第896回 姿を変えるUEFAカップ(2) 1990年代以降再編された欧州三大カップ

■欧州カップの中で最古の歴史を誇るUEFAカップ

 前回の本連載では従来のUEFAカップがヨーロッパリーグに変わり、その大会形式、チャンピオンズリーグとの関係、インタートトカップの廃止を紹介したが、今回はこれまでの欧州カップの歴史を紹介したい。
 まず、UEFAカップは欧州の中で最古の歴史を誇る大会である。1955年4月に始まった欧州フェアーズカップをその前身としており、1971年からUEFAカップとなっている。他のタイトルについてはチャンピオンズカップは1955年6月に始まり、カップウィナーズカップは1960年に始まった。各国リーグチャンピオンが出場するチャンピオンズカップ、各国のカップ戦勝者が争うカップウィナーズカップ、各国リーグ上位チームが出場するUEFAカップをあわせて欧州三大カップと称していた。チャンピオンズカップとカップウィナーズカップは各国から1チームずつ、UEFAカップは各国の力に応じた複数チームが出場し、ホームアンドアウエーのノックアウト方式のカップ戦を戦ってきた。(UEFAカップのみ決勝もホームアンドアウエー方式で行っていた)

■強豪国からの複数チーム出場により高レベルな大会に

 欧州三大カップの中でもっとも権威があるのがチャンピオンズカップ、それに次ぐのがカップウィナーズカップ、そして国内ノータイトルのチームで争うUEFAカップは第3の位置にあった。しかし、UEFAカップは各国のレベルに応じて出場チーム数が異なり、有力国から多くのチームが出場し、弱小国からは1チームしか出場しないことから、相対的に強豪チームの割合が大きくなる。したがって、年によっては、チャンピオンズカップやカップウィナーズカップよりも強豪国の有力チームによるレベルの高い争いが行われた。1989-90シーズンはユベントスとフィオレンチナのイタリア勢で決勝が行われ、その翌年の1990-91シーズンの決勝もインテルミラノとACローマのイタリア勢で争われている。1990-91シーズンはチャンピオンズカップはACミラン、カップウィナーズカップはサンプドリアとイタリア勢が三冠を獲得している。これは当時のイタリアのレベルが突出していたためであるが、UEFAカップ以外のタイトルにはイタリアのチームは1チームしか参加しないが、UEFAカップには複数のチームが参加しており。UEFAカップも他の大会同様1国1チーム制であれば、イタリア勢以外が決勝に進出したが、大会のレベルは下がったであろう。

■チャンピオンズリーグの誕生、カップウィナーズカップの廃止

 このように欧州のサッカーシーンに定着していた欧州三大カップに変化が訪れたのが1990年代のことである。1992年にはチャンピオンズカップにリーグ戦が導入され、チャンピオンズリーグと名称も変更された。また、1997-98シーズンには、それまで各国リーグのチャンピオンチームだけが出場していたのに加えて、各国の力に応じて複数のチームが出場することになった。さらに、1998-99シーズンを最後にカップウィナーズカップは廃止され、各国のカップ戦優勝チームはUEFAカップに出場することになった。また、1999-200シーズンからはチャンピオンズリーグのグループリーグで敗退したチームがUEFAカップに転戦するようになった。

■チャンピオンズリーグの成功とUEFAカップの地盤沈下

 このような動きでチャンピオンズリーグはかつてのUEFAカップの特色であった有力国の強豪チームの争いが実現し、有力チームであるならばほぼ確実にチャンピオンズリーグに出場することができるようになった。有力チームが登場するとともに、リーグ戦の導入による試合数の増加から商業的な成功を収めるに至った。一方、UEFAカップはカップ戦優勝チームを取り込んだものの、チャンピオンズリーグに対するアドバンテージがなくなるとともに、チャンピオンズリーグの下位のタイトルとしての色彩が年を追うごとに強まってきた。
 すなわち「勝ち組」のチャンピオンズリーグに対して、「負け組」のUEFAカップが改革を行ったわけであるが、本当にそれは実のあるものとなるであろうか。(続く)

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