第627回 欧州選手権予選、秋の陣(5) フェロー諸島に大勝、首位に並ぶ
■歴史的な試合となったスコットランド戦
伏兵スコットランドにアウエーでフランスは敗れたが、いろいろな意味で歴史的な試合であった。前々回の本連載で紹介したとおり、フランスがワールドカップまたは欧州選手権の予選で敗れたのは1999年3月の欧州選手権予選のロシア戦以来のことである。さらにさかのぼるならばその前の敗戦は1993年11月のワールドカップ予選のブルガリア戦、そして同じ年の10月のイスラエル戦となっている。ところがこの3試合はいずれもフランス国内、さらにはスタッド・ド・フランスもしくはパルク・デ・プランスという首都圏の本拠地で行われたものである。実はアウエーゲームでの敗戦は1992年9月のソフィアでのブルガリア戦以来、実に14年ぶりのことである。
またこの試合、ダビッド・トレゼゲとジャン・アラン・ブームソンがイタリアの2部リーグであるセリエBのユベントスの選手として出場したが、フランス代表の試合に2部リーグの選手が出場したのは20年ぶりのこととなる。前回の本連載で紹介したベルナール・ジャンニーニが出場した最後の公式戦が1986年のワールドカップ・メキシコ大会3位決定戦のベルギー戦である。この試合にジャンニーニとともに出場したマキシム・ボッシはRCパリに所属していたが、当時RCパリは2部に甘んじていた。今回のユベントスの降格の理由は成績によるものではないが、2部リーグの選手の代表戦出場はきわめて異例のことと言えよう。
■ジュリアン・エスクーデ、ジェレミー・トゥーラランが代表デビュー
フランスに新たな試練が待っていた。それはワールドカップ以降の新チームにおける正GKを務めていたグレゴリー・クーペが負傷のためフェロー諸島戦のメンバーから外れることになった。代役のGKはミカエル・ランドローが務めることになるが、クーペの離脱に伴い、フィオレンチーナのGKセバスチャン・フレイが代表に初めて招集された。
レイモン・ドメネク監督はスコットランド戦の敗戦に動揺することなく、絶好のチャンスとばかり、若手選手をテストする。フランシュ・コンテ地方で初めての代表の試合であり、観客のプレッシャーも少ないソショーでのホームゲームという条件も重なった。
ドメネク監督は先発メンバーにジュリアン・エスクーデ、ジェレミー・トゥーラランという代表での試合に出場したことのない2人者の名前を書き込んだ。27歳のエスクーデは昨年3月のワールドカップ予選の際にメンバーに招集されたが、ベンチ入りメンバーからも外れ、7日のスコットランド戦はベンチ入りし、後半30分くらいからウォーミングアップをしたものの、名前を呼ばれることはなかった。そしてついに3度目のチャンスで左サイドバックとして代表にデビューしたのである。
■応援に駆けつけたファンを乗せた飛行機が事故
フェロー諸島は世界ランキング179位、今回の予選でもこれまで3戦3敗で1点もあげることができない。そして、これまでに代表79試合に出場し、主将を務めている守備の要であるオリ・ヨハンセンが負傷のため出場できない。このような状態でフェロー諸島はフランス戦を迎えることになったが、熱心なファンはいるもので、飛行機でソショーに駆けつけたファンもいた。しかしその飛行機が墜落し、4人が死亡、12人が重傷となった。この事故の犠牲者を悼み、黙祷が行われ、フェロー諸島のイレブンは喪章をつけて試合に臨んだ。
■ルイ・サアの電撃ゴールから始まったゴールラッシュ
試合は衝撃的なゴールから始まった。開始わずか36秒にビリー・サニョルからのセンタリングをルイ・サアがヘッドで合わせて先制点を挙げる。フランス代表史上最速のゴールかと思われたが、上には上があるもので1991年3月30日のアルバニア戦でフランク・ソーゼーが記録した試合開始後34秒が史上最速ゴールである。
このゴールでフランスは勢いに乗る。22分にはティエリー・アンリが追加点を奪う。61分には得点を挙げたサアとアンリをベンチに下げ、ニコラ・アネルカとダビッド・トレゼゲを投入する。この交代が大正解となり、76分にアネルカ、77分と84分にトレゼゲがゴールネットを揺らし、フランスは5-0と大勝した。
同日に行われた試合でスコットランドはアウエーでウクライナに敗れ、イタリアはグルジアにアウエーで勝利している。この結果、3勝1敗のスコットランドとフランスが首位で並び、2勝1分1敗のイタリア、2勝1敗のウクライナが追う展開となっている。(この項、終わり)