第813回 2008年アフリカ選手権(5) 過去最多の7人のフランス人監督
■日本と戦ったマリのジャン・フランソワ・ジョダール
大会2日目の第3試合、グループBの残りの試合のベナンとマリと言うフランスからの独立国同士の戦いにもフランス人監督が登場した。マリの監督はフランス人のジャン・フランソワ・ジョダール、日本の皆様ならば、2004年のアテネオリンピックの予選で日本と最後までアテネ行きを争ったアラブ首長国連合の監督として記憶に残っているであろう。
ジョダールは名門ランス(Stade de Reims)の選手としてフランス代表でも活躍している。引退後は昨年のフランスカップで準決勝に進出したモンソーの監督を務め、1987年からはフランス代表の各年代別の監督、コーチを歴任している。特筆すべきは1997年の21歳以下の欧州選手権での優勝、そして2001年のトリニダードトバゴでの18歳以下の世界選手権での優勝であろう。このようにフランス代表のアンダーエイジでの素晴らしい経験を評価され、2002年にはアラブ首長国連邦の20歳以下の代表監督を任される。2004年にはアラブ首長国連邦のフル代表の監督となるが、アテネオリンピックの最終予選ではオリンピックチームの監督も務めている。
■予選では2戦ともドローのマリ-ベナン戦
そして2006年ワールドカップ予選での敗退を受けてマリ代表の監督に就任したのである。今回のアフリカ選手権の予選ではベナン、トーゴ、シエラレオネと同一のグループに入った。マリ、ベナン、トーゴの三つ巴となったが、マリは僅差でベナンを押さえ、グループ首位で本大会出場を果たした。そして予選で2位のベナンも10チームある予選2位のチームの中で上位3チームに入り、本大会出場を果たす。すなわち、マリとベナンは予選で戦ったばかりという手の内を知った同士の戦いとなったのである。そして予選では2試合とも引き分け(マリのホームで1-1、ベナンのホームで0-0)と言う結果であり、このマリとベナンの試合は通常以上に注目を集めることになったのである。ベナンを率いるのはドイツ人監督のラインハート・ファビッシュである。ファビッシュはケニア、ジンバブエと言う英語圏のアフリカでの代表チームの監督歴が長く、昨年からベナンの監督になっている。
■マリ勝利、フランス人監督開幕4連勝
過去1年間で3回目となる今回の対戦も緊迫したものとなった。試合は双方が警告を多発する試合となったが、後半立ち上がりのマリのフレデリック・カヌーテのPKがこの試合唯一の得点となった。カヌーテはリヨン近郊の生まれであり、プロデビューはリヨン、そしてイングランドに渡りウエストハム、トットナムでプレーし、現在はスペインのセビリアに所属、チャンピオンズリーグの決勝トーナメントを控えてコンディションは上々である。
大会2日目を終了し、4試合で5人のフランス人監督が出場、そしてこの4試合の勝利監督はいずれもフランス人という結果になったのである。
■ロジェ・ルメールのチュニジアとアンリ・カスペルチャックのセネガルはドロー
これ以外にフランス人監督は2人いる。チュニジアのロジェ・ルメールとセネガルのアンリ・カスペルチャックの2人である。この2人はこれまでの本連載でもしばしば紹介している。ルメールは2002年のワールドカップでフランス代表を率い惨敗、その直後からチュニジア代表の監督を務め、2004年大会、2006年大会に続き、これが3大会連続の出場となる。2004年大会では見事に優勝、そして2006年大会でも決勝トーナメントに進出、準々決勝でナイジェリアに敗れている。
そしてセネガルを率いるカスペルチャックはポーランド系フランス人である。ポーランド代表として1974年、1978年のワールドカップに出場、1976年のオリンピックでは銀メダルを獲得している。選手生活の最後をフランスで送り、引退後はフランスのクラブで監督を歴任している。日本の皆様にはかつてチュニジア代表を率いて1996年に訪日していることから良くご存知であろうが、アフリカ諸国の監督経験も多く、コートジボワール、チュニジア、モロッコ、マリ、セネガルの代表監督を経験しており、ルメールや、クロード・ルロワと並ぶアフリカの代表チームの監督のスペシャリストである。
このルメールとカスペルチャックはグループDの初戦で激突した。両チームが得点を奪い合い、2-2のドローとなる。このように今大会は前回の4人、前々回の5人を上回る7人のフランス人監督が出場しており、フランスのサッカーファンの楽しみは尽きない。(続く)