第606回 2006年バスケットボール世界選手権(7) 43年ぶりの5位入賞

■順位決定戦を行うバスケットボールの世界選手権

 世界選手権の準々決勝でギリシャに敗れてしまったフランス。2年前のポルトガルでのサッカーの欧州選手権と同じ結果になったが、順位決定戦が待っている。準々決勝で敗れた4チームが5位から8位までの順位を争う。
 フランス同様5位を目指す4チームはスペインに敗れたリトアニア、アルゼンチンに敗れたトルコ、米国に敗れたドイツ、そしてフランスである。まず順位決定戦でフランスはドイツと対戦した。

■ドイツとの接戦を制したフランス

 ドイツは昨年の欧州選手権の準優勝チームである。すなわちフランスにとって最後の3秒がなければ、ベオグラードでの決勝で対戦していたはずである。各種スポーツでライバル心を燃やすフランスとドイツであり、その顔合わせが実現したが、順位決定戦で対戦するというのは不本意なことであろう。フランスは前回の本連載で照会したとおり、ギリシャに大差をつけられて順位決定戦に回っているが、ドイツも米国に65-85という20点差で準決勝進出を阻まれている。しかもフランスはギリシャの守備陣の前に攻撃陣が機能せず、ドイツは米国とは前半はわずか1点差、後半に大量失点を喫しており、両チームとも精神的なダメージは小さくなく、準々決勝敗戦の翌日に顔を合わせる。
 しかし、宿命のライバル相手となると両チームの動きは本来のものとなる。第1クォーターの立ち上がりは欧州選手権準優勝チームのドイツが3位のフランスを圧倒、ところがフランスも立ち直り、17-16とリードする。第2クォーターになるとフランスが完全に試合の主導権を握り、38-31とフランスがリードして前半を終える。後半に入って第3クォーターはまずフランスが点差を広げる。ところがドイツが意地の猛攻をかけて、ついに残り3分で50-50と追いついた。さらにドイツは得点を重ね、57-53というスコアで最後のクォーターを迎えることになった。
 第4クォーターは準々決勝で敗れたチーム同士の対戦とは思えない展開となった。フランスがいったんは追いつき、逆転し、ドイツが逆転するという展開が継続され、目を離せない試合となった。終盤フランスは疲労のせいか、フリースローを外すことが多く、ドイツが3点リードで残り1分となる。フランスは残り20秒でジョセフ・ゴミの3ポイントシュートで追いつく。追いつかれたドイツは焦りからファウルを犯す。ところがフランスもせっかくのフリースローを主将ボリス・ディーオが2本ともはずし、悲鳴と歓声が交差する。そしてそのフリースローのリバウンドはドイツが支配したが、ディーオが名誉挽回のスチール、このスチールが残り1.8秒のミカエル・ジェラバルの決勝点につながり、フランスは75-73というスコアでドイツを下し、5位決定戦に進出したのである。

■前半の大量リードを守りきったトルコ戦

 5位決定戦の相手はリトアニアを延長戦の末に下したトルコである。しかし勢いに乗るフランスにとって5位決定戦はすでに手中にあった。第1クォーターからヤニック・ボコロが活躍し、本大会ではスロースターターぶりの目立ったフランスらしからぬ20-7と大量のリードを奪って、第2クォーターへ突入する。第2クォーターではいったんはフランスが20点差をつけるという局面もあったものの、トルコも盛り返す。それでもフランスが15-13と僅差のリードを奪い、前半は35-20とフランスが制する。
 後半に入って第3クォーターこそトルコに23-14とリードを許し、第4クォーターではトルコが猛追し、一時は55-51とリードがわずか4点差になることもあったが、フランスは焦らずに得点を重ね、ファイナルスコア64-56で5位を勝ち取ったのである。

■3つのグループが融合したフランス代表

 フランスは1963年大会以来の5位となり、1961年大会の4位には一歩届かない成績であるが、当時は12チームしか出場していなかったことを考えるとこの成績は讃えるべきであろう。そしてエースのトニー・パーカーが負傷欠場しなければ、さらに上位を狙うこともできたと意見もある。そして多くのNBA選手が欠場する中、フランスはパーカーをはじめとして5人のNBA選手がエントリーした。フランス代表の構成は、NBAの選手、欧州内の他国リーグの選手、国内リーグの選手、それぞれ4人ずつとなり、それらが融合したことに真の価値があるのである。(この項、終わり)

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