第876回 オリンピック出場を逃したフランス(2) プレーオフでイスラエルに敗退
■前回大会予選でもイスラエルに敗れているフランス
北京オリンピックの予選を兼ねる2007年の21歳以下欧州選手権への出場権をかけたプレーオフ、フランスはイスラエルと対戦したが、ホームのカーンでの戦いで1-1と引き分けてしまう。格下といえるイスラエルにホームで引き分けてしまったフランスであるが、実はイスラエルに対しては苦い思い出がある。
本連載の読者の皆様ならば1994年の米国ワールドカップへの出場を逃すことになった1993年10月13日のパルク・デ・プランスでの2-3の敗戦も忘れられない思い出であるが、実は前回の21歳以下欧州選手権予選ではフランスはイスラエルと同じグループリーグに入った。2005年3月29日に行われた試合では、アウエーであるとはいえ、フランスはイスラエルにロスタイムに決勝点を奪われ、2-3と敗れているのである。結局、グループリーグ全体の成績ではフランスがイスラエルを上回ってプレーオフへ進出したが、フランスにとってイスラエルは侮りがたい相手であると認識を新たにしたのである。
■フランス敗退、ロスタイムに決勝点を奪われる
それから1年半後、今度はオランダで開催される本大会へのチケットをかけて両国は戦うことになったが、第1ラウンドを終えた段階でイスラエルが優位に立ってホームに戻る。イスラエルのホームゲームは10月11日、ヘルツェリアの市営競技場で行われる。1年半前にフランスがロスタイムに失点したのと同じ試合会場である。
ホームで失点して引き分けているフランスにとって勝利が必要な試合となったが、フランスは試合を支配するものの、なかなか得点を奪うことができない。後半に入ってフランスはカリム・ベンゼマを投入するが得点をあげることができず、ロスタイムに入って93分に逆にイスラエルのアミール・タガに決勝ゴールを奪われる。この結果、フランスはオランダでの21歳以下欧州選手権への出場権を失い、同時に北京行きのチケットも逃げて行き、アトランタ以来12年ぶりのオリンピック出場はならなかった。一方、イスラエルは21歳以下欧州選手権の本大会に初めて進出したのである。
■オランダ、セルビア、ベルギー、イタリアが北京へ
若手の欧州ナンバーワンを決める21歳以下欧州選手権はオランダで開催され、上位4チームが北京への切符を得る。開催国を含め8チームが出場し、4チームずつ2つのグループに分かれてグループリーグを行い、各グループの上位2チームずつが決勝トーナメントに進む。
グループAでは開催国のオランダが首位通過、2位にはオランダのライバルのベルギーが入る。フランスに競り勝ち、1976年以来のオリンピック出場を狙ったイスラエルは3戦全敗で1点もあげることができない惨敗であった。グループBではイタリアとチェコに連勝したセルビアが早々に四強入りを決め、グループリーグ最終戦でそのセルビアに勝ったイングランドが2位に入る。
決勝トーナメントに進出した4チームが北京行きかと思われたが、イングランドとしてはオリンピックに参加しないため、5位チームが繰上げで北京行きのチケットをつかむ。グループリーグで3位になったポルトガルとイタリアが5位決定戦を行い、イタリアがPK戦で北京行きのチケットを獲得したのである。ちなみに、大会そのものの成績は優勝オランダ、準優勝セルビア、3位は準決勝で敗れたイングランドとベルギーであり、3位決定戦は行われなかった。
■輝く才能の若手をフル代表に起用せず
イスラエルとのプレーオフで敗退してしまったフランスであるが、プレーオフの時期とフル代表の欧州選手権予選のアウエーのスコットランド戦の日程が重なった。21歳以下欧州選手権のプレーオフは10月7日と10月11日に行われ、スコットランド戦は10月7日に行われ、フランスは0-1と敗れているが、このスコットランド戦には若手のベンゼマやラッサナ・ディアラ、サミール・ナスリ、リオ・アントニオ・マブーバを帯同させず、若手はイスラエルに向かった。またこのときの21歳以下の代表チームにはスティーブ・マンダンダ、ジェレミー・ベルト、ジミー・ブリアン、フローラン・シナマ・ポンゴルなどそろそろ代表入りしてもおかしくない人材が目白押しである。
プレーオフやスコットランド戦の結果はともかく、残念なのは欧州選手権出場を失った段階でこれらの有望な若手をフル代表の中核に据えなかったことである。今振り返れば、この段階で若手選手をフル代表に入れれば、この夏のオーストリア、スイスでの結果は異なったものになっていたであろう。(この項、終わり)