第54回 東欧の巨人ロシアと対戦(6) スタッド・ド・フランスでのフランスの唯一の敗戦
■モスクワでの7回目の対戦で初勝利
1998年に地元で開催されたワールドカップを制したフランスはその後2000年の欧州選手権・ベルギー・オランダ大会も制覇することになる。順風満帆な道をたどってきたように見えるが、その2000年欧州選手権の本大会までの道のりは決して平坦なものではなかった。フランスの二冠に立ちはだかったのが東欧の巨人ロシアである。2000年の欧州選手権予選の組み合わせでフランスはグループ4に入る。このグループ4の有力国は第1シードのロシア、第2シードのフランス、第3シードのウクライナであり、この3か国が本大会出場のチケットを争うと見られた。
ところが、1998年9月に行われた第1戦でフランスはアウエーでアイスランドと引き分け、ロシアもアウエーでウクライナに負け、早くも波乱が起こる。第2戦の注目カードは10月10日にモスクワで行われたロシア-フランス戦。お互いに落とせない試合でフランスのロジェ・ルメール監督は若干19歳で代表2試合目のニコラ・アネルカを起用し、これが見事に的中する。13分に先制点をあげ、ロベール・ピレスが2点目、アラン・ボゴシアンが勝ち越し点をあげ、3-2で勝つ。フランスはソ連以来7回目の対戦でようやくモスクワで初勝利をあげたのである。
■スタッド・ド・フランスでの初めての敗戦
ロシアはその4日後にアイスランドにも敗れ、予選が始まって3連敗し、本大会への出場権争いから脱落したかに見えたが、1999年になって連戦連勝し、息を吹き返す。一方のフランスは2月にロンドンでイングランドと親善試合を行い、2-0と下すが、3月に行われた予選のウクライナ戦はホームの利を活かせず、スコアレスドローと今ひとつ調子に乗り切れない。フランスは上り調子のロシアを6月5日にスタッド・ド・フランスに迎える。1998年のオープン以来スタッド・ド・フランスでは無敗のフランス。
しかし、試合は上り調子のロシアが制する。38分にアレクサンダー・パノフが先制し、フランスも48分にエマニュエル・プチのゴールで追いつき、53分にシルバン・ビルトールのゴールで逆転する。ところがロシアはここからが違った。75分にパノフが同点ゴール、87分にバレリー・カルピンが勝ち越し点を決め、3-2で逆転勝利。この試合はフランス代表にとって1993年11月17日のブルガリア戦以来27試合ぶりのタイトルマッチでの敗戦であるとともに、スタッド・ド・フランスでの初めての敗戦である。
この敗戦のショックが尾を引いたのか、フランスはその4日後にバルセロナで行われたアンドラ戦で大苦戦を強いられる。欧州選手権、ワールドカップ予選に初めてエントリーしたアンドラはホームゲームを国外のバルセロナで開催する。しかし、フランスは得点することができず、ようやく85分にPKを得て、フランク・ルブッフが決めるという状態だった。結局ロシアは最終戦のホームのウクライナ戦で終了間際にGKがミスをして本大会出場を逃し、フランスは幸運にもグループ1位となり、プレーオフも免除され、本大会で優勝する。
■雌雄を決する5回目の対戦
新生ロシアとは今まで4回の対戦で2勝2敗であるが、1990年以降にフランスが2度黒星を喫した国はロシアとブルガリア、イングランド、デンマークだけである。そして二冠を制したフランスのホームグラウンドであるスタッド・ド・フランスでフランスに勝ったことがあるのはロシアだけであり、5回目の対戦が楽しみである。(続く)