第794回 女子ハンドボール世界選手権(1) 東欧主導の大会史に歴史を残す日本

■種目別世界選手権の掉尾を飾る大会

 2007年も年の瀬を迎えることになった。奇数年ということでサッカーの世界ではワールドカップ、欧州選手権の本大会がなく、他の競技ではオリンピックの前年と言うことで、サッカーは予選の山場、そして他の競技は世界選手権やワールドカップが行われる。昨年から今年にかけての種目別世界選手権については、昨年8月の男子バスケットボールの世界選手権(日本で開催:フランスは5位)、昨年9月の女子バスケットボールの世界選手権(ブラジルで開催:フランスは5位)、今年初めの男子ハンドボールの世界選手権(ドイツで開催:フランスは4位)、そして今秋のラグビーのワールドカップ(フランス等で開催:フランスは4位)と紹介してきた。そしてこの一連の種目別世界選手権(ワールドカップ)の掉尾を飾るのが12月にフランスで開催された女子ハンドボールの世界選手権である。
 アジアでも急速に人気と注目を集めつつある種目であるハンドボール、特に中東ではサッカーに代わり、最も国民が関心を持つ競技となってきた。

■開催国は東欧中心

 ハンドボールの女子の世界選手権は今年でちょうど50年を迎え、1993年大会以降は奇数年に開催され、今回が17回目の開催となる。1957年にユーゴスラビアで第1回大会が行われ、第2回大会は1962年にルーマニアで開催と共産圏で連続開催されている。その後も東欧での開催が多く、東西冷戦下では9回開催されているが、そのうち6回は共産圏で開催され、それ以外はオランダで2回、西ドイツで1回開催されただけであった。各種競技では必ず主要な開催地となっているフランスがこれまでに開催したことがないというのは不思議なことである。
 今回を含めて17回の開催のうち、欧州以外での開催はわずかに1回、1990年の韓国大会だけである。ちなみに男子のハンドボールの世界選手権も欧州での開催がほとんどであるが、東欧よりも西欧での開催が多い。欧州以外での初めての開催は1997年に日本で行われた第15回大会である。男子大会に先駆けて女子大会が欧州以外で開催され、それが日本ではなく韓国であったということは注目すべきであろう。また、1995年に行われた女子の世界選手権はオーストリアとハンガリーで共同開催され、ラグビーを除くと世界選手権としては初めての共同開催であり、この大会の成功が翌年の2002年のサッカーのワールドカップの韓国と日本での共同開催の決定に大きな影響を与えていることは否定できないであろう。

■東欧の天下に終止符を打った韓国の優勝

 また、これまでの優勝国については発足から長い間東欧諸国の天下が続いた。第1回大会の優勝国はチェコスロバキア、第2回はルーマニア、以後ハンガリー、東ドイツ、ユーゴスラビアと続き、東欧圏以外の初優勝は1993年の統一後のドイツである。このドイツも半分は東欧であると考えるならば、純粋な東欧圏以外の初めての金メダルは1995年大会で韓国が獲得している。韓国が優勝してから再び覇権は欧州に戻り、デンマーク、ノルウェーと言う北欧勢が優勝した後、2001年にロシアが優勝し、2003年にフランスが初優勝を果たしている。そして前回大会、すなわち2005年大会はロシアが旧ソ連時代と通算して5回目の優勝を果たしている。

■12回出場の歴史を誇る日本代表

 このように開催国に関しては欧州中心で、アジアにおいても初めての開催ならびに初優勝を韓国に奪われている日本であるが、実は女子ハンドボールの世界選手権においては重要な役割を果たしている。まず、今回を含め、17回の大会のうち17回の大会で参加している。これは17回全てに出場しているルーマニア、16回出場のポーランド、14回出場のデンマーク、13回出場のノルウェーに続いて5番目と言う出場回数の多さを誇る。世界選手権(ワールドカップ)の出場回数において日本のチームがこれだけステータスの高い競技は1987年発足と歴史の浅いラグビーのワールドカップくらいであり、日本の皆様の関心が高いこともよくわかる。2週間にわたってフランス全土で行われた大会の各会場には1998年のサッカーのワールドカップと同様に多数の日本人ファンが押し寄せたのである。(続く)

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