第882回 オリンピックで活躍したフランス勢(1) タイエ・タイウォに代わって活躍したオニエカチ・アパム

■金メダル7個を獲得したフランス

 アジアで3回目のオリンピックとなった北京オリンピック、春先に起こったチベット問題を契機としてフランスではボイコット騒ぎがあり、5月には四川大地震が起こるなど前途多難を思わせた。しかし、大会期間中は大きなトラブルもなく、8月8日に開幕し、24日にその幕を閉じている。地元中国勢の躍進が目立ったが、フランスは金メダル7個を獲得している。金メダルの獲得数では10位となり、前回のアテネ大会の11個(7位)を下回っているがメダル数の合計は33個から40個と数字を伸ばしている。

■出場国全てにフランス勢のいるアフリカ3か国

 さて、男子サッカー競技においては本連載第875回と第876回で紹介したとおり、フランスは21歳以下欧州選手権の本大会に出場することができず、早々と北京行きを逸している。しかし、フランスのクラブから多くの選手が他国の代表として北京で活躍したのである。
 オリンピックは競技の普及と言う観点も重要であるため、加盟国、人口の多いアジア・アフリカ地域からの参加国の割合がワールドカップに比べて高くなっている。アジアからは開催国の中国も含めて4か国、アフリカからは3か国が出場し、欧州からは4か国しか出場していない。アフリカからはコートジボワール、ナイジェリア、カメルーンという3か国が出場しているが、全てのチームにフランスのクラブに所属している選手がおり、アフリカ勢は3チーム全てがグループリーグを突破し、決勝トーナメントに進出している。

■6人を擁するコートジボワール

 コートジボワールにはフランスの6人ずつが登録している。コートジボワールは1部からはグルノーブルのフランク・ジャジェジェ、ルマンのジェルビーニョ、ニースのカフンバ・クリバリー、2部からはラバルのラジイ・タムラ、リブルヌ・サンスーランのアントニー・ムラ、バスティアのエルベ・カンブがメンバーに入っている。コートジボワールはグループAの初戦で優勝することになるアルゼンチンに敗れたものの、続くセルビア戦と豪州戦で勝利し、グループ2位で決勝トーナメントに進出している。

■オニエカチ・アパムの活躍で準優勝に輝いたナイジェリア

 そしてこのコートジボワールに決勝トーナメント1回戦(準々決勝)で勝利したのがナイジェリアである。ナイジェリアは日本と同じグループBに所属し、初戦はオランダとスコアレスドロー、第2戦で日本に勝利し、第3戦では米国に勝利し、グループBの首位で決勝トーナメントに進出している。12年前のアトランタオリンピックで優勝し、アンダーエイジでは世界の強豪となったナイジェリアであるが、今回も決勝に進出、決勝ではアルゼンチンの12年越しの執念に敗れた形になったが、改めてその力を世界に見せつけた。
 このナイジェリア代表であるが、ほとんどの選手が欧州の強豪クラブに所属している。今回のオリンピックでは欧州のシーズン開幕と重なり、これらのクラブがオリンピックのチームに選手を派遣しないと言う問題が生じた。ナイジェリア代表も例外ではなく、マルセイユに所属し、すでにフル代表のメンバーにもなり、他国のビッグクラブからオファーのあるタイエ・タイウォの派遣を所属チームのマルセイユは拒否している。それ以外にもチェルシーのジョン・オビ・ミケルが監督との対立によりメンバーが外れるなど苦しいメンバー構成であった。
 そして大会直前にメンバー入りしたのがニースのオニエカチ・アパムである。アパムはオランダ戦、日本戦で警告をそれぞれ受け、米国戦は出場停止となったものの、準々決勝のコートジボワール戦、準決勝のベルギー戦、決勝のナイジェリア戦と守備陣の一員として活躍し、フランスリーグのスター選手であるタイウォの穴を十分に埋め、準優勝に貢献したのである。(続く)

このページのTOPへ