第829回 宿敵イングランドを迎える(2) 3試合目で初勝利をあげたA’代表

■A'代表の試合当日にメンバーを振り分けたレイモン・ドメネク監督

 前回の本連載では3月25日のA'代表とマリ代表との試合、3月26日のフル代表とイングランド代表の試合に向けて39人の選手をレイモン・ドメネク監督が発表し、その中にはフランス代表の試合に出場したことのない選手が10人いることを紹介した。
 2月のスペイン遠征の際はA'代表がコンゴ民主共和国と戦う競技場とフル代表がスペインと戦う競技場が離れていたこともあり、A'代表とフル代表のメンバー分けはA'代表の試合の前夜であった。しかし、今回はA'代表の試合はパリ市内のシャルレティ競技場、そしてフル代表の試合はパリに隣接したサンドニのスタッド・ド・フランスで行われることから、A'代表とフル代表のメンバー分けはA'代表の試合当日となった。

■フル代表に1人も入ることができなかった新人選手

 A'代表のメンバーの先発メンバーであるが、GKはスティーブ・マンダンダ、DFは右にマチュー・デルピエール、中央にアディル・ラミとジャン・アラン・ブームソン、左にガエル・クリシー、守備的なMFは2人、リオ・マブーダとマチュー・ボドメール、攻撃的なMFは3人、中央にサミール・ナスリ、右にジミー・ブリアン、左にジェローム・ロタン、そして1トップを務めるのはフローラン・シナマ・ポンゴルである。このうちマンダンダ、デルピエール、ラミ、クリシー、ボドメール、ブリアン、シナマ・ポンゴルの7人はフランス代表歴のない選手である。また、GKのユーゴ・ロリス、ロイック・レミはベンチでのスタート、マチュー・バルブエナは負傷のため、メンバーから外れてしまった。
 結局、前回の本連載で紹介した10人の代表未経験選手はフル代表の試合のメンバーには選ばれなかったが、翌日のフル代表の試合のベンチ入り選手は18人である。欧州選手権のメンバーは23人であるから、子のマリ戦での活躍は、欧州選手権へつながるはずである。さらに、欧州選手権のメンバーの決定までの最後の試合がこのイングランド戦とマリ戦である。したがって、彼らにとっては最初で最後のチャンスとなる。

■捲土重来を期すマリ

 マリは本連載第814回で紹介したとおり、今年のアフリカ選手権に出場しているが、グループリーグで敗退してしまっている。フランス人のジャン・フランソワ・ジョダール監督はこの敗退で監督の座を退き、モリ・ゴイタとママドゥ・クーリバリーが監督の座に就き、ゴイタ監督は27人の選手とともにフランス入りした。27人の選手のほとんどは欧州のクラブチームに所属し、7人はフランスのクラブに所属している。慣れ親しんだフランスの地で、次の目標に向かってアピールしたいところである。

■活躍が目立ったナスリ、ロタン、シナマ・ポンゴル

 そして7000人の観衆の前で試合は始まり、立ち上がりからフランスA'代表が試合を圧倒した。2分には早々とナスリが先制点をあげる。この先制点はシナマ・ポンゴルがアシストし、シナマ・ポンゴルも存在感を早くも示した。シナマ・ポンゴルはその後も攻撃の中心となる。34分にはペナルティエリアの中で倒され、PKを得る。このPKをジェローム・ロタンが決めて、フランスは追加点を上げる。シナマ・ポンゴルとともにこの試合をリードしたのが先制点をあげたナスリである。ナスリは前半のロスタイムにシナマ・ポンゴルにパスし、これをシナマ・ポンゴルがヘディングで3点目をあげる。
 後半に入り、ベンチのメンバーを次々にピッチに送り込んだフランスはマリに2点を返され追い上げられたが、非常に内容のある試合で、3-2でマリを振り切った。A'代表は昨年の夏に編成されて、これが3試合目であるが、昨夏にスロバキアに0-1と負け、2月にはコンゴ民主共和国とスコアレスドロー、そしてようやく3試合目で初勝利をあげた。しかし現在の彼らにとっては勝敗よりも試合内容の方が重要である。
 昨年の3月にフル代表にデビューしながら、今年になってからフル代表のメンバーから外れているナスリ、2004年の欧州選手権のメンバーで唯一出場した試合がギリシャ戦という苦い経験を持つロタン、そして今回初めて代表の一員に加わったシナマ・ポンゴルなどが欧州選手権のメンバーに加わるかどうか、興味は尽きない。(続く)

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