第828回 宿敵イングランドを迎える(1) 39人の大所帯となった代表メンバー

■2月に引き続き、フル代表とA'代表の試合を設定

 2月6日のスペインとの親善試合が今年のフランス代表の最初の試合であり、0-1と黒星スタートとなったが、6月の欧州選手権までいよいよ3か月となり、代表チームの強化のチャンスは限られている。
 3月の下旬にもインターナショナルマッチデーが設定され、フランスは3月26日にイングランドをスタッド・ド・フランスに迎えることになった。2月のスペイン戦の際はその前日にA'代表を編成し、コンゴ民主共和国代表と対戦している。昨年夏のスロバキア戦でA'代表を6年ぶりに編成したレイモン・ドメネク監督は、スペイン戦の前日にA'代表のチームを行い、フル代表の底上げを狙っている。前回のスペインでのコンゴ民主共和国戦以降、アウエーゲームではA'代表の試合を行わないことをフランス協会として決定したが、イングランド戦はホームゲームである。そしてこのイングランド戦でもA'代表を編成し、イングランド戦の前日にマリ代表と対戦するスケジュールを組んだ。

■大量39人のうち10人は代表出場未経験

 イングランド戦の1週間前に39人のメンバーを選出した。これは2月の35人よりもさらに多い人数である。メンバー発表後に負傷などの入れ替えもあり、最終的な39人のメンバーのうち、初めて代表に選出された選手が6人、そして代表チームに選出されたことはあるものの代表の試合に出場したことにない選手が4人、全体の4分の1は代表の出場経験のない選手となった。
 今回フランス代表に初めて招集された6人の顔ぶれはDFのマチュー・デルピエール(シュツットガルト)、アディル・ラミ(リール)、MFのマチュー・ボドメール(リヨン)、FWのロイック・レミ(ランス)、フローラン・シナマ・ポンゴル(スペイン、レクレアティボ)、マチュー・バルブエナ(マルセイユ)である。一方、これまで代表に選出されながら代表の試合に出場したことがないのが、GKのユーゴ・ロリス(ニース)とスティーブ・マンダンダ(マルセイユ)、DFのガエル・クリシー(アーセナル)、FWのジミー・ブリアン(レンヌ)の4人である。

■7年前に日本のファンの度肝を抜いたシナマ・ポンゴル

 初めて招集されたメンバーにはインパクトのある選手がいる。特に日本のファンの皆様にも印象深いのはシナマ・ポンゴルであろう。1984年生まれで2001年にトリニダード・トバゴで開催された17歳以下の世界選手権で大活躍し、チームを優勝へと導いた。この大会でフランスと日本はグループBの最終戦で対戦する。両チームとも1勝1敗の勝ち点3での直接対決、日本は3点差で勝利すれば決勝トーナメントに進出することができた。この試合ではシナマ・ポンゴルの活躍もあり、フランスは5-1と大勝し、日本はグループリーグで敗退したばかりではなく、この試合でのシナマ・ポンゴルとの格の差を見せ付けられた日本はショックを受け、その後この世代は長く世界大会に出場することなく、また、17歳以下の世界選手権も2003年のフィンランド大会、2005年のペルー大会にもアジア予選で敗退している。当時ルアーブルに所属していたシナマ・ポンゴルは2003年には名将ラファエル・ベニテスが率いるイングランドのリバプールに移籍、2005年にはチャンピオンズリーグを制し、同年に日本で行われたクラブワールドカップにも出場、準優勝に輝いている。その後、ブラックバーン・ローバースを経由して1889年創立と言うスペイン最古のクラブであるレクレアティボに2006年に移っている。

■売り出し中のバルブエナ、3度目の挑戦となるブリアン

 フランス国内で最も注目を集めているのがマルセイユのバルブエナである。身長はわずか1メートル63センチしかない小柄な選手であるが、マルセイユに移籍してきて2シーズン目の今季はコンスタントに試合に出場し、センターフォワードの9番とゲームメーカーの10番の中間的な役割を果たすことから9.5と言われる役回りでロナウジーニョの再来と言われている。
 一方、これまで代表に選出されながら代表の試合に出場したことがない4人はいずれも2月のスペイン戦にも招集されており、引き続き欧州選手権の本大会への最終メンバーの23の椅子を目指すことになる。特にブリアンは昨年夏のスロバキア戦の際も選出されながら試合出場の機会に恵まれなかったため、3度目の挑戦となる。これらの10人の選手がマリ戦、イングランド戦のいずれに出場するのか、そしてどのような活躍をするのかが楽しみである。(続く)

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