第660回 新春の風物詩・フランスカップ(3) 取りこぼしで姿を消したオセール、レンヌ
■フランスカップのスペシャリスト・オセール
前回の本連載ではフランスカップのスペシャリストとも言えるチームを紹介した。1部リーグのチームが下位のリーグのチームに敗れる2つのケースのうち1つがこのフランスカップのスペシャリストと対戦した場合である。そしてもう1つのケースは上位チームのいわゆる取りこぼしである。
今年のベスト32決定戦でも前回紹介したロリアン、トロワ以外に1部リーグのチームで下部リーグのクラブに敗れているチームが2チームある。それがレンヌとオセールである。
オセールは2部のニオールと対戦した。オセールは一昨年の優勝チームであり、1994年の初優勝以来12年間で3回優勝を果たすという成績を残しており、1部リーグのチームではパリサンジェルマンと並ぶフランスカップのスペシャリストである。オセールはリーグ戦を終わって13位、一方のニオールは前半を終了して2部で下から2番目の19位である。また、この試合、相手チームのホームスタジアムのサイズなどの理由で例外的にオセールのホームスタジアムであるアベ・デシャンで試合が行われた。
■PK戦で競り負けたオセール
オセールは前半終盤にデンマーク代表のトーマス・カーレンベルクが先制点をあげるが、後半に入りニオールが追いつき、オセールのGKのオウンゴールで逆転を許す。オセールは87分にブノワ・ペドレッティの得点で追いつき、延長に持ち込む。しかしながら、延長では双方得点なく、PK戦で決着をつけることになった。ニオールは5人全員が成功、オセールは5人目が失敗し、オセールはまさかのPK負けとなったのである。
オセールはUEFAカップに出場したフランス勢の中で唯一グループリーグで敗退しており、その敗戦のショックが尾を引いていたのかもしれない。
■ベテランの控えGKの起用が裏目に出たレンヌ
そしてレンヌも3部リーグに相当するナショナルリーグのロモランタンと対戦した。レンヌも例外的にホームでベスト32決定戦を戦った。試合はまずロモランタンが先行し、レンヌが追いつき、延長戦に入るが、延長戦でロモランタンが2点をあげて勝利する。レンヌの敗因は明白であり、油断である。ホームで戦うことを楽観視し、今季これまで一度も試合に出場したことのないクリストフ・ルボーをGKに起用する。ルボーと言えばかつてルアーブル、パリサンジェルマンなどで活躍した選手であるが、すでに34歳。今季トゥールーズから移籍してきたが、リーグ戦では21歳のシモン・プープランが全試合にフル出場しており、ルボーにこれまで出番はなかった。ルボーのテストとしては格好の状況であったが、そのルボーがミスをしてレンヌは敗退してしまい高い授業料となったのである。
■1部勢対決で敗れたナンシーとサンテエチエンヌ
また、1部リーグのチームでこの段階で姿を消したのはジャイアントキリングに遭遇したチームだけではなく、運悪く1部リーグ同士の対戦となったチームがある。ともにUEFAカップの決勝トーナメントに進出したナンシーとランスがナンシーで対戦した。ナンシーが3-2とリードして逃げ切るかと思われた後半ロスタイムにランスが追いつく。延長戦では両チーム得点なく、PK戦となるが、ことごとく成功し、ランスが9人連続成功させたのに対し、ナンシーは9番目に蹴ったUEFAカップのヒーロー・パスカル・ベランゲが失敗し、熱戦に終止符を打った。この試合、ゴールラッシュだけではなく、カードも多数出され、イエローカード9枚、レッドカード1枚という大荒れの試合となった。
もう1試合の1部対決となったサンテエチエンヌ-ソショー戦もアウエーチームが勝利している。ソショーが前半に2点奪い、終了間際にサンテエチエンヌが反撃して1点差に迫ったが、ロスタイムにソショーはダメ押しの3点目をあげている。
このように1部リーグの6チームが姿を消したが、興味深いことにこのうち4チームが本拠地で姿を消している。ベスト32決定戦の試合を本拠地で行った1部リーグのチームは8チームであり、そのうちの半数が敗退したのである。(この項、終わり)