第786回 欧州選手権予選ファイナル(4) ロスタイムに決勝点、イタリアとともにフランスも本大会出場決定

■因縁の相手イタリアに声援を送るフランス国民

 久しぶりの本拠地スタッド・ド・フランスでの戦いでモロッコのアンリ・ミッシェル監督の執念と多数のモロッコのファンの声援の前にフランス代表は平常心を失って引き分けに終わってしまった。モロッコ戦については差し引いて考えなくてはならない要素はあるが、試合内容、結果とも満足のいくものではなく、ウクライナ戦に不安を感じないわけではない。
 気分を切り替えてウクライナ戦に臨みたいところであるが、気になるのは土曜日の夜に行われるスコットランド-イタリア戦である。この2位のスコットランドと3位の戦いとなったが、この試合が最終戦となるスコットランドとしては勝利したいところである。一方、スコットランドが勝利すると残りの1つのチケットを争うことになるフランスはモロッコ戦の状況からイタリアの勝利を願いたいところである。
 昨年のワールドカップ決勝からわずか1年4か月、因縁の相手にフランス国民は声援を送ることになってしまったのである。

■スコットランドでは未勝利のイタリア

 試合会場のグラスゴーのハンプデンパークは氷雨の降るあいにくの天候となった。1998年ワールドカップ・フランス大会以来、スコットランドはワールドカップ、欧州選手権の本大会に出場しておらず、期待は高まり、5万1000人の観衆で満員となったが、この中には英国のゴードン・ブラウン首相の姿も見える。母国イングランドも予選では大苦戦を強いられ、本大会出場が危ぶまれている。この日は試合がないが、10月17日にモスクワでロシアに敗れ、グループEでロシアと2位争いを余儀なくされている。またイタリアもDFであり、PKの専門家といわれるマッシモ・オッドを直前の負傷で欠き、急遽クリスチャン・パヌッチをグラスゴーに呼び寄せた。
 両チームの過去の戦績をさかのぼると、これまでに両国は9回対戦している。イタリア6勝、スコットランド2勝、1引き分けと言う成績であり、スコットランドの唯一の勝利は1965年のことである。しかしながら、スコットランドでの戦績はスコットランド1勝、2引き分けであり、イタリアはスコットランドでは1回も勝利したことがない。また、最近の成績を見てもイタリアは昨年の9月6日にフランスに敗れて以来負けなし、スコットランドもホームでは昨年3月にスイスに敗れて以来負けておらず、イタリアにとって勝利は簡単なことではない。引き分けに終わるとフランスはアウエーでウクライナに引き分け以上の成績が必要となる。

■劣勢のイタリア先制、後半にスコットランド同点に

 雨の中で試合は始まった。テクニシャンぞろいのイタリアに不利であると思われたが、そのイタリアが2分に衝撃のゴールをあげる。ジャン・ルカ・ザンブロッタのスローインからの展開でルカ・トニが先制点をあげる。トニは今年3月のバーリでのホームゲームでも得点を挙げている。イタリアはこのスコットランドの地での初勝利、そして欧州選手権出場権をかけてなおも攻勢の手を休めず、追加点を狙うが、30分のアントニオ・ディナターレのゴールはオフサイドで得点は認められず。一方のスコットランドは残りの時間で逆転をして、10年ぶりの桧舞台への切符をつかみたいところである。前半はスコアは動かず、試合は残り45分となる。後半になってハンプデンパークは大きな歓声に包まれる。65分にアラン・ハットンが好位置からのFKを得る。シュートをイタリアの名手ジャン・ルイ・ブッフォンがはじき、バリー・ファーガソンが押し込んで同点となった。

■代役のパヌッチ、アルプスの両側を歓喜させる決勝のヘディングシュート

 その後も時計の針は進む。そしていよいよロスタイムとなり、フランスのリビングのテレビも前のファンはウクライナ戦で勝たなければならないことを覚悟した。ところが、91分、イタリアはFKを獲得、アンドレア・ピルロのFKのターゲットは攻撃陣ではなかった。この日代役として急遽招集されたDFのパヌッチであった。パヌッチがヘディングでハンプデンパークを沈黙に落とし込む。試合はそのままタイムアップ、2-1と勝利したイタリアが本大会出場を決めるとともに、フランスにもチケットが転がり込む。アルプスをはさんで土曜の夜に大きなプレゼントがもたらされたのである。(続く)

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