で戦う。パリとよく似た気候といわれる仙台はレンヌの姉妹都市である。8月19日の仙台での開幕戦はベネズエラ-レバノン戦、第2試合がセルビア・モンテネグロ-ナイジェリア戦、そして夜行われるメインの第3試合がフランス-アルゼンチン戦である。このグループはアルゼンチン、セルビア・モンテネグロ、フランスの3強が首位争いをすると見られていた。ところが、前回の優勝チームであるセルビア・モンテネグロはナイジェリアに75-82とまさかの敗戦でのスタートとなった。前回王者がアフリカからの出場国に第1戦で負けたというのも2002年のワールドカップと同様の事象である。

■オリンピックチャンピオンのアルゼンチンに大善戦

 その前回王者の敗戦の後に姿を現したのがフランスとアルゼンチンである。アルゼンチンは2004年アテネオリンピックの優勝国であり、最新の世界チャンピオンである。パーカーを失ったフランスは希望を捨ててはおらず、第1クォーターは接戦となり23-25とわずか2点のリードでアルゼンチンが制す。ところが第2クォーターはフランスの動きが止まり、10-19、前半を終了してフランスは11点のリードを許す。
 後半に入ってフランスは第3クォーターを17-12とリードし、6点差で最終クォーターを迎えるが、20-24と差を広げられ、結局は70-80と言うスコアで初戦を落としてしまう。しかしながら、パーカー離脱というショッキングな事件が訪日直前に起こったにもかかわらず、非常に組織的なプレーが目立ち、アルゼンチンに10点差の負けという成績は高く評価していいだろう。

■セルビア・モンテネグロと一進一退の攻防

 そして、第2日は欧州勢同士の戦い、セルビア・モンテネグロ戦である。大会第2日も波乱がグループAで起こった。第1試合で前日セルビア・モンテネグロを破ったナイジェリアが初日にレバノンに敗れたベネズエラに敗れる。第2試合ではアルゼンチンとレバノンという初日に勝利を飾ったチーム同士が対戦したが、アルゼンチンが107-72と100点ゲームで連勝する。この日もフランスは第3試合に登場する。初白星を挙げたい両チームであるが、フランスにとって試合内容は前日のアルゼンチン戦には及ばなかった。次々とボールをスチールされ、シュートの決定率も低い。ところが試合は大接戦となる。第1クォーターは21-19、第2クォーターは9-11と前半を終わった段階で30-30の同点となる。

■勝負の分水嶺となった最後の1分間、フランス初勝利

 後半に入っても一進一退の点の取り合いとなる。第3クォーターでフランスは18-14と4点をリードする。ところがこのリードをフランスは守りきることができず、残り1分となった段階で59-58とわずか1点のリードである。初勝利を目指す欧州の両雄の勝負の行方は最後の1分にゆだねられることとなった。最後の1分間を制したのはフランスであった。最後の1分間はフリースローの応酬となった。フランスのアイメリック・ジャノーとボリス・ディオーが6本中6本を決めたのに対し、セルビア・モンテネグロは6本中2本しか決めることができず、最終のスコアは65-61となる。3ポイントシュートが13本中2本しか決まらなかったフランスであるが、最後は精神力と集中力の勝利となった。両チームの試合中の最大得点差がわずか6点と言う接戦をフランスは制し強豪相手の序盤戦を1勝1敗という成績で乗り切ったのである。
 波乱含みの最初の2日間を終えた段階のグループAの成績は、2勝はアルゼンチンのみ、1勝1敗にフランス、ナイジェリア、レバノン、そして前回王者のセルビア・モンテネグロだけが2敗となったのである。(続く)

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