第747回 リヨン、ピースカップで優勝(3) 3度目の挑戦でついに優勝
■強豪リバープレートに勝利し、決勝進出
リヨンはピースカップのグループリーグの第1戦の清水戦と第2戦のレディング戦で守備の要のセバスチャン・スキラッチとクリスを失ってしまった。3大会連続の決勝進出、そして悲願の初優勝に向けて負けられない第3戦のリバープレート戦で、アラン・ペラン監督は2人のストッパーにスイス代表のパトリック・ミューラーと本来はMFであるマチュー・ボドメールを起用した。
この試合で負けたチームは韓国を去らなくてはならないという状況で先制点をあげたのはカリム・ベンゼマであった。6分に先制点をあげたリヨンであるが、14分にリバープレートが追いつく。リバープレートはこの試合で引き分け以上であれば決勝進出となる。しかし、リヨンは24分にハテム・ベンアルファが勝ち越し点を奪う。20歳のベンアルファは昨年まで控え選手であったが、主力選手の離脱によって試合出場の機会を得て、それをものにしたのである。リバープレートも追いつけば決勝進出であったが、後半のロスタイムにはペナルティエリア内でファウル、このPKをリヨンのキム・カールストロームが決めて、3-1とリヨンが勝利したのである。
リヨンはグループリーグの全日程を終えて、勝ち点6、得失点差は+3となり、同勝ち点ながら得失点差が0のリバープレートを上回ったが、気になるのは同時刻に行われた高陽でのレディング-清水戦である。レディングは清水に勝利したものの1-0と得失点差を伸ばすことができず、結局得失点差は+1にとどまり、リヨンが3大会連続の決勝進出を決めたのである。
■決勝の相手はイングランドのボルトン
さて、決勝の相手はグループAで首位のボルトン(イングランド)である。一昨年まで中田英寿が所属していたイングランドを代表するビッグクラブである。ボルトンはグループリーグの第1戦で地元の城南一和天馬と引き分け、その後はメキシコのグアダラハラ、スペインのサンタンドールを下し、無敗で決勝に進出してきた。ボルトンの攻撃の中心はフランス代表に返り咲いたニコラ・姉ルカである。またフランス人としては今季ボルドーから移籍したジェラール・シドも試合に出場している。
■多数の負傷者を抱えながらも初優勝、カリム・ベンゼマ最優秀選手に
一方のリヨンは負傷者が相次ぎ、ジュニーニョ、フレッドが遠征に帯同しなかったことに始まり、大会中にスキラッチ、クリスを失い、さらにワールドカップ優勝メンバーのファビオ・グロッソ、ジェレミー・トゥーラランも試合出場が危ぶまれている。
このようにメンバー的にハンディキャップを抱えるリヨンであったが、これまでの2大会で準優勝に終わっている悔しさを忘れてはいなかった。試合はリヨンが終始支配するが、なかなかゴールを決めることができない。ペラン監督は終盤になって、エースのベンゼマにかえてベンアルファを投入する。そして両チーム無得点のまま迎えた87分、ベンアルファからのボールを受けたカールストロームが決勝点をあげる。リヨンは3大会連続の出場でようやく決勝の厚い壁を乗り越えたのである。大会の最優秀選手にはベンゼマが選出されたのである。
■チャンスをものにした若手のハテム・ベンアルファ、新加入のカデル・ケイタ
今回のピースカップ優勝はリヨンにいろいろなものをもたらした。まずは賞金200万ドル、これだけで十分な収穫であるが、ジャン・ミッシェル・オーラス会長は韓国の政財界の要人と名刺を大量に交換している。リヨンの世界戦略の中で韓国企業は重要な位置を占めるであろう。
もちろん、7連覇、欧州制覇を狙うリヨンにとってはそれ以上の収穫があった。フローラン・マルーダの後継者としてのベンアルファの台頭はうれしい収穫である。また今季リールから移籍してきたカデル・ケイタも新しいチームになじむことができた。そしてなによりも、これまで2回の大会で準優勝に終わり、国際試合で実力を発揮できなかったリヨンが、グループリーグ最終戦のリバープレート戦、決勝のボルトン戦と欧米の強豪を破って優勝という結果を残したことである。このピースカップの優勝は新監督率いるリヨンのイレブンに自信を与えた。今季のリヨンの国内外での戦いが楽しみである。(この項、終わり)