第625回 欧州選手権予選、秋の陣(3) 首位攻防戦でスコットランドに惜敗
■異例の2部リーグ所属選手の先発
連勝で予選をスタートしたスコットランドとフランスが対戦することになった10月7日、首位攻防戦が行われるハンプデン・パークには5万2000人の観衆が集まった。1903年に建築され、かつては12万人の観衆が集ったこともあるスコットランドを代表する大スタジアムであるが、1999年に改装し、快適性と安全性を求め、5万2500人収容と規模を小さくしている。
6年ぶりにスコットランドで試合を行うフランス代表の先発メンバーはGKにグレゴリー・クーペ、DFにはビリー・サニョル、ジャン・アラン・ブームソン、リリアン・テュラム、エリック・アビダル、MFにクロード・マケレレ、パトリック・ビエイラ、フローラン・マルーダ、フランク・リベリー、FWにティエリー・アンリとダビッド・トレゼゲと言う布陣となった。リヨンから8人のメンバーが選出されたが、先発メンバーに入ったのはクーペ、アビダル、マルーダの3人、それ以外の国内のクラブの選手はマルセイユのリベリーだけ、過半数は国外のクラブの選手である。
なお、この試合でトレゼゲとブームソンはワールドカップ後に初めて試合に出場したが、彼らの所属するユベントスは1部から陥落し今季は2部に甘んじている。もちろんイタリアのサッカー界を揺るがした八百長事件のために2部に降格したわけであるが、フランス代表で2部リーグのクラブから2人が試合に出場することは極めて珍しいケースである。
■守勢に回ったスコットランド
一方のスコットランドはメンバー全員がスコットランド、イングランド、ウェールズのクラブに所属しており、欧州大陸に渡っている選手はいない。地元の大観衆の前でフランス相手に3連勝を狙うのがセオリーであるが、スコットランドは極端に守備に力をいれ、FWジェームズ・マクファーデン1人を残して自陣深く守りを固める。
試合は一方的なペースとなり、フランスが支配した。アンリがFKからポスト直撃をする。17分にはビエイラのシュート、21分にはトレゼゲのオーバーヘッドからのシュートがゴールネットを揺るがしたが、いずれもオフサイドの判定となった。フランスは次々とスコットランドゴールを襲い、フランスが得点を挙げるのは時間の問題と思われたが、なかなか先制点を奪うことができないままに前半を終える。
■デビュー戦で大敗した相手に執念の決勝点
後半に入ってマクファーデンがスコットランドとして、この試合初めてシュートらしいシュートを放つ。このシュートがスコットランドに伝統国であるプライドを思い起こさせた。67分にポール・ハートリーのCKをガリー・コールドウェルが見事にあわせて先制点、スコットランドとしては国内でフランス相手に17年ぶりの得点となったのである。またこのコールドウェルはセルチック・グラスゴーで中村俊輔のチームメイトとして日本でもおなじみであるが、スコットランド代表デビューは5年前のフランス戦であり、その時は0-5と大敗を喫したのであり、今日のゴールは忘れられないものとなったであろう。
この虎の子の1点をスコットランドは守り抜こうとする。そして圧倒的な攻撃力を誇るフランスは何とか同点に追いつこうとする。この攻防はスコットランドの守備力がフランスの攻撃力に勝った。フランスはロスタイムにチャンスをつかみ、アンリがフリーでヘディングでゴールを狙うが、GKの真正面、フランスは新体制になって初めて無得点に終わり、敗れたのである。
■予選で7年ぶりの敗戦となったフランス
フランスがワールドカップと欧州選手権の予選で敗れたのは1999年3月の欧州選手権ベルギー・オランダ大会予選のロシア戦以来、7年ぶりのことである。さらに遡るならばその前の敗戦は1993年11月のワールドカップ米国大会予選のブルガリア戦以来のことであり、久しぶりのフランスの予選での敗戦となったのである。
そしてもう1つの注目カードはイタリアがホームでウクライナを2-0と下し、ようやく本領発揮、スコットランド、フランス、ウクライナ、イタリアでの争いは激しくなってきたのである。(続く)