第732回 グアドループ、ゴールドカップで大活躍(1) 北中米カリブ海地域最大の大会

■シーズンオフでのサッカーが見たいサッカー中毒患者

 スペインではレアル・マドリッドが4年ぶりにリーグ優勝を飾り、欧州の主要国はシーズンオフを迎えた。フランスではすでにリーグ戦を終え、欧州選手権予選も終わり、選手はバカンスで長いシーズンの疲れを癒している。一方、クラブのフロントは新シーズンに向けてチームの強化のために選手の移籍市場で熱い戦いを始めている。ところが、ファンは選手の移籍のニュースに一喜一憂しながらも、やはり見たいのはサッカーの試合である。シーズンたけなわである日本、シーズン終盤を迎えたロシアなどの試合を見ることも可能であるが、やはり見たいのはフランスのチームである。

■フランス協会の下部組織であるグアドループ協会が国際大会に参戦

 そのようなサッカー中毒患者を喜ばせるような活躍をしているのが、ゴールドカップで活躍しているグアドループ代表である。グアドループは本連載で何度か紹介している通り、カリブ海の西インド諸島の中のグアドループ島を中心とする島々からなる海外県である。このフランスの海外県であるグアドループが代表チームを編成し、国際大会に出場しているのである。
 グアドループ協会はフランス協会の下部組織であり、スコットランド協会とイングランド協会が対等の立場であるのとは異なる。スコットランド協会とイングランド協会の場合は国際試合に双方がチームを送っているが、グアドループ協会はフランス協会の下部組織であるため、単独で国際試合にチームを派遣することはできないはずである。
 しかし、そのグアドループが北中米カリブ海地域の大陸別選手権であるゴールドカップに参戦しているのである。実はこの大会はFIFA(国際サッカー連盟)の主催ではなく、CONCACAF(北中米カリブ海サッカー連盟)の主催であるため、FIFAに加盟していなくてもCONCACAFに所属していれば出場することができる。フランス協会の傘下の一地方協会であるグアドループ協会は地理的にエリアとなるCONCACAFに所属しており、出場権があるわけである。これはマルティニックも同様である。2002年のゴールドカップに参戦したマルティニックについては、本連載第34回から第36回で紹介したとおり、準々決勝に進出している。

■実際の国の数を大きく上回る35か国が参戦

 今回のゴールドカップには12か国が参加しているが、ワールドカップ本大会では今や常連国となったメキシコ、米国がリードし、それを追うカナダは予選免除となっている。それ以外の国はゴールドカップに出るために予選を戦わなくてはならない。この予選に相当するのが中米大陸の国や地域で争われる中米選手権ならびにカリブ海ならびに沿岸諸国で争われるカリブ海選手権である。これらの大会はゴールドカップの前に行われ、その上位チームに出場権が与えられる。
 北中米カリブ海地域には25の国があるが、フランスの一部であるグアドループやマルティニックだけではなく、たくさんの自治領となっている地域があり、グアドループやマルティニック同様にこれらの大会にエントリーしている。
 カリブ選手権は25チームが出場、そして中米選手権は7チームが出場している。すなわちゴールドカップは北中米カリブ海地域の35チームで争われるわけであり、実際の国の数よりも多くのチームが参加している。FIFAが主催するワールドカップ予選については34チームが出場しており、それを上回る数のチームが参戦している。

■変則的なサンマルタン、仏領ギアナの存在

 フランスに関係のあるところでは、カリブ選手権にグアドループ、マルティニックのほかサンマルタンが出場している。サンマルタン島は北半分がフランス領、南半分がオランダ領である。したがってオランダ語読みではシントマルテン島となる。北半分のフランス領はグアドループ県に所属している。しかし、このフランス領とオランダ領からなる島で1つのサッカーチームを形成し、各種の大会に出場している。ラグビーの世界で北アイルランド(英国の一部)とアイルランド(アイルランド共和国)が1つのチームを形成しているのとよく似ている。
 また、地理的には南米大陸に存在するが、フランス領ギアナやガイアナ、そしてスリナムもCONCACAFに所属している。残念なことにフランス領ギアナは今回のカリブ選手権にはエントリーしていない。
 このように数多くの国や地域が変則的に混在する北中米カリブ海地域で、中米選手権、カリブ選手権とあわせたゴールドカップは、この地域最大の大会と言えるのである。(続く)

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