第649回 チャンピオンズリーグ最終節(1) 全ての可能性のあるリールはACミランと対戦
■フランス勢で唯一順位が確定していないリール
チャンピオンズリーグのグループリーグは12月5日ならびに6日に最終節を迎える。これまでの本連載で紹介してきたとおり、リヨンはグループリーグ首位突破を確定し、ボルドーは3位が決定し、UEFAカップに転戦することとなる。フランスから出場しているもう1つのチームのリールは第640回の本連載で紹介したとおり、足踏み状態が続き、11月21日に行われた第5節でホームにベルギーのアンデルレヒトを迎える。この戦いで勝って決勝トーナメント進出を決めておきたかったリールであるが、痛恨の引き分けに終わり、3位に落ちてしまう。
■3つの可能性:決勝トーナメント進出、UEFAカップ転戦、欧州カップ敗退
フランス勢3チームのうち、最終節を迎える段階で順位が決まっていないのはこのリールだけであり、12月6日の最終節はフランスのファンがこのリールの戦いぶりに注目することになった。ここでグループHの成績を確認しておこう。まず首位はACミラン、勝ち点10ですでに首位を確定している。2位は勝ち点7のAEKアテネ(ギリシャ)、3位は勝ち点6のリール、4位は勝ち点3のアンデルレヒトである。
2位以下のチームでチャンピオンズリーグの決勝トーナメントの可能性があるのはAEKアテネとリールである。現在の勝ち点の差が1であることから、リールが勝った場合、AEKアテネが負けまたは引き分ければ、リールが勝ち点で上回り2位になる。リールが引き分け、AEKアテネが負けた場合は、両チームが勝ち点で並ぶが、この場合、両チームの直接対決の結果で成績が決まり、1勝1敗ながらホームで3-1、アウエーで0-1と合計スコアで勝るリールが2位となる。
逆にリールが敗れ、最下位のアンデルレヒトが勝利すると、両チームは勝ち点で並ぶが、直接対決の結果はリールのホームで2-2、アンデルレヒトのホームで1-1、得失点差は同じであるがアウエーゴール2倍ルールでアンデルレヒトが3位となり、リールは最下位に終わってしまう。このようにリールは2位から4位まで、すなわちチャンピオンズリーグ決勝トーナメント進出、UEFAカップ転戦、欧州カップ終戦と言う全ての可能性がある。最終節を迎える段階でこのように全ての可能性があるチームはグループHではリールであり、その他のグループを見渡してみてもそれ以外にはグループDのシャフタル・ドネツク(ウクライナ)だけである。
■すでに首位を確定しているACミランと対戦
このように最終戦がリールにとっては大きな意味を持つことになったが、リールの相手はACミラン、しかもアウエーゲームである。グループHの中では実力ナンバーワンのチームである。しかし、リールにとって可能性がないわけではない。まず、第5節でリールがアンデルレヒトと引き分けてしまったために、ACミランは最終節を待たずして決勝トーナメント進出しかも首位通過を決めている。リールが勝利していれば、1位から3位までの間が混沌としていたはずであったが、リールが引き分けてしまったためにACミランの独走と言う形になった。首位をすでに決めたチームの心の隙をつきたいものである。国内のリーグ戦やカップ戦との兼ね合いから全力で立ち向かうことはないであろう。
■イタリア勢とはアウエーで2戦2勝のリール
そしてリールの欧州カップでのイタリア勢に対する相性である。2001-02のパルマ(イタリア)はリーグ優勝を果たしたASローマから中田英寿を獲得し、リーグ優勝の最大の功労者の新加入で予備戦から参加とはいえ、優勝候補の一角であった。そのパルマの予備戦3回戦の相手がこのリールであった。リールは世界的大スターに臆すことなく戦い、第1戦はパルマで2-0と勝利し、ホームの第2戦は余裕の戦いで0-1と落とすが、通算成績で本戦出場を果たす。逆にパルマでの最初の公式戦でフランスの無名チームに敗れた中田はこのパルマでは本来の力を見せることができなかった。中田は結局チャンピオンズリーグの本戦には出場することなく、現役生活を終えてしまった。リールはそのシーズンにフィオレンチーナともUEFAカップで対戦するが、ホームでもアウエーでも勝利している。すなわち、リールはイタリア勢と2回対戦し、イタリアの地では2回とも勝利しているのである。
3つの可能性のあるリールは、12月6日のミラノのサンシーロ競技場での戦いに全力を尽くすのである。(続く)