第718回 2006-07フランスリーグ・フィナーレ(1) パリサンジェルマン、1部残留を決める

■フランス勢がタイトル争いと無縁のシーズン・フィナーレ

 前回までの本連載でフランスカップ決勝について紹介したが、フランス国内のタイトルはフランスリーグがリヨン、フランスカップがソショー、リーグカップがボルドーと決定した。フランスカップ決勝の翌週の水曜日にはUEFAカップ、その次の水曜日にはチャンピオンズリーグ決勝が控え、チャンピオンズリーグ決勝の終わった週末にはフランスリーグの最終節が行われる。しかし、今年もフランス勢は欧州カップの決勝戦に進出することができず、国内最高のタイトルであるリーグ戦は早々とリヨンが優勝を決めてしまい、タイトル争いとは無縁のシーズンのフィナーレとなった。
 今年のリーグ終盤は来季の欧州カップの出場権争い、そして2部への降格争いに注目が集まった。今季のリーグ戦はリヨンの独走に加え、有力チームが低迷し、下位3チームが対象となる2部降格については例年以上に注目が集まった。

■過去27シーズンで3回しか二桁順位のないパリサンジェルマン

 まず、2部降格が危ぶまれたのがパリサンジェルマンである。パリサンジェルマンは本連載で紹介している通り1970年に誕生し、1974年に1部に昇格、それ以来1度も2部に陥落したことがないという優良チームである。昇格直後は二桁順位が続いたが、その後は安定的な成績を残し、1980年代以降で二桁順位はわずか3回、過去27年間のうち24シーズンは一桁順位を記録してきている。一昨季、昨季と連続して9位であり、二桁に近い一桁順位が続いていたが、まさか2部陥落の危機に瀕するとは誰も思わなかったであろう。

■3月以上勝ち星なし、2月末からの4連敗で19位に転落

 本連載でも何回か紹介している通り、今季は開幕戦をホームでロリアン相手に落とし、以後も調子に乗ることができず、常に二桁順位が続いた。10月28日の第11節でレンヌに勝利し、順位を今季最高の10位にした後で、勝ち星から見放される。11月23日にはパルクデプランスでサポーター殺人事件が起こるというアクシデントも重なり、チームはどん底状態となる。11月、12月は勝ち星を挙げることなく、年が変わっても状況は変わらず、1月も勝利することができない。結局、長いトンネルから脱出したのは2月10日の第24節のモナコ戦であった。この間、7分5敗と言う成績で、順位は2部降格圏内ぎりぎりの17位まで落ちてしまったのである。
 続くナンシー戦はアウエーで勝利し、9月17日以来のアウエー戦勝利、今季初めてのリーグ戦連勝で15位まで順位を上げて危険水域を脱したかに見えたが、2月25日のホームでのサンテエチエンヌ戦で敗れ、フランスカップでも準々決勝で敗れると、再び連敗街道、スダン、オセール、レンヌと負けが続き、今季初のリーグ戦4連敗、チームは19位にまで順位を落としたのである。

■新旧大統領揃い踏みを実現できなかったフランスカップ

 パリサンジェルマンはカップ戦のスペシャリストである。カップ戦のスペシャリストにとって最高の見せ場は大統領臨席のもとで行われるフランスカップ決勝である。パリサンジェルマンとフランスカップ決勝というと忘れられないのが1995年のファイナルであろう。このファイナルの直前に大統領選挙があり、現在のジャック・シラク大統領が当選する。フランスカップには任期満了を目前に控えた社会党のフランソワ・ミッテラン大統領が臨席したが、次期大統領のシラク新大統領も党派は違いながらシラク大統領と並んで観戦したのである。フランス大統領選挙については本連載第711回から第713回で紹介しているが、ジャック・シラク大統領は以前パリ市長でパリサンジェルマンを応援しており、それが就任前のフランスカップ臨席となったのであろう。実はニコラ・サルコジ新大統領もパリサンジェルマンの大ファンである。ところがサルコジ新大統領はフランスカップ決勝には姿を現さなかった。就任前には前任者の仕事に立ち入らないということらしいが、本音はひいきのパリサンジェルマンが不在のファイナルには職務でなければ足を運びたくないというところであろう。
 フランスカップ決勝で新旧大統領揃い踏みを実現できなかったパリサンジェルマンは4月からリーグ戦で生まれ変わる。4月1日にランスで勝利、1引き分けを挟み4連勝し、順位を15位まであげる。そして5月5日に王者リヨンをホームに迎え、1-1のドローで勝ち点1をあげ、最終節の前節の第37節でトロワをホームで下し、ようやく1部残留を決めたのである。(続く)

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