第683回 4強が決定したフランスカップ(2) マルセイユ、四冠狙うリヨンに劇的逆転勝利

■フランスカップではマルセイユ、リーグ戦ではリヨンが優勢

 フランスカップのベスト8決定戦の中で一番の注目カードとなったのがマルセイユで行われるマルセイユ-リヨン戦である。昨年のフランスカップの準々決勝でも両チームはリヨンで対戦し、マルセイユが2-1と勝利している。前回の本連載でリヨンがフランスカップを苦手としていること、1月になってから調子を落としていることを紹介したが、これまでのフランスカップでの両チームの対戦成績を見てもマルセイユに分がある。長いフランスカップの歴史で両者は7回対戦し、マルセイユの4勝1分2敗という成績である。リヨンがマルセイユに最後に勝利したのは優勝した1972-73シーズンの準々決勝のホームでの第2戦(当時は決勝以外はホームアンドアウエー方式で開催されていた)のことであり、それ以来勝利していない。
 ところが逆にリーグ戦ではマルセイユは地元ベロドロームではリヨンとは相性が悪く、昨年10月22日の対戦では1-4と大敗している。そればかりか最後にホームゲームで勝利したのは1997年9月のことであり、10年近く勝利していない。ベロドロームは地元開催のワールドカップのために改装されており、改装後のベロドロームでマルセイユはリヨンに勝利したことがないのである。

■15年ぶりのタイトルを狙うマルセイユ

 そしてマルセイユに関してはリーグ戦折り返し後の成績は2勝1敗であり、リヨンと対戦する段階でリーグ戦の順位は4位である。マルセイユは本連載でも何度も紹介している通り、1993年に起こった八百長事件でタイトルを剥奪されて以来、国内外でのタイトルを獲得しておらず、今季タイトルを獲得すれば実に15年ぶりのタイトルとなる。また、マルセイユのエース、フランク・リベリーは昨年のワールドカップで躍進したが、リヨンが獲得に乗り出した。リベリー自身は関心を示したが、マルセイユは引止めに成功、このカードは遺恨試合となった。

■ブラジルトリオの活躍でリヨンが先制点

 久々のタイトルを狙うマルセイユが調子を落としているリヨンを迎えるとあって、すでに建設されて10年近くになる新装ベロドロームでのリヨン戦初勝利を見ようと5万8000人の満員のファンが集まった。しかし、試合はリヨンが昨年までの姿を取り戻したかのような展開となった。ほとんど全員を現役の代表メンバーで固めたリヨンが優勢に試合を進め、18分に好位置でFKを得る。キッカーはブラジル代表のジュニーニョ、ゴール前には同じくブラジル代表のFWのフレッドが待つ。ジュニーニョの蹴った球はニアポストのフレッドを越えてファーポストへと流れる。ここで待ち受けていたのはブラジル代表のDFで長身のクリス、クリスが見事にヘッドでゴールを決める。

■残り3分で同点、ロスタイムで逆転したマルセイユ

 その後は両チーム好機はあるものの、得点にはいたらず、リヨンが逃げ切って昨年の準々決勝の雪辱を果たすのではないかと思われた。そして残り3分となった87分、リベリーが右サイドからクロスを入れる。このクロスに対してミカエル・パジスがボレーであわせる。リヨンのGKグレゴリー・クーペも反応するが、届かず、試合は振り出しに戻ったのである。試合はロスタイムに入り、勢いづいたマルセイユが攻撃を続ける。ここでも起点は右サイドに転じたリベリーだった。リベリーからハビブ・ベイエにつなぎ、ママドゥ・ニアンがヘッドで決めて逆転する。わずか5分間の間の逆転劇であり、マルセイユはリヨンを倒したのである。また、得点を決めたパジスもニアンも途中出場選手であり、今季から就任したアルベール・エモン監督の采配は見事的中した。
 試合終了のホイッスルが鳴らされた瞬間、フランスサッカー界初の三冠は崩れ、欧州サッカー界で40年ぶりの四冠もまた消えたのである。極度の成績不振に陥ったリヨンは1月の成績は3勝1分3敗、1部リーグ勢との対戦に限れば1勝1分3敗となったのである。(続く)

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