第864回 イタリアに敗れ、グループリーグ敗退(1) 詳細に作られた順位決定方法
■3位同士が対戦する最終戦のイタリア-フランス戦
守備陣のほころびによって1-4とオランダに大敗を喫したフランスは大ピンチとなった。6月13日に行われた試合は、前回紹介したとおり、第1試合はルーマニアとイタリアが1-1で引き分け、夜のベルンでの第2試合はオランダがフランスに4-1と勝利している。この結果、死のグループと言われたグループCは第2戦を終わった段階で1位オランダ(勝ち点6)、2位ルーマニア(2)、3位にイタリアとフランス(勝ち点1、得失点差-3)が並んだ。さらに最終戦は1位オランダと2位ルーマニア、そして3位同士のイタリアとフランスが顔を合わせることになった。
■オランダに勝利すれば決勝トーナメント進出となるルーマニア
決勝トーナメント進出の条件は以下のとおりである。まず、オランダはすでに首位で決勝トーナメント進出を決めており、最終戦はグループ2位を争う戦いとなるが、2位争いのシナリオをここで確認してみよう。
まず、ベルンで行われるオランダ-ルーマニア戦であるが、ルーマニアは勝利すれば、チューリヒのイタリア-フランス戦の結果に関係なく、決勝トーナメント進出となる。オランダが控えメンバーで戦ってくること、そして予選でも対戦した両者の成績はルーマニアが1勝1分と優勢であったことから最も起こりうるシナリオである。
■フランスの2位は、ルーマニアが引き分け以下で、イタリア戦勝利のみ
オランダとルーマニアが引き分ければ、ルーマニアの勝ち点は3となり、イタリア-フランス戦の勝者は勝ち点4で2位に滑り込む。しかし、イタリア-フランス戦が引き分けになった場合は両国の勝ち点は2にとどまり、ルーマニアに届かない。
そしてオランダがルーマニアに勝利した場合は、ルーマニアの勝ち点は2にとどまり、イタリア-フランス戦で勝利したチームは勝ち点4となり、勝者が2位になる。結論から言うとフランスが2位に入るケースはここまでで、ルーマニアが引き分け以下で、フランスがイタリアに勝利した場合だけである。
■複雑な順位決定方法となる1強3弱のケース
イタリアとフランスが引き分けた場合、3チームとも勝ち点2となり、2位争いは複雑になる。これはオランダが3戦全勝で、それ以外のイタリア、フランス、ルーマニアの間の試合は引き分けで1強3弱で、3チームが勝ち点3で並ぶというシナリオである。第2戦までの戦いを振り返ってみれば十分に想定されうるシナリオである。ところがこの場合、フランスに望みはなくなる。3チームが同勝ち点で並んだ場合、順位の決定はまず当該国間の得失点差で決まるが。3チームの間の対戦がすべて引き分けであるため、差がつかない。その次に当該国間の対戦における得点数で決まるが、これまで行われたフランス-ルーマニア、イタリア-ルーマニア戦で各国の得点数はイタリアとルーマニアが1であり、フランスは0である。つまり、フランスとイタリアが引き分けた場合、イタリアの方が当該国間の対戦の得点で上回っているためフランスはイタリアよりも下の順位であり、イタリアとルーマニアの間で2位争いとなる。イタリアが得点をあげて引き分ければイタリアの当該国間の得点は2以上となり、ルーマニアの1を上回り、2位に滑り込む。
ところがイタリアがスコアレスドローの場合、イタリアとルーマニアは当該国間の対戦での得失点差、得点数でも差がつかず、この場合はグループリーグ全試合の得失点差で決定される。イタリアはオランダに3点差で敗れているため、ルーマニアが2点差以内の敗戦であるならば、ルーマニアが2位、ルーマニアが4点差以上の敗戦であるならばイタリアが2位となる。ところがルーマニアが3点差で敗れた場合はグループリーグ全体の得失点差でも差がつかず、今度はグループリーグ全体での総得点数の勝負となる。つまり、ルーマニアが得点をあげて1-4や2-5と言ったスコアで敗れた場合はルーマニアが2位になる。
さらにルーマニアがオランダ戦でイタリア同様に0-3で敗れた場合、ルーマニアとイタリアはグループリーグ全体での総得点でも差がつかなくなる。この場合、今大会のグループリーグでの得点や失点をどのように演算しても差がつかない。このときに使用される順位決定の手法が2008年の欧州選手権と2006年のワールドカップの予選における1試合あたりの平均勝ち点数である。これらの予選における1試合あたりの平均勝ち点数で今回のグループリーグのシード順を決めたことは本連載の第787回、第790回、第791回で紹介しているが、この数値を使うと第2シードのイタリアは第3シードのルーマニアよりも上位であり、イタリアが2位となる。予選の結果は決して軽視してはならないのである。(続く)