第743回 2007年ツール・ド・フランス(5) アルプスからピレネーへと向かう中盤戦

■中盤戦で注目を集めた3選手

 今年5月に就任したばかりのニコラ・サルコジ大統領の観戦で大きく盛り上がった休息日明けの第9ステージ、次の休息日は7月24日である。第9ステージから第15ステージまで7日間連続して戦い、この7日間が大会全体の中盤戦となる。
 この中盤戦で3人の選手が注目を集めた。まず大会前に優勝候補と目されながら、第5ステージで転倒するなど調子の上がらないアレクサンドル・ヴィノクロフ、次にフランス勢で一番期待されているクリストフ・モロー、そして第8ステージに総合首位に躍り出たミカエル・ラスムッセン、この3人を中心にレースは南仏へ、そしてピレネー山脈へと向かっていくのである。

■ヴィノクロフが本領発揮、2回のステージ優勝

 その中で、序盤戦を終わった段階で22位にとどまっていたヴィノクロフが本領を発揮し始めたのが、この中盤戦であった。第13ステージ、この日はアルビを出発しアルビに戻ってくるタイムトライアルであるが、ここでようやくヴィノクロフがステージ優勝を果たし、総合順位を9位まであげる。しかし、ヴィノクロフは翌日の山岳コースの第14ステージで81位と大ブレーキ、総合順位を30位まで下げてしまう。ところが、連日の山岳コースとなる第15ステージでヴィノクロフは奮起し、今年2回目のステージ優勝を果たし、23位まで順位を盛り返して、最後の休息日を迎えたのである。

■順位を落としたモロー

 フランスのファンの期待の高まるモローは前回の本連載で紹介したとおり、ニコラ・サルコジ大統領の第9ステージでの応援に奮起したのであろう、弟9ステージで6位まで順位を上げる。ところが、モローにとってはこれが最高の順位になってしまった。マルセイユに向かう第10ステージでは57位となり、第11ステージは82位、そして第12ステージでは113位となり、第12ステージを終えた段階での総合順位は14位に落ちてしまう。さらに第13ステージでは125位、第14ステージでは135位と不本意な成績が続き、休息日前の第15ステージでは26位と盛り返すが総合順位は36位にとどまっている。
 22年ぶりのフランス人の優勝が期待されたが、第15ステージを終了した段階で、フランス勢の総合成績は最高が32位のシルバン・シャバネル、続いて36位のモロー、そして38位にステファン・グーベール、39位にルドビック・テュルパンとなっている。32位のシャバネルですらトップとは40分以上の差、ファンの夢は遠のいたのである。

■最後の大会で10年ぶりのステージ優勝を果たしたセドリック・ヴァスール

 この中盤戦において、フランス勢で活躍したのは今年限りでツール・ド・フランスから引退することを表明している36歳のセドリック・ヴァスールである。それまで総合順位は66位と目立たなかったがこのマルセイユに向かうコースで見事にステージ優勝、ヴァスール自身にとって10年ぶり2回目のステージ優勝、そしてフランス人として今年初優勝を飾ったのである。そしてこの第10ステージでは同じフランス人のサンディ・カザールが2位、パトリス・アルガンが4位とフランス勢が上位を占めたのである。これもマルセイユのもつ魔力であろうか。

■中盤戦でマイヨー・ジョーヌを独占したラスムッセン

 そして注目の総合成績であるが、最初の休息日前の山岳コースの第8ステージでステージ優勝し、総合トップに躍り出たラスムッセンが、この中盤戦ではマイヨー・ジョーヌを守り続けた。第9ステージは6位、平坦なコースとなった第10ステージ以降は二桁順位となったが、首位をキープする。そしてピレネーに舞台を移した山岳コースの第14ステージでは2位を獲得、続く第15ステージも11位と好成績を続け、第15ステージを終了した段階で、2位のスペインのアルベルト・コンタドールに2分23秒差をつけて2回目の休息日を迎えたのである。
 2回目の休息日をピレネーで迎えて、フランスのファンは地元選手の予想外の不振にがっかりする。そして25日から始まった最後の戦いには優勝候補のヴィノクロフ、首位をキープし続けるラスムッセンの2人に注目が集まったが、今年も予想外の事件が待ち受けていたのである。(続く)

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