第639回 本年最終戦ギリシャ戦(3) 王者決戦でギリシャに雪辱、若手選手のテストも成功
■ベテラン中心となったフランスの先発メンバー
ゴンサロ・イグアインの代表辞退、カリム・ベンゼマの負傷とファンにとっては楽しみなコンビがメンバーから外れてしまったフランス代表、さらに負傷者が続出してしまった。
攻撃陣に負傷者が相次ぎ、今年最後の試合のFW陣はルイ・サアとティエリー・アンリがコンビを組むことになった。注目のニコラ・アネルカはこの試合もベンチでラ・マルセイエーズを歌うことになった。イグアイン同様アルゼンチン人の親を持つダビッド・トレゼゲは今回はメンバーには入っていなかった。攻撃的な両サイドのMFは左にフローラン・マルーダ、右にはシルバン・ビルトールとなっている。所属チームのリヨンでベンゼマの控えに甘んじているビルトールが代表チームで先発になっていることからリヨンの戦力の充実ぶりとベンゼマの評価がよくわかるであろう。守備的なMFは2人、この試合が代表100試合目となる主将のパトリック・ビエイラとベテランのクロード・マケレレである。守備陣は中央にリリアン・テュラムとウィリアム・ギャラス、右にはビリー・サニョル、左サイドはエリック・アビダルとなっている。左サイドはマンチェスター・ユナイテッドでの活躍が評価されて2年ぶりに代表に選出されたパトリス・エブラの出場も期待されたが、ベンチスタートとなる。そしてGKはグレゴリー・クーペである。先発の11人のうち4人がリヨンの選手、さらにベンチの9人のうち4人がリヨンの選手である。
■両チーム6人ずつが2年前のリスボンでの試合に出場
一方のギリシャは2年前の欧州選手権の優勝チームである。準々決勝でフランスを破ったが、この試合に出場していた選手のうち今回も出場しているのは主将のGKアントニオス・ニコポリディスら6人である。一方のフランスもやはり6人が2年前のリスボンでの試合に出場している。両チームとも30歳以上の選手が目立ち、平均年齢の高い親善試合となった。
■注目の王者対決にラグビーのニュージーランド代表も観戦
さて、この試合は1998年のワールドカップと2000年欧州選手権の優勝チームであるフランスが2004年の欧州選手権優勝チームのギリシャを迎えるとあってさまざまなイベントが催された。空席の目立つ観客席の中には大男達の姿があった。4日前、リヨンでフランス代表を完膚なきまでに叩きのめし、3日後にはこのスタッド・ド・フランスでフランスと第2テストを行うラグビーのニュージーランド代表のメンバーである。
フランス代表はワールドカップ予選のプレーオフを免れたため、このところ11月にはスタッド・ド・フランスに欧州のチームを招いて親善試合を行っている。ところが一昨年のポーランド戦、昨年のドイツ戦とスコアレスドローが続いている。この試合ではなんとしてもその悪い流れを断ち切りたいところである。
■アンリ代表39得点目の決勝点
試合はフランスが終始主導権を握る。25分には右サイドからのサニョルのセンタリングが起点となり、アンリがヘッドで先制点を決める。代表91試合目にして39回目のゴールである。フランス代表の最多得点記録はミッシェル・プラティニの41得点であり、いよいよ記録更新が見えてきた。アンリがまだ27歳であることを考えれば、これからどれだけ記録を伸ばすのかも楽しみである。
そして後半になってレイモン・ドメネク監督はいよいよテストを開始し、4人を入れ替える。守備陣では右サイドに代表2試合目となるフランソワ・クレルク、左サイドには2年ぶり5試合目の出場となるエブラを投入する。そして3バックシステムに変更する。実に2年ぶりの実験である。そしてマケレレに代えてアルー・ディアラを投入、ディアラが守備的MFとしてビエイラとコンビを組むのは初めてのことである。年齢的な問題を抱えるマケレレの後継者として25歳のディアラを起用するのは将来を見越してのことであろう。さらにサアに代わったアネルカも出場間もなくゴールを狙う。後半は過半数の6人がリヨンの選手となった。結局追加点を奪うことはできなかったが、2年前のリスボンでの戦いに雪辱し、若手選手のテストも上々であった。
フランス代表はこれで長い冬を迎える。長い冬からのトンネルを抜けると来年2月7日、親善試合でスタッド・ド・フランスに姿を現す。相手は奇しくもアルゼンチン、その試合でイグアインは何色のユニフォームを着ているのであろうか。(この項、終わり)