第659回 新春の風物詩・フランスカップ(2) フランスカップのスペシャリストたち
■2年連続でベスト16に進出したカレー
1月5日の金曜日、1部のニースが2部のクレテイユを振り切って勝利して今年のフランスカップが始まった。
1部20チームの中で1部勢同士の対戦となったのは2カード、ナンシー-ランス戦とサンテエチエンヌ-ソショー戦である。すなわち残り16チームは下位リーグのチームの挑戦をアウエーで受けるわけである。そしてファンはジャイアントキリングを期待するのである。
1部リーグのチームが下位チームに敗れるのは2つのケースがある。まず1つは相手が下位チームと言ってもフランスカップになると無類の強さを発揮するいわゆる「フランスカップのスペシャリスト」と対戦した場合である。
フランスカップのスペシャリストというと今年もカレーが勝ち進んできた。カレーは4部リーグに相当するCFA(フランスアマチュア選手権)に所属しているが、フランスカップでの成績は2000年に準優勝、一昨年はベスト32に進出、昨年は1部のトロワを下してベスト16へ進出している。そのカレーは今年も2部リーグのチームが参戦してきた7回戦で2部のルアーブルと対戦し、2-1と下す。そして8回戦では下位のリーグのクラブと対戦し、難なく勝利。そして1部勢が参戦するベスト32決定戦に駒を進めた。
ベスト32決定戦でカレーは1部のロリアンと対戦した。昨年のトロワ戦同様、カレーは本来の本拠地を離れ、ブローニュ・シュール・メールのリベラシオン競技場でホームゲームを行う。カレーにはプロ経験のある選手も少なくない。そのうちの1人がジェゾン・ブトワルである。カレー出身のブトワルは18歳でリールとプロ契約、10年以上リールに在籍し、欧州カップの出場経験がある。31歳になり一線を退き、カレーに今季移籍し、サッカー選手として最後のキャリアを生まれ故郷で過ごしている。そのブトワルが大仕事をやってのけた。ロリアン相手に2点を奪う活躍でまさに故郷に錦を飾ったのである。カレーは今年も1部リーグのチームを破りベスト16に入ったのである。
■2年連続で下位チームに敗れたトロワ
ロリアン同様にフランスカップのスペシャリストにしてやられたのがトロワである。トロワは2部のリブルン・サンスーランと対戦した。リブルン・サンスーランは2003年にはすでにフランスリーグ連覇中のリヨンをベスト32決定戦で破り、2002年にも1部リーグのリールとメッスと下し準々決勝に進出している。トロワも十分にわかっており、7分に先制点を奪うが、10分に追いつかれる。15分にトロワは勝ち越して後半を迎えるが、前半終盤に退場選手を出してしまう。10人で戦わなくてはならなくなった後半に一気に3点を奪われて2-4と敗れてしまったのである。トロワは昨年もカレーとベスト32決定戦で対戦し敗れており、2年連続の不運なドローであった。
■スペシャリスト対決となったパリサンジェルマン-ニーム戦
その他に今年のベスト32決定戦にはフランスカップのスペシャリストというべき難敵が進出していた。ナショナルリーグに所属するニームである。かつては1部にいたニームもこの10年間は下位リーグでの戦いである。しかし、ニームはフランスカップでは上位進出の常連である。1996年には決勝に進出しているが、過去10年間で4回も準決勝に進出している。そのニームと対戦するのがパリサンジェルマンである。こちらもリーグ戦では下位に低迷、しかしフランスカップでは強く、昨年の優勝チームであり、過去10年間に3階の優勝を果たしている。このスペシャリスト同士の戦いに注目が集まった。
■新戦力マルセロ・ガジャルド颯爽とデビュー
この試合は例外的にパリサンジェルマンの本拠地パルク・デ・プランスで行われたが、昨秋のサポータ死傷事件の影響もあり、空席の目立つ試合となった。この試合の見所はジャイアントキリング、カップ戦のスペシャリスト同士の戦いだけではなく、パリサンジェルマンの新戦力マルセロ・ガジャルドのデビュー戦であった。かつてモナコにも所属したガジャルドを年末年始休暇の間に母国アルゼンチンのリバープレートから獲得し、いきなりのデビュー戦であった。
試合はそのガジャルドの活躍もあり、パリサンジェルマンが3-0と完勝する。ガジャルドはUEFAカップの出場資格も有しており、パリサンジェルマンにとって残されたタイトルであるフランスカップ、UEFAカップの獲得に貢献しそうである。(続く)