第824回 欧州カップ、8強への道(2) リヨン、昨年に続き決勝トーナメント1回戦で姿を消す

■チャンピオンズリーグではホームで圧倒的な強さを誇るマンチェスター・ユナイテッド

 前回の本連載ではUEFAカップの決勝トーナメント1回戦でマルセイユは勝ち抜いたが 、ボルドーは敗退したことを紹介した。
 フランス勢で唯一チャンピオンズリーグの1回戦に出場したリヨンは2月20日にマンチェスター・ユナイテッド(イングランド)をホームに迎えて第1戦を行い、終了3分前に 追いつかれてドローで第2戦を迎えることになった。
 第2戦の舞台はマンチェスターのオールドトラフォード競技場、リヨンはこの競技場の大観衆を敵に回して戦うことになる。事実、マンチェスター・ユナイテッドは過去3季のチャンピオンズリーグでこのオールドトラフォードでは16勝3分1敗と圧倒的な戦績を残してきた。ホームでの第1戦を引き分けてしまったリヨンは勝利が必要であるが、ア ウエーでの勝利は厳しい。

■マンチェスターでの試合のリハーサルとなったスタッド・ド・フランスでのリール戦

 そのリヨンであるが、3月4日のマンチェスター・ユナイテッド戦の直前の国内リーグ戦は3月1日の第27節のアウエーのリール戦であった。リール自身昨季、一昨季とチャンピオンズリーグでマンチェスター・ユナイテッドと対戦し、一昨季はマンチェスターで引き分けて、マンチェスター・ユナイテッドをグループリーグで敗退させている。本拠地が手狭で市内にないリールはこのリヨンとのホームゲームをスタッド・ド・フランスで行うことにし、フランスの国内サッカー史上最高の77,850人の観衆の前で試合を行った。パリ近郊のスタッド・ド・フランスとはいえ、リールのホームゲームであり、パリの北方である。スタッド・ド・フランスのほとんどはリールのファンで埋め尽くされ、リヨンのファンは3,000人にも満たなかった。その中で行われた試合でリヨンは前半の32分にフレッドが挙げた得点を守りきり、アウエーで勝ち点3、2位ボルドーとの差を広げたのである。そして、このリール戦はリヨンにとって格好のリハーサルとなったのである。

■ファンもペレも絶賛の19歳の新星アンデルソン

 リヨンは左サイドDFのアントニー・レベイエールが累積警告のため出場できず、代役はファビオ・グロッソが担う。マンチェスター・ユナイテッドは第1戦の殊勲者のカルロス・テベスはベンチスタート、そして第1戦で主将を務めたライアン・ギグスはベンチ入りからも外れている。フランス人選手は左サイドDFでシドニー・ゴブーと対決するパトリス・エブラだけが先発でルイ・サアは途中出場に控える。多士済々のマンチェスター・ユナイテッドであるが、注目は昨年の夏に新加入した弱冠19歳のブラジル人のアンデルソンである。マンチェスター・ユナイテッドの中盤にはマイケル・キャリック、オーウェン・ハーグリーブス、ポール・スコールズ、ダレン・フレッチャー、そしてアンデルソンと5人いるが、先般クラブ自身が行ったインターネットの投票で最多の得票を集めたのがこのアンデルソンである。ファンからの支持ばかりではない。ペレはすでにアンデルソンはロナウジーニョを超越していると絶賛している。

■果敢に攻めたリヨン、カデル・ケイタのシュートもポストに嫌われ、敗退

 75,520人と週末のリール戦よりも少ない観衆の前で試合はキックオフされた。第1戦同様、ボール支配率はマンチェスター・ユナイテッドにやや分があるが、勝利の必要なリヨンは第1戦以上に攻撃的な試合を展開し、攻撃陣が次々とファンデルサールの守るゴールを襲う。しかし、先制点は赤いユニフォームであった。41分にポルトガル代表のクリスティアーノ・ロナウドがゴール前の混戦から角度のないシュートを左足で放つ。これがグレゴリー・クーペの守るゴールのニアサイドに決まる。どうしても得点の必要なリヨンはこの失点を気にさらに攻撃的になる。そして74分にカデル・ケイタの放ったシュートはオールドトラフォードの大観衆を沈黙させた。しかしこのシュートはポストをたたき、ノーゴール。
 その後もリヨンは果敢に攻め、シュート数ではリヨン14、マンチェスター・ユナイテッド13と上回りながら、ゴールは遠かった。そして遠かったのはゴールだけではない。0-1と敗れたリヨンは昨年に続き、チャンピオンズリーグの決勝トーナメント1回戦で姿を消してしまった。フランス勢は今年もチャンピオンズリーグで優勝することができず、欧州の頂点の遠さを改めて思い知らされたのである。(続く)

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