第770回 伝説再び、ニュージーランドに勝利(2) 「アレ・レ・ブルー」の歓声とともに逆転勝利

■大一番の司令塔に21歳のリオネル・ボークシスを起用

 フランスはニュージーランドとウェールズのカーディフで対戦するが、これはフランスにとって今大会最初で最後となる国外での試合である。フランスは9月30日にはパリからウェールズに移動した。
 6日の試合に先立ち、メンバー発表が行われた。フランスのメンバーの最大の驚きはSOにリオネル・ボークシスを起用したことであろう。今年の6か国対抗で代表にデビューしたばかりの21歳の若者はフレデリック・ミシャラク、ダビッド・スクレラに次ぐ第3のSOである。所属チームのスタッド・フランセでもスクレラの控えである。今大会でも第2戦のナミビア戦および第3戦のアイルランド戦の試合終盤に交代出場したのと、第4戦のグルジア戦に先発フル出場しただけである。アルゼンチン、アイルランドと言う強豪相手の先発はスクレラ、ミシャラクが務めている。大会前のテストマッチにも1試合しか出場していない。その若者をニュージーランド相手に司令塔として起用するベルナール・ラポルト監督には確信があったのであろう。まず、今年の6か国対抗には全試合に出場し、4勝1敗の成績を残し、優勝SOとなっている。そして、フランス代表は6か国対抗が終了してからワールドカップ開幕までテストマッチを5試合行ったが、ボークシスが唯一出場した試合は8月26日のカーディフでのウェールズ戦だけなのである。そしてこのウェールズ戦でのボークシスのキックがさえ、34-7と勝利している。ボークシスにとって相性の良い競技場での試合となる。また、6月のニュージーランドとの連戦にボークシスは出場しておらず、ニュージーランド戦の秘密兵器ともいえる。

■主将は8年前と同じラファエル・イバネス

 そしてもう1人の注目選手が主将であるフッカーのラファエル・イバネスである。34歳のベテラン選手であるが、8年前にトゥイッケナムでニュージーランドに勝利した時も主将を務めており、奇跡を起こすためには不可欠なメンバーである。そしてイバネス以外にも8年前の勝利を経験したメンバーは南アフリカ生まれで1999年大会の直前に帰化したプロップのピエトル・ドビリエ、ロックのファビアン・プルースが先発し、ベンチにはWTBのクリストフ・ドミニシが控えている。
 前回の本連載で南半球勢の活躍を紹介したが、このニュージーランド-フランス戦の前にマルセイユで行われた準々決勝最初の試合ではイングランドが豪州に勝ち、北半球勢にとって幸先の良い結果となった。

■ニュージーランドが13点を先行

試合を裁くのは28歳と多くの選手よりも若いイングランドのウェイン・バーンズ氏である。先制点はやはりオールブラックス、ダニエル・カーターがPGを決める。そして17分にはルーク・マカリスターがトライを上げ、ゴールも決まって10-0とリードを広げる。さらに30分にもカーターがPGを決めて13点差となる。グループリーグ4試合で与えた反則がわずか19と20チーム中最少のニュージーランドから得点を奪うのは容易なことではない。前半終了間際にニュージーランドはラインアウトで反則を犯し、ボークシスがこの日フランスの初得点となるPGを決めて10点差に詰め寄ったところで前半は終了する。

■ついに逆転、ミレニアム競技場で今世紀初めての勝利

 後半に入り、流れは変わる。45分にマカリスターがフランスのCTBのヤニック・ジョージオンにノーボールタックルをして10分間の退場、そしてPGをボークシスが決めてフランスは6-13と射程圏内に入る。そして1人少ないニュージーランドに対しフランスはボールを動かし、52分にはティエリー・デュソートワールがフランスの初トライ、ボークシスがポールに当たりながらもゴール成功、13点差を付けられたフランスは追いついたのである。試合は総力戦となり、両チーム選手を頻繁に入れ替える。
 63分にはニュージーランドのナンバー8のロドニー・ソーイアロがフランスのタックルを交わして勝ち越し、ゴールは失敗したがフランスはまた追う展開となった。ウェールズでの試合とはいえ、フランスを応援する観衆が大多数である。その「アレ・レ・ブルー」の大歓声に後押しされ、ボークシスと交代してピッチに入ってきたばかりのミシャラクからパスを受けたジョージオンが68分に同点トライをあげる。そしてゴールはジャン・バプティスト・エリサルドが決めてついにフランスは逆転する。
 残り10分あまりのオールブラックスの猛攻をしのぎ、フランスはオールブラックスに20-18と僅差で勝利し、ミレニアム競技場での今世紀初の勝利は新たな伝説となったのである。(この項、終わり)

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