第57回 2001-02フランス・サッカー・フィナーレ(2) ランスとリヨンが最終戦で一騎打ち
■首位ランス、セネガル代表ディウフが先制点
いよいよ残り2節となったフランスリーグ第33節は4月27日午後8時に一斉にキックオフされた。通常リーグ戦は各節1、2試合がテレビ中継のために他の試合と日時をずらして行われるが、終盤は9試合すべてが同じ時間にキックオフされる。
優勝争いのかかった注目の試合は前回紹介したとおり、ランス-ガンガン、ボルドー-リヨン、モナコ-オセールの3試合である。この3試合のうち最初に歓声が上がったのは首位ランスのフェリックス・ボラール競技場である。17分に本連載第27回で紹介したセネガル代表でエル・ハジ・ディウフが先制点をあげ、黄色と赤に染まったスタジアムを喜ばせる。ランスを追う2位のリヨンと3位のオセールはアウエーでの戦いとなったが、モナコのルイ2世スタジアムではコンゴ民主共和国代表の主将でモナコのシャバニ・ノンダがその直後の18分に先制点を入れる。
■追うリヨンとオセールの焦りとランスのゴールラッシュ
首位のランスがこの試合に勝った場合、首位を勝ち点1差で追うリヨンはボルドーに負けると優勝はなくなる。一方、ランスと勝ち点3差のオセールも、ランスが勝った場合、引き分け以下では優勝はなくなる。したがって首位を追走する2チームはアウエーゲームであるが、得点が不可欠である。しかし、両チームの焦りが審判のカードを誘発する。ボルドーではリヨンのマルク・ビビアン・フォエ、ボルドーのクリストフ・デュガリーとカメルーンとフランスの代表選手である2人が同時に退場処分を受け、10対10の戦いとなる。一方、モナコでも後半開始早々までに4枚のイエローカードが飛び交う。激しい争いであるが肝心のゴールのないライバルチームの苦戦を横目に、ランスではゴールラッシュとなる。41分にはセネガル代表のフェルディナン・コリー、後半に入り54分には再びエル・ハジ・ディウフ、セネガル人選手のゴールラッシュに沸くスタジアム、5月の京城での試合を気にするランスのファンはいない。そして56分の4点目はようやくフランス人選手のダニエル・モレイラがマークする。
■勝ったリヨンは優勝争いに残留、引き分けに終わったオセールは脱落
ゴールラッシュのランスとは逆にリヨンもオセールもゴールネットを揺らすことなく、時計の針は動いていく。ランスの勝利がほぼ確定的となったこの段階で勝利が義務付けられたオセールはリーグ得点ランキング2位で1部リーグ最優秀若手選手に選ばれたジブリル・シセが67分にようやく同点に追いつくゴールを決める。
一方、リヨンは現在リーグ得点ランキング1位で1部リーグ最優秀選手に選ばれたポルトガル代表のペドロ・ミゲル・パウレタを擁し、上位にはめっぽう強いボルドー相手に先制点が欲しいところである。そしてその執念が実り、69分には得点ランキング5位のソニー・アンデルソンがようやくゴールを決め、これが決勝点となって試合はこのままタイムアップ。地元最終戦となるボルドーを沈黙させるとともに、来週のランスへの挑戦権を手中にした。
引き分けでは優勝が不可能となるオセールは2点目を取ろうと攻撃を仕掛けたが、結局勝ち越し点は奪えず、引き分けに終わり、ランスとの勝ち点の差が5、リヨンとの勝ち点の差が4となり、優勝は消えた。
■最終節での直接対決が実現
この結果、最終節のリヨン-ランス戦はリヨンが勝てば優勝、ランスが勝つか引き分ければランスの優勝、という願ってもない決戦になったのである。リーグ戦の最終戦で勝った方が優勝という直接対決は日本の国技である大相撲ではしばしばあるようであるが、フランスのサッカーでは事実上初めてであると言えよう。第二次世界大戦中の1944-45のシーズンではリーグを南部と北部に分け、それぞれの優勝チームがプレーオフで国内ナンバーワンを争った。この時以来の決戦である。南北リーグに分かれて優勝を争ったこのシーズン、北部リーグの優勝チームはルーアン、南部リーグの優勝チームは奇しくもリヨンであった。リヨンはルーアンに0-4と敗れて優勝を逃し、今までフランスリーグで優勝したことない。今回も南北決戦となった。その時の雪辱を果たしリヨンが悲願の初優勝を飾ることができるのか、それとも終始リーグ首位を走ってきたランスがその座を譲ることなく4年ぶり2回目の優勝を飾るのか、翌日の大統領選挙に勝るとも劣らない関心を集めているのである。(続く)