第55回 東欧の巨人ロシアと対戦(7) ワールドカップを控えた強豪とスコアレスドロー

■強豪相手との対戦と最終メンバーの選考

 4月17日のロシア戦は2つの意味で注目を集めた。まず、これが今回のワールドカップ出場を決めた国との実質的に最初の試合である。これまでの本連載でご紹介したとおり、ロシアとの過去の戦いではフランスが苦戦しており、フランスが唯一スタッド・ド・フランスで敗れた国である。そういう骨のある相手との戦いは久しぶりのことであり、強敵相手にフランスがどのような試合を挑むのか誰しもが関心を持つところである。
 もう一つは5月21日に予定されているワールドカップの最終メンバーの決定までに残された試合はこのロシア戦と5月18日のベルギー戦だけのわずか2試合だけということである。京城行きのチケットをかけた各選手のパフォーマンスもファンの関心事である。

■スコットランド戦と選手を入れ替えたフランス代表

 試合の1週間前にフランスの代表メンバー19人が発表された。前月のスコットランド戦のメンバーと比較すると主に攻撃陣で選手の入れ替えが行われた。スコットランド戦のメンバーからこの時点で外れたのはエリック・カリエール、クリスチャン・カランブー、クロード・マケレレ、スチーブ・マルレの4人、逆に復活したのはリリアン・テュラム、アラン・ボゴシアン、ニコラ・アネルカ、ジョアン・ミクーの4人。負傷明けのテュラム以外の復活した3人にとっては重要なテストとなる。特に所属チームのパルマではほとんど出場機会がないが、ピレスの長期欠場の穴を埋めるために昨年8月のデンマーク戦以来の選出となったミクー、パリサンジェルマンからリバプールに移籍して初めて代表に選ばれたアネルカには注目が集まる。また、ダビッド・トレゼゲも負傷の調子が思わしくないことから、20人目の選手としてマルレが招集された。

■ジョニー・アリデーのキックオフ・セレモニーとスコアレスドロー

 フランスで国民的人気を誇る歌手のジョニー・アリデーのキックオフ・セレモニーで始まった試合のフランスの先発メンバーを紹介しよう。GKは月曜日の午後の練習で負傷し出場が危ぶまれていたファビアン・バルテス、DFはテュラム、フランク・ルブッフ、主将のマルセル・デサイー、ビシャンテ・リザラズというおなじみのメンバー、守備的MFは35試合連続出場と言うマニュエル・アモロスの持つフランス代表記録に並んだパトリック・ビエイラとエマニュエル・プチである。攻撃陣はジネディーヌ・ジダンを中心に3人の攻撃的MFと1人のFWと言うシステムが定着していたが、負傷者の続出により、ジダンとユーリ・ジョルカエフがティエリー・アンリとアネルカの2人のFWの後方に控えるという布陣である。
 ロシアは今年に入って連勝したルーマニア、スコットランドという再建途上にあるチームと異なり、ワールドカップを控え、先月の親善試合ではリトアニアに敗れたものの、体力的に優れるロシアに対してフランスの各選手は試合前から警戒をしていた。試合はその通りの展開となり、ルーマニア戦、スコットランド戦とは異なる激しい試合となった。フランスはロシアの高さと組織力のある堅守に阻まれる。かろうじて34分にはアネルカがゴールネットを揺らすが、副審のフラッグがあがり、オフサイドでノーゴール。後半に入った時点でストッパーのルブッフに代えてフィリップ・クリスタンバル、その後、プチに代えてボゴシアン、ジョルカエフに代えてマルレ、ロシアのバレリー・カルピンと口論して熱くなったリザラズに代えてバンサン・カンデラ、アネルカに代えてミクーと代表に復帰した選手を中心に交代した。フランスはピレス、トレゼゲ、ビルトールを負傷で欠き、ロシアのGKルスラン・ニグマトゥリンの好守があったとは言え、シュート20本を放ちながら無得点に終わった。一方のロシアもシュート数はわずか5本で無得点。両チーム無得点で引き分けに終わった。

■フランスが抜群の戦績を残す本拠地で2度にわたり勝利を阻止

 フランス代表がスタッド・ド・フランスで引き分けたのは2000年10月4日のカメルーン戦(1-1)以来1年半ぶりのことであり、無得点に終わったのは1999年3月27日のウクライナ戦(0-0)以来3年ぶりのことである。1998年1月のスタッド・ド・フランスの開場以来フランスはこの新たなる聖地で21試合行ってきたが、勝つことができなかったのは前回の連載で紹介した1999年6月5日のロシア戦(2-3)の敗戦に加え、上記のカメルーン戦とウクライナ戦以外の引き分けは、1998年7月3日のワールドカップ準々決勝のイタリア戦(0-0の末、PK戦でフランスが勝利)、ディディエ・デシャンとローラン・ブランの引退試合となった2000年9月2日のイングランド戦(1-1)だけであり、実に16勝4分1敗という輝かしい戦績を残してきた。その輝かしい戦績を誇るスタッド・ド・フランスで2度にわたりフランスの勝利を阻止したロシアの力は日本の皆さんも十分に認識していることであろう。(この項、終わり)

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