第909回 古豪ウルグアイと対戦(1) 初対決から84年、初めて親善試合で対戦
■フランスが初めて欧州以外のチームと対戦した国、ウルグアイ
今年最後に行われるフランス代表の試合は11月19日のウルグアイとの親善試合である。ウルグアイは第1回ワールドカップの優勝国という古豪である。しかしながら、近年は南米においてもブラジル、アルゼンチンの陰に隠れているが、南アフリカでのワールドカップ出場を虎視眈々と狙っている。
そのウルグアイは、フランスが初めて欧州以外のチームと戦った相手である。フランスとの最初の対戦は1924年のパリオリンピックでのことである。オリンピックにおいてサッカー競技は1900年のパリ大会から始まった。フランスリーグもまだ始まっていない1924年当時はオリンピックもフル代表であり、トーナメント方式で行われた。フランスは1回戦でリトアニアに7-0と大勝し、準々決勝に相当する2回戦でウルグアイと対戦する。この試合でフランスはウルグアイに0-3と大敗する。フランスに勝利したウルグアイは準決勝でオランダ、決勝でスイスに勝利して南米勢として初の優勝を果たしている。ウルグアイは続く1928年のアムステルダム大会でも優勝し、1930年のワールドカップの岸へとつながっていくのである。
■サッカーの母国でのワールドカップで対戦
そしてフランスとウルグアイの2回目の対戦は1966年のワールドカップ・イングランド大会でのことである。フランスとウルグアイはグループリーグで同じグループAに入り、第2戦で対戦した。フランスは初戦をメキシコと対戦し、1-1のドロー、ウルグアイは開催国のイングランドと対戦し、0-0のドロー、勝ち点1同士でロンドンのホワイトシティ競技場で対戦することとなった。1908年のロンドンオリンピックのメイン会場での試合は、まずフランスが15分にPKで先制したが、前半のうちにウルグアイに逆転され、1-2で敗れる。フランスは第3戦でもイングランドに敗れ、グループリーグで敗退となった。一方のウルグアイは決勝トーナメントに進む。
■インターコンチネンタルカップで初勝利
フランスは3回目の対戦で初めて勝利する。3回目の対戦となったのは1985年8月、パリはパルク・デ・プランスでのことである。前年の欧州選手権でチャンピオンとなったフランスは、1983年の南米選手権の覇者ウルグアイとインターコンチネンタルカップをかけて戦う。
翌年のワールドカップでもベスト4に入ることになるフランスは、ミッシェル・プラティニなどの全盛期であり、開始早々のドミニク・ロシュトーの先制点、後半にはジョゼ・トゥーレのゴールをお膳立てし、フランスが2-0と勝利する。
ちなみに欧州選手権と南米選手権の優勝国が試合を行ったのは、この試合を含めて4回あるが、インターコンチネンタルカップとして行われたのは、この試合が最初のことである。フランスはアルテミオ・フランキ・トロフィーを獲得する。アルテミオ・フランキとはイタリア人の名前で、イタリアサッカー協会長を経て1972年からUEFAの会長を務め、在職中の1983年に 交通事故で命を落としている。 なお、このフランス-ウルグアイ戦以外でインターコンチネンタルカップとして行われたのは、1993年にアルゼンチン(1991年南米選手権優勝)がPK戦でデンマーク(1992年欧州選手権優勝)を破った試合だけである。
■2002年のワールドカップではスコアレスドロー
4回目の対戦は本連載の読者の皆様ならばよくご存知の2002年に韓国と日本で行われたワールドカップである。本連載の第74回から第77回で紹介しているが、開幕戦でブルーノ・メス監督に率いられたセネガルに0-1と敗れたフランスは、ウルグアイ戦でスコアレスドローとなり、追い込まれる。結局グループリーグ第3戦のデンマーク戦で敗れ、前回優勝チームが1点もゴールをあげることなくグループリーグ最下位でアジアから姿を消してしまった。
フランスとウルグアイは、1930年にウルグアイで行われた最初のワールドカップに出場した伝統国であるが、これまでの対戦はわずかに4回であり、その対戦成績はフランスの1勝1分2敗である。そして不思議なことに、これまでの対戦の内訳はワールドカップ2回、オリンピック1回、そしてインターコンチネンタルカップ1回と、両国は親善試合で対戦したことがない。第1回のワールドカップに出場した13か国の中でフランスが親善試合で対戦したことがないのはウルグアイとボリビアだけである。ワールドカップが始まる前の対戦から84年、ついに両国が初めての親善試合を迎えるのである。(続く)