第693回 UEFAカップ決勝トーナメント2回戦(2) パリサンジェルマン、ホーム第1戦は辛勝

■2部降格の危機に瀕するパリサンジェルマン

 UEFAカップ決勝トーナメント2回戦に進出したランスとパリサンジェルマンは国内リーグでは対照的なポジションにある。ランスはリーグ戦2位で来季のチャンピオンズリーグの出場権を確保できる位置にある。一方、パリサンジェルマンは19位に落ちてしまい、2部降格の危機に瀕している。パリサンジェルマンは1972年に1部に昇格してからは1度も2部に降格したことのないチームである。さらにカップ戦には強く、国内リーグの優勝は1993-94シーズンが最後であるが、それ以降、フランスカップ4回(1995、1998、2004、2006)、リーグカップ2回(1995、1998)と多数のカップ戦を制覇している。さらに1996年にはカップウィナーズカップを制覇しており、フランスのクラブで唯一欧州カップを獲得したことのあるチームである。
 このような名門クラブであるが、今季は開幕戦のホームゲームでロリアンに2-3と敗れてスタートし、一度も一桁順位になることなく、下位に低迷している。そしてカップ戦のスペシャリストでありながら、リーグカップはベスト8決定戦、フランスカップは準々決勝で敗退している。また成績だけではなく、昨年11月23日にはUEFAカップのテルアビブ戦でサポーターの死傷事件を起こし、全くいいところのないシーズンである。

■2月半ばから国内外で4連勝

 しかし、そのパリサンジェルマンに光明がさしたのが2月中旬である。国内リーグ戦とUEFAカップの日程が重なる過密日程となったが、10日にホームでモナコに4-2と勝利し、リーグ戦で13試合ぶりの勝利をあげると、UEFAカップ第1戦のアウエーのAEKアテネ戦でも勝利、そしてアウエーのリーグ戦でナンシーに勝利、今季初めてのリーグ戦での連勝となった。さらに22日のホームでのAEKアテネ戦も勝利し、国内外の試合で4連勝を飾り、調子は上向きになった。

■パリサンジェルマンとベンフィカの公式戦初対決

 ところが、UEFAカップ1回戦を突破するとその反動か、リーグ戦でサンテエチエンヌ、スダンに連敗してしまい、この2回戦を迎えることになったのである。2回戦の相手はポルトガルのベンフィカである。名門ベンフィカも国内リーグはパリサンジェルマンと同じ1993-94シーズンに優勝して以来、財政的な問題もあり、ポルトやスポルティングに盟主の座を明け渡していたが、2004-05シーズンに11シーズンぶりのリーグ制覇を果たしている。そして不思議なことにこれがパリサンジェルマンとベンフィカの公式戦での初めての対戦となる。本連載でも何度か紹介しているとおり、パリはポルトガル人がリスボンに次いで世界で2番目に最も多く住む都市である。またパリサンジェルマンの主将はポルトガル代表のパウレタである。すでにリーグ戦では10得点を挙げ、得点王争いにも加わっており、孤軍奮闘の主将である。

■主将の意地を見せたパウレタ

 1部残留を最大目標とするパリサンジェルマンのポール・ルグアン監督は、このベンフィカ戦もメンバーに控え選手を数人起用した。そのパリサンジェルマンの気持ちの緩みと多くのパリ在住のポルトガル人の声援の後押しを受けて9分にベンフィカのシマンが先制点をあげる。しかし、これで奮起したのはパリサンジェルマンのポルトガル人の主将であった。今季のUEFAカップ9戦目で6得点目となるゴールで36分にパリサンジェルマンは追いつく。そしてその4分後、ボナバンチュール・カルーのパスをピエール・アラン・フローが勝ち越しのゴールを決める。そして後半に入ってからはベンチにいた負傷明けのマルセロ・ガジャルドを投入し、パリサンジェルマンは2-1というスコアで第1戦をものにしたのである。
 この試合、後半は両チーム無得点に終わり、この試合がキックオフする頃にランスで試合が終わったランス-レバークーゼン戦と同じスコアになったが、パリサンジェルマンもランス同様、3-1と相手を突き放すチャンスが何回かあったのである。これが翌週の第2戦に大きな影響を与えたのである。(続く)

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