第875回 オリンピック出場を逃したフランス(1) 21歳以下欧州選手権の予選

■21歳以下欧州選手権で出場チーム決定

 4年に一度のスポーツの祭典、オリンピックの季節がやってきた。ご愛読いただいている読者の皆様からオリンピックのサッカーについてのお問い合わせを多数いただいた。フランスは近代オリンピック発祥の地であることから、このようなお問い合わせも予想されたが、日本におけるオリンピック熱、サッカー熱の高さに改めて驚くばかりである。
 欧州におけるサッカーのオリンピック予選は2年に1度行われる21歳以下欧州選手権をベースとしている。21歳以下欧州選手権は2007年のオランダで開催されているが、本大会出場は開催国のオランダを含めて8チーム、予選を経て本大会出場となる。そして欧州選手権本大会の上位チームにオリンピックのチケットが渡される。

■2006年ワールドカップよりも前に始まった21歳以下欧州選手権の予選

 この予選にはUEFAに所属しているほとんどの国・地域がエントリーし、2006年5月、すなわちドイツでのワールドカップが開催される前に開幕している。もっともこの2006年5月に開幕したのは弱小国による予備戦であり、この予備戦を勝ち抜いた8チームを交えた42チームが3チームずつ14のグループに分かれ、グループリーグを戦う。フランスは2006年8月から始まったグループリーグから参戦している。
 このグループリーグはホームアンドアウエー方式ではなく、ホームもしくはアウエーでの1試合しか行われず、各チームはホーム、アウエーで1試合ずつ行うことになっている。ホームアンドアウエーで試合を行わないことからも欧州における若年層のサッカーに対する評価が高くないことがよくおわかりであろう。

■スコットランド、スロベニアに連勝し、プレーオフへ

 グループリーグでフランスが戦うことになったのはスコットランドとスロベニアである。まず8月にスロベニアとスコットランドが対戦し、スロベニアが1―0でスコットランドを倒している。その2週間後の9月1日にフランスはスコットランドのアバディーンでスコットランドと対戦している。このスコットランド戦では、開始早々にジミー・ブリアンが先制点をあげる。16分にもロナルド・ズバールが追加点を上げる。試合終盤の83分にはブリアンが3点目を上げ、スコットランドの反撃を試合終了直前のPKの1点に抑える。フランスはホームでスロベニアに引き分け以上でグループリーグ突破というアドバンテージを得たのである。
 そしてスロベニア戦は9月5日にアミアンで行われた。引き分け以上を狙うフランスであったが、後半に入り、期待の攻撃陣が爆発する。65分にはヨアン・グルクフ、そして80分にはフローラン・シグマ・ポンゴルが追加点を上げ、勝利する。
 決して簡単な敵ではない2チームに連勝したフランスは、グループリーグ首位の14チームを7チームに絞るためのプレーオフに進出し、プレーオフに勝利すれば、21歳以下欧州選手権の欧州条件を獲得する。

■カーンの試合でイスラエルに苦戦、ドローでアウエーの第2戦へ

 プレーオフの相手はイスラエルである。イスラエルはウェールズ、トルコに競り勝ってグループリーグを突破してきた。プレーオフはホームアンドアウエー方式で行われ、10月7日にフランスで、10月11日にイスラエルで行われた。ホームの第1戦はカーンで行われた。カーンのミッシェル・ドルナノ競技場は1993年に改装された競技場であり、改装直後にフランス代表がロシア代表との親善試合を行っている。その後の代表の試合はこれまでに1回だけ、1995年11月の欧州選手権予選のイスラエル戦だけである。カーンではそれ以来の国際試合となったが、またもや相手はイスラエルである。
 アンダーエイジの試合としては異例の1万2000人の観客を集めたが、フランスは苦戦する。36分にはイスラエルの選手が退場し、フランスは人数的に優位に立つ。しかし、先手を取ったのは1人少ないイスラエルであった。58分にイスラエルが先制する。同点、逆転を狙うフランスの中でファンからもっとも大きな声援を受けたのは、スコットランド線で活躍したズバールである。ズバールはカーンでプロデビューし、この夏にマルセイユに移籍したばかりである。そのズバールが79分に故郷に錦を飾る同点ゴールを決める。ホームチームのフランスとしては逆転を狙いたいところであったが、同点にとどまり、ホーム第1戦のスコアは1―1に終わってしまい、アウエーの第2戦へと旅立ったのである。(続く)

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