第745回 リヨン、ピースカップで優勝(1) 3大会連続の参加となるリヨン

■世界が注目するピースカップ

 国内がツール・ド・フランス一色になってしまう7月のフランスであるが、サッカーの世界でも来季に向けて各チームが始動し、選手の移籍や練習試合など、見所は少なくない。その中で注目を集めたのが、韓国で開催されたピースカップである。世界中から強豪クラブが集って行われるこの大会にはフランスからはリヨンが出場する。2003年、2005年についで今回が3回目である。大陸を超えたクラブによる大会は夏のピースカップ、冬のクラブワールドカップと定着し、回を重ねるごとに注目を集めており、チャンピオンズリーグやUEFAカップに次ぐ大会としての地位を築いている。
 そのリヨンは2003年大会、2005年大会にも出場しており、いずれも決勝に進出しているが、2003年はPSVアイントホーヘン、2005年はトットナム・ホットスパーズに決勝で敗れ、準優勝にとどまっている。ピースカップは8チームが参加して行われるが、3回連続して出場するのは地元の城南一和天馬とリヨンの2チームだけである。

■統一教会とピースカップ

 そして今回の大会には日本からも初出場、清水エスパルスが参戦する。3回目にして日本のチームが初出場と言う理由はこの大会の運営者について紹介しなくてはならない。
 このピースカップは文鮮明の主宰する統一教会によって運営されている。地元韓国から3回連続出場となる城南一和天馬も統一教会関連の企業がオーナーである。実は今大会は安倍晋三首相になってから初めての大会である。統一教会と関係のある首相のいる国からチームが参加したわけである。
 一方、フランス政府は文鮮明夫妻をこれまで2005年と2006年の2回にわたって入国拒否しており、良好な関係とは言いがたい。また、この時期の韓国は高温多湿であり、時差は7時間、選手の疲労も気がかりである。そのような中でリヨンが遠征に踏み切った理由がある。

■優勝賞金とテレビ番組の販売を狙うリヨン

 まずはビジネスである。今回のピースカップの優勝賞金は200万ドルである。世界の頂点であるクラブワールドカップですら優勝賞金が450万ドルであることを考えれば、このピースカップの賞金は魅力的である。
 しかし、リヨンにとってさらに魅力的なのがこの大会がアジアで開催されると言うことである。リヨンはOLTVと言うテレビ局を所有している。欧州のトップクラスのクラブは自前でテレビ局を所有し、試合などを放映している。リヨンのファンもホームゲームはジェルラン競技場に応援に駆けつけ、アウエーゲームはこのOLTVでテレビ観戦が多くなる。そしてリヨンの目論見はこのOLTVを国内のファンだけではなく、国外のファンにも視聴してもらうことである。OLTVが韓国をはじめとする東アジアで視聴可能となるならば、リヨンは大きな収入を得ることになる。そのためのデモンストレーションとしてチーム自身が韓国で試合をすることは重要なことである。

■新監督を迎え、チームを実戦で再編成

 そしてもう一方は目前に迫ったリーグ戦への準備である。6連覇を達成したリヨンの目標はリーグ優勝にとどまらず、チャンピオンズリーグ優勝である。国内では無敵であり、フランス代表の半分近くの選手を輩出しているが、チャンピオンズリーグでは思ったような成績が残せないでいる。そしてジェラール・ウリエ監督は2年間の在任期間で2度ともリーグ優勝を果たすが、今年のチャンピオンズリーグでは決勝トーナメント1回戦で姿を消してしまう。そしてシーズン終了後辞任し、アラン・ペランが後任監督となった。選手についてもビッグクラブならではの大型移籍が相次ぎ、チームを再構築しなくてはならない。そのためには実戦でチームを作り上げることが手っ取り早い。
 さらになによりもこれまで2回出場し、いずれも決勝戦で敗れているこの大会で今度こそ優勝したいと新監督以下選手、スタッフは願っているであろう。
 リヨンは、乗り継ぎ時のトラブルもあり、22時間の長旅の末、初戦の会場である釜山に到着した。初戦の相手は清水エスパルス、そして第2戦は京城に移動してイングランドのレディング戦、そして第3戦は水原に移動し、アルゼンチンのリバープレートと対戦する。グループリーグで1位のチームが京城での決勝を戦うことができる。リヨンは3度目の挑戦で優勝ができるであろうか。(続く)

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