第883回 オリンピックで活躍したフランス勢(2) 選手の派遣を拒否したマルセイユとナント

■若手中心で6人が出場したカメルーン

 前回の本連載から北京オリンピックの男子サッカー競技にフランスのクラブから出場した選手を紹介し、前回はコートジボワールとナイジェリアから出場した選手を取り上げた。今回は残りの国から出場した選手を紹介しよう。
 コートジボワール、ナイジェリアと並ぶアフリカからの出場国がカメルーンである。2000年のシドニーオリンピックで優勝を果たし、アフリカ勢として2番目の金メダルを獲得している。2004年のアテネオリンピックは予選で敗れてしまったが、今回は満を持しての復活である。このカメルーンにはアルベール・バニング(パリサンジェルマン)、クリスチャン・ベカメンガ(ナント)、ステファン・ムビア(レンヌ)、オーレリアン・シェジュ(リール)、ジョエル・ングエモ(ナンシー)、ニコラ・ソクル(モナコ)という6人の選手がエントリーしている。他のアフリカの国と異なるのは、クラブでも若手で出場経験が少ない選手が多いことである。レギュラーとして常時試合に出場しているのはレンヌのムビアくらいであろう。
 カメルーンはグループDに所属し、第1戦で韓国と引き分け、第2戦でホンジュラスに勝利し、第3戦はすでに決勝トーナメント進出を決めているイタリアとの対戦となった。この試合でカメルーンが敗れ、韓国がすでに決勝トーナメントの可能性のないホンジュラス相手に勝利すると、カメルーンと韓国は勝ち点で並び、直接対決でも互角であり、得失点差等の争いとなる。カメルーンはイタリア相手にドローに持ち込み、イタリアに次いで2位通過を果たす。しかし、決勝トーナメントの初戦はグループの首位で初優勝を目指すブラジルである。このブラジルに延長戦の末、0-2と敗れてしまったが、決勝トーナメント進出を果たし、最低限の目標は達成でき、オリンピックで自身をつけた選手がフランスリーグで活躍する場面を期待したい。

■ベルギーのケビン・ミララスはリールの中心選手

 そしてアフリカ勢以外の出場国でフランスのクラブに所属する選手がいたチームは、欧州から出場したベルギーである。ベルギーで唯一のフランスのクラブ勢であるケビン・ミララスはリールに所属し、弱冠20歳でありながら、昨季はほとんどの試合に出場している。ベルギーはグループBで第1戦をブラジル相手に1-2と落としながら、続く中国戦、ニュージーランド戦に連勝してグループ2位で決勝トーナメントに進出し、イタリアに勝利し、四強入りする。準決勝ではナイジェリアに敗れ3位決定戦に回りブラジルと再戦するが返り討ちにあい、メダル獲得はならなかった。

■気になるオリンピックとフランスリーグの関係

 気になるのはオリンピックとリーグ戦の関係である。タイエ・タイウォの派遣を断ったマルセイユは本連載の第880回で紹介した通り、リーグ開幕戦のレンヌ戦ではタイウォがフル出場しながら4失点してドローになったが、第2節のオセール戦、第3節のルアーブル戦は完封勝ちしている。
 また、タイエ・タイウォの代わりにオニエカチ・アパムを送ったニースは、コートジボワール代表のクリバリーを含めてオリンピックに2人の選手を派遣することになった。ニースは開幕戦はルアーブルに敗れ、第2節はナンシーに勝利、そしてオリンピックの閉会式の日に行われた第3節のオセール戦ではコートジボワール代表のクリバリーが復帰し、終盤に途中出場し勝利を上げているのである。

■2人のセルビア勢の派遣を断ったナントは低迷

 また、セルビアはステファン・バボビッチとフィリップ・ジョルジェビッチというナントに所属する2人の選手を7月末の段階で選出していた。この2人はともに昨季途中にバボビッチはOFKベオグラード、ジョルジェビッチはレッドスター・ベオグラードとセルビアの別々のチームから移籍してきた。ナントに移籍してからはほとんどの試合に出場し、ナントの1部復帰に貢献している。1部に復帰したばかりのナントはカメルーンのベカメンガを派遣していることもあり、セルビア勢の招集を拒否した。しかしながら、ナントはリーグ序盤で苦労している。第1節はオセールに敗れ、第2節はホームでモナコと引き分け、第3節のボルドー戦はベカメンガを終盤投入するも敗れ、そして第4節でもルマンに敗れ、最下位に転落している。
 北京で活躍した選手のリーグ戦での活躍を期待したいところである。(続く)

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