第692回 UEFAカップ決勝トーナメント2回戦(1) ランス、アウエーの第2戦で完敗する
■チャンピオンズリーグの敗退後で期待されたランスとパリサンジェルマン
チャンピオンズリーグの決勝トーナメントに進出したリヨンとリールがいずれも敗れてしまったことを前回までの本連載で紹介したが、もう1つの欧州のタイトルがUEFAカップである。決勝トーナメント1回戦の模様は第686回と第687回の本連載で紹介したが、ランスとパリサンジェルマンがベスト8決定戦に相当する2回戦を戦う。
UEFAカップの日程は第1戦が3月8日、第2戦が3月15日であり、ちょうどリヨンとリールが姿を消してしまった直後に第1戦が行われるため、フランスのファンの期待も通常以上に高まった。
ランスもパリサンジェルマンも第1戦をホームで戦う。まず19時にランスがドイツのレバークーゼンと戦い、20時45分からパリサンジェルマン-ベンフィカ(ポルトガル)戦がキックオフされる。
■ランスとレバークーゼンの共通点
ランスとレバークーゼンにいくつかの共通点がある。まず、両チームのタイトル獲得数の少なさである。ランスは1997-98シーズンにフランスリーグを44年ぶりに制覇し、リーグカップも2回制覇しているが、タイトル獲得はそれだけである。またレバークーゼンも2001-02年のチャンピオンズリーグ決勝戦での惜敗も記憶に新しいが、国内リーグでの優勝経験はなく、ドイツカップとUEFAカップをそれぞれ1回ずつ獲得しただけである。次に今季の両チームのリーグ戦の成績である。ランスは2位であり、首位のリヨンと大きく差はあるものの、来季のチャンピオンズリーグの出場権を獲得できるポジションにある。一方のレバークーゼンは6位に浮上し、来季のUEFAカップ出場が射程範囲になっている。したがって、今季のUEFAカップでの上位進出も重要だが、来季の欧州カップ出場のための国内リーグ戦も重視せざるを得ない。したがって、必ずしも100%の状態でUEFAカップを戦う体制にあるわけとは限らない。
■ホームでの勝利も追加点が奪えなかったランス
1月はもたついたが、ランスの2月以降のリーグ戦の戦績は3勝2分とまずまずの成績であり、リーグ戦では2位をキープしている。ランスの本拠地フェリックス・ボラールはこの夜も赤と黄色のファンで埋まる。レバークーゼンを迎えた試合でもその好調さを維持する。その中心となったのが左サイドのオリビエ・モンテルビオである。17分にはビトリーノ・ヒルトンのロングパスを受けて先制点をあげる。後半に入ってチュニジア代表のカリム・ハグイのゴールで追いつかれるが、71分にモンテルビオが敵陣のペナルティ・エリアに持ち込んだところをそのハグイに倒されPKを獲得する。このPKをダニエル・クーザンが決めて勝ち越す。さらにモンテルビオを倒したハグイは2回目の警告を受け、退場処分となる。ランスにとって人数的に優位となる残された時間で追加点をあげることができるかどうかが、焦点となった。オープンスペースは十分にあり、ランスが試合を支配する。しかし、ランスはその後訪れた決定的なチャンスを2回逃し、1点差でアウエーの試合を迎えることになったのである。
■レバークーゼンで完敗、ベスト8入りならず
その1週間後、第2戦が舞台をレバークーゼンの本拠地バイアリーナに移して行われた。引き分け以上でベスト8入りするランスは負傷などで第1戦に出場した選手を数人欠くが、国際試合に強いベテランのエリック・カリエールを起用する。この試合は完全にレバークーゼンのホームゲームであった。このバイアリーナは収容人数わずか2万2500人、その小さな競技場にぎっしりとレバークーゼンのファンが詰め掛ける。
レバークーゼンはウクライナ代表のアンドレイ・ボロニンが36分に先制点をあげる。この段階でランスはリードを奪われたことになる。なんとかランスは得点を返したかったが、レバークーゼンは後半に入っても56分に2点目、70分にはブラジル代表のホアンが3点目を上げる。
一方のランスの攻撃はブンデスリーガを代表する堅守のGKレネ・アドラーの前に無得点に終わる。2試合合計で2-4と敗れてしまい、7年ぶりの8強進出はならなかった。ベスト8を前に姿を消したのは、第1戦で1点しか差をつけることができなかったことが原因であろう。(続く)