第44回 伝統国スコットランドと対戦(1) ワールドカップ出場を逃し、ドイツ人監督就任

 ワールドカップ連覇をめざすフランスは2月13日のルーマニア戦に続いて3月27日にはスコットランドをスタッド・ド・フランスに迎えて親善試合を行う。今回から数回にわたりスコットランド戦について特集したい。

■長期的スケジュールに組み込まれているスコットランド戦

 スコットランドは今回のワールドカップは予選落ちしている。また、フランスが韓国のグループリーグで戦う相手もセネガル、ウルグアイ、デンマークということでスコットランドを特定の相手国に見立てて戦うわけではない。そして、スコットランドには失礼であるが、後述するようにスコットランド代表はチームとして空白期間が長く続き、新監督就任の第1戦ということもあり、チームの完成度は低く、戦術的・組織的に未熟なチーム相手の試合がワールドカップ連覇に向けて有益か、と疑問を呈する声があったことは事実である。
 しかし、この試合は本大会での組み合わせやスコットランドの欧州予選での当落が決定する以前から長期的スケジュールの中で組み込まれていたものであり、国際儀礼上そう簡単に対戦相手を変えられるものではない。(例外的にワールドカップなどの本大会で同一グループになることが決まった場合やプレーオフの日程と重なってしまった場合、対戦相手を変更することがある)その点、日本のようにグループリーグの対戦相手が決まってから親善試合の相手を決める方が戦略的であろう。
 フランスは昨年の9月以来、チリ、アルジェリア、豪州、ルーマニア、そして今回のスコットランドと5試合連続してワールドカップ本大会に出場しない国と対戦することになる。今までの4試合の成績は2勝1分1敗であるが、結果、内容とも満足のいくものではない。4月にはロシア、5月にはベルギー、韓国とワールドカップ出場国と親善試合を行うことから、2月現在の世界ランキングが 51位とやや力の落ちるスコットランドに快勝して弾みをつけたいところである。

■常連国も今回のワールドカップは予選敗退

 さて、スコットランドといえば伝統国である。スコットランドのサッカーはイングランドに次ぐ歴史を誇る。国際試合の歴史もフランスよりも30年以上古く、最初の国際試合を1872年11月30日にイングランドをグラスゴーに迎えて行い、結果は0-0のドローとなっている。これまでの国際試合の数も619試合とフランスの615試合をわずかに上回る。過去ワールドカップ本大会には8回出場、欧州選手権本大会には2回出場しているが、その10回の世界の桧舞台でいずれもグループリーグ敗退という珍しい記録も持っている。今回のワールドカップ予選は欧州のグループ6に入り、クロアチア、ベルギーと三つ巴の争いとなり、最後の最後までもつれた。9月1日のホームでのクロアチア戦でスコアレスドロー、9月5日にブリュッセルに乗り込んだベルギー戦で0-2と敗れ、最終戦となる10月6日のクロアチア-ベルギー戦の結果にわずかな望みを託したが、クロアチアが勝ち、プレーオフ進出も消えてしまった。

■ドイツ人ベルティ・フォクツが新監督に就任

スコットランドは、近年はワールドカップならびに欧州選手権の予選以外の親善試合をほとんど行わず、今回のフランス戦は昨年4月25日に行ったポーランド戦以来の11か月ぶりの親善試合である。また、昨年10月6日に予選最終戦となるラトビア戦を行って以来、半年近く試合をしていない。スコットランド代表の監督については、本連載の第19回で紹介したとおり、8年間代表監督を務めたクレイグ・ブラウンが昨年10月の予選敗退後に辞任して以来、長い空白が続いた。結局、1月下旬に元ドイツ代表監督であり、クウェート代表の監督を務めていたベルティ・フォクツが新監督に就任した。伝統国のスコットランドにとって外国人監督は異例のことであるが、本家のイングランドがスベン・ゴラン・エリクソンというスウェーデン人監督を一足先に受け入れていること、有力なスコットランドの人材がイングランドのクラブチームの監督として囲い込まれてしまっていることを考慮するならば、素直に受け入れるしかないであろう。
 フォクツの代表監督就任の直後にポルトで行われた2006年欧州選手権ポルトガル大会予選の組み合わせ抽選会でスコットランドはドイツ、アイスランド、リトアニア、フェロー諸島と同じグループ5に入った。フォクツは最大のライバルである故国を破り、ポルトガルにタータンチェックを上陸させることを義務付けられたのである。(続く)

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