第657回 今季も圧倒的な強さで折り返したリヨン

■国内リーグで余裕がないと獲得困難な欧州カップ

 昨年12月中旬以降の本連載ではチャンピオンズリーグならびにUEFAカップのグループリーグにおけるフランス勢の戦いぶりならびに決勝トーナメントの組み合わせについて紹介してきたが、その中で最も期待がかかるのがチャンピオンズリーグに出場しているリヨンである。欧州カップで好成績を残す条件として、国内のタイトル争いが熾烈であると精力を欧州カップに注ぐことができなくなる。欧州カップの上位を争うようなチームは欧州のビッグクラブであり、そのチームが所属しているのはビッグリーグである。したがって戦力的に充実していても国内で余裕のある戦いをいていなくては欧州のタイトルを獲得することは難しい。事実、昨季のチャンピオンズリーグを制したスペインのバルセロナはレベルの高いリーグでありながら、国内リーグでも独走、最終的に2位の宿敵レアル・マドリッドに勝ち点12という大差をつけている。

■圧倒的な数字でリーグ戦を折り返したリヨン

 そういう点では今年のリヨンは期待できる。欧州カップは年が変わるとグループリーグから決勝トーナメントに変わるが、フランスの国内サッカーは年の変わりは2つの意味がある。まず、フランスリーグについては年の変わり目が丁度前半戦と後半戦の間となる。すなわち全チームとホームもしくはアウエーで一通りの対戦が終わる。またフランスカップに関しては年が明けたところから1部リーグのチームが参戦する。
 フランスリーグは前半を終了した段階でリヨンが独走している。19試合で16勝2分1敗、勝ち点50、総得点39、総失点11、得失点差+28という成績である。この数字がいかに突出した数字であるかは2位のランスと比較して見ればわかる。ランスは10勝5分4敗、勝ち点35、総得点28、総失点20、得失点差+8である。2位との勝ち点の差が15というのは昨季の最終成績の2位ボルドーとの勝ち点差と同じである。前半戦を終了した段階で2位との勝ち点が15ということは、数字の上では10試合を残して優勝決定ということも考えられる。得失点差がプラス二桁というチームも他には存在しない。

■他国、前年と比較しても傑出した成績のリヨン

 リヨンの独走ぶりを他国の折り返し時点と比較してみよう。イングランドはマンチェスター・ユナイテッドが首位であり、2位のチェルシーとは勝ち点で2差、ドイツはブレーメンがシャルケ04と同勝ち点で並んでいる。イタリアとスペインはまだ折り返し点を迎えていないが、リヨンほどのチームは見当たらない。
 リヨンの前半戦の成績を昨季の前半戦と比較して見よう。昨年の前半戦は13勝5分1敗、勝ち点44、総得点30、総失点13、得失点差+17という成績であり、負け数が同じだけでそれ以外の数字は上回っている。昨季の前半戦もリヨンは独走していることを本連載第509回と第510回で紹介したが、この時点での2位チーム、ボルドーとの勝ち点差は14であり、新記録を更新したが、今年は勝ち点差が15であり、それをまた更新したことになる。
 しかし、昨季も後半戦はさすがのリヨンもフランスカップ、チャンピオンズリーグなどに精力を使うことになり、ややペースダウンせざるを得なかった。昨季の後半戦は同じ19試合で12勝4分3敗、勝ち点40、総得点43、総失点18、得失点差+25という成績であった。前半戦に比べていささか精彩を欠くとはいえ、後半戦だけをとってもリーグトップの成績であった。

■旬の選手がそろい、日本の野球の聖地の甲子園にも出現

 これだけの成績を残すことができるのは豊富な選手がそろっているからである。昨年末にレキップ紙が2006年のフランスリーグのベストイレブンを発表したが、11人中9人がリヨンの選手であった。リヨン以外からの選出はマルセイユのフランク・リベリーとパリサンジェルマンのパウレタだけである。リヨンから選出された9人も全員代表歴があるが、そのうち7人は昨年代表チームの試合に出場している。本連載でも紹介しているとおり、リヨンは控えメンバーを含めてもほとんどが昨年のワールドカップに出場した現役の代表選手である。ブラジル人選手3人は全員が昨年のワールドカップのメンバーである。ビッグネームをそろえているチームは数多いが、現役の代表選手をこれだけそろえたチームは欧州を見渡しても数少ない。すなわち旬の選手を集めているという点では欧州のどのクラブにも負けていないのである。
 リヨンの影響力は欧州だけにはとどまらない。日本の読者の皆様からのレポートによると、日本の野球の聖地とも言える甲子園であるが、ホテルの玄関を入るとメインダイニングの前にはリヨンのユニフォームが展示されているという。リヨンは欧州の頂点ではなく世界の頂点を狙っているのであろうか。(この項、終わり)

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