第757回 ミラノでイタリアとの決戦(3) ホームで45年ぶりの勝利を目指すイタリア

■通算成績ではフランスを大きくリードするイタリア

 首位フランスを勝ち点2の差で追うイタリア、ここでフランスに勝利すれば、首位に躍り出ることができる。前回の本連載で紹介したとおり、イタリアとフランスはこれまでに34回対戦している。これまでの対戦成績はフランスの8勝9分17敗と大きくフランスが負け越している。(1998年と2006年のワールドカップでのPK戦による決着は引き分けとカウントしている。)日本の読者の皆様も、昨年のワールドカップ決勝の印象からイタリアがフランスを圧倒しているとお考えの方は少なくないと思われる。ところが、最近の成績は一方的にフランスがリードしている。

■1978年ワールドカップ・アルゼンチン大会が最後の90分間での勝利

 昨年のワールドカップの決勝を引き分けとカウントすると、イタリアがフランスに勝利したのは1978年6月2日のワールドカップ・アルゼンチン大会が最後であり、それ以来ほぼ30年間、イタリアはフランスに勝つことができないのである。本連載でも何回か紹介してきたが、1978年のワールドカップのグループリーグのマルデルプラタでの戦いは大会屈指の好ゲームであった。若き日のミッシェル・プラティニを中心とするフランスの中盤は、1980年代のフランスサッカーの黄金期を予期させるものであった。
 マルデルプラタでの敗退後、フランスがイタリアと対戦したのは1982年2月のパリでの親善試合、その5か月後にスペインで世界チャンピオンとなるイタリアを若きダニエル・ブラボーのゴールなどで2-0と下す。そしてその次の対戦はさらにその4年後、メキシコでのワールドカップの決勝トーナメント1回戦で顔を合わせる。グループリーグをトップで勝ち抜いたフランスはその勢いに乗ってディフェンディングチャンピオンをプラティニとヤニック・ストピラのゴールで2-0と下す。このメキシコでのワールドカップを最後にフランスは国際大会で活躍することができなくなる暗黒時代を迎える。そのどん底は1994年のワールドカップ米国大会予選であろう。1993年11月17日の予選敗退を受けて、フランスのサッカーは凍結してしまう。

■米国大会予選敗退後、初の試合で歴史的な勝利を上げたフランス

 エメ・ジャッケ新監督を迎え、最初に試合を行ったのが、ブルガリア戦の敗戦の3月後の1994年2月16日のナポリでのイタリア戦であった。イタリアでは1912年に勝利して以来、1度も勝ったことがなく、誰もが期待していなかった。しかし、この試合は前半終了間際のユーリ・ジョルカエフのゴールで、イタリア戦アウエーで82年ぶりの勝利を上げ、ここからフランス代表は生き返った。それ以降は開催国や前回優勝という予選免除の特権はあったものの、ワールドカップと欧州選手権の全ての本大会に出場している。また、この間のイタリアとの戦績も、1997年はパリでの親善試合で引き分け、1998年はワールドカップ準々決勝(スタッド・ド・フランス)でPK勝ち、2000年欧州選手権決勝(ロッテルダム)で延長の末逆転勝ち、2006年ワールドカップ決勝(ベルリン)でPK負け、パリでの欧州選手権予選で勝利となっており、PK戦を引き分けとカウントすると、2勝3分とイタリアの90分間(120分間)での勝利を許していない。

■イタリア国内での最後の勝利は監督も生まれていない45年前

 1980年代後半から1990年代初めのフランスサッカーの低迷期に対戦がなかったとはいえ、現在のフランス代表のメンバーは物心がついたころから、イタリアがフランスに勝った試合を見たことがないのである。逆にイタリア代表のメンバーもパオロ・ロッシの大活躍によるワールドカップ優勝の記憶はあってもフランス戦の勝利の記憶はない。さらにイタリア国内でイタリアが最後にフランスに勝ったのは1962年5月5日のフィレンツェでの親善試合ということであるから、選手はおろか、ロベルト・ドナドーニ監督も1963年生まれであるから、この世に生を受けていない時代のことである。
 イタリアにとってはフランスに対する29年ぶりの勝利、そして地元では45年ぶりの勝利を目指して、イタリア、欧州を代表するサンシーロにフランスのイレブンを迎えたのである。(続く)

このページのTOPへ