第686回 UEFAカップ決勝トーナメント1回戦(1) 1回戦で惜敗したナンシーとボルドー
■チャンピオンズリーグよりも早く始まったUEFAカップ決勝トーナメント
年が明けると欧州カップは決勝トーナメントになる。32チームで争われるUEFAカップの方が16チームで覇権を争うチャンピオンズリーグよりも一足早く始まり、2月14日と15日に1回戦の第1戦が行われた。
本連載第656回でも紹介している通り、フランス勢はパリサンジェルマン、ボルドー、ナンシー、ランスの4チームが出場するが、14日にはナンシー、パリサンジェルマン、ボルドーの3チームが登場、このうちUEFAカップのグループリーグで2位までに入ったチームは第2戦をホームで戦うアドバンテージが与えられたため、アウエーでの第1戦となる。
■国内外のデビュー戦でゴールを決めたマルク・アントワン・フォルチュネ
ナンシーはウクライナのシャフタール・ドネツクとアウエーでの対戦となる。秋までは常にリーグ上位に位置していたナンシーであるが、12月になってから調子を落とし、リーグ戦では中位に落ちてしまっている。リーグカップ、フランスカップからも脱落し、このUEFAカップにかける思いは強い。そのナンシーはウクライナの地で理想的な試合運びをする。その中心になったのが1月にオランダのユトレヒトから移籍してきたばかりのマルク・アントワン・フォルチュネである。ギアナ出身でフランス国籍のフォルチュネはリーグデビュー戦のトゥールーズ戦でゴールを決め、成功例の少ない冬の移籍の中で見事に活躍しているケースである。そのフォルチュネはこのシャフタール・ドネツク戦が自身にとって初めての国際試合となった。両チーム無得点が続き、試合も終盤になった80分にフォルチュネが早いリスタートからゴールを上げる。国内外のデビュー戦でゴールを上げたのである。シャフタール・ドネツクも直後に追いつき、試合はドローとなるが、主力選手が退場処分となるなど、厳しいナンシーでの戦いとなったのである。
■ホームの第2戦で優位を守れなかったナンシー
ナンシーはこのウクライナでの価値あるスコアレスドローで復調したかに思えたが、第1戦と第2戦の間の17日に行われたリーグ戦のパリサンジェルマン戦はホームで元気なく0-3と大敗する。そして22日に舞台をナンシーに移して行われた第2戦は第1戦とは逆の展開となった。アウエーのシャフタール・ドネツクが試合を支配する。アウエーで得点を取っているナンシーはスコアレスドローであるならばアウエーゴール2倍ルールで勝ち抜くことができたが、試合終盤の70分に痛恨の失点を許してしまう。結局ナンシーは第2戦をホームで戦う有利性を活かすことができず、久しぶりの欧州での戦いを終えたのである。
■315分間無得点のボルドー、隣国スペインのオサスナに敗れる
そしてチャンピオンズリーグのグループリーグで3位になり転戦してきたボルドーはスペインのオサスナとのボルドーでの対戦である。1000人を越えるオサスナのファンが国境を越えてボルドーのシャバン・デルマスにやってきた。3日前にはスペインリーグのヒムナスティック戦でタラゴナに遠征し、3-2で勝利している。一方のボルドーは3日前にマルセイユを迎え、1-0と勝利している。ボルドーはそのマルセイユ戦の反動と疲労のためか動きが鈍い。オサスナは中2日でアウエーゲームを連戦することになったがオサスナの本拠地のパンプローナからは、国内の地中海岸のタラゴナよりも国境を越えても同じ大西洋岸のボルドーのほうが近い。選手の応援団も元気一杯である。試合はオサスナが疲労のたまっているボルドーを圧倒した。しかし、ボルドーもよく守り、両チーム無得点で第1戦を終えたのである。
ホームでスコアレスドローと言う不本意な結果となったボルドーは、直後のリーグ戦でもトロワで0-1と無得点で敗れる。その翌週にオサスナの本拠地パンプローナに乗り込む。アーネスト・ヘミングウェイの小説「日はまた昇る」の舞台であり、山口の姉妹都市として日本でも有名なパンプローナであるが、現在この町を代表するスターは今季から加わったイラン人のジャバド・ネクナムである。試合は第1戦同様無得点が続き、延長後半に入っても無得点、PK戦まであと数十秒となったとき、イラン人が決勝点を挙げた。昨年リーグ2位だったボルドーは国内外合わせて315分間ノーゴール、欧州の舞台から去ったのである。(続く)